感覚遊びとは?
最終更新:2021.01.02
粘土遊び、トランポリン、楽器遊び。私たちの周りには「感覚遊び」であふれています。ジェットコースターも感覚遊びのひとつです。感覚を受け入れるのは分かりやすく楽しいものです。特に保育や障害児分野ではよく行われています。
今回は、
・なぜ感覚遊びをするのか?
・どんなメリット・デメリットがあるのか?
というはなしです。
感覚遊びの種類
感覚遊びの目的は感覚をしっかりと受け取るための練習です。障害がない子でも楽しめる遊びのひつつです。
たくさんの種類があります。昔から伝わっているような遊びや遊具も有効です。考えれば無限に遊びをつくることができます。
下記は代表的な感覚で分類
◆触覚、圧覚など
・小麦粉粘土
・スライム
・片栗粉遊び
・寒天遊び
・砂場遊び
・水遊び
・くすぐり遊び
・ブラックボックス
◆視覚
・ミラーボール
・光遊び
◆聴覚
・楽器遊び
・音遊び
◆前庭覚、固有覚など
・シーツブランコ
・トランポリン
・ブランコ
・ジャングルジム
・すべり台
・鉄棒
・ウォーターベッド
特定の感覚だけではなくて、複数の感覚が同時に使われる遊びが多いです。
ex.楽器遊び
⇒ 太鼓を叩くと、振動も感じるし、音も聞こえる、見た目で震えている様子も分かる。
ex.落ち葉遊び
⇒ 触れば軽くカサカサと音がする。乗っかれば軟らかくて、かぶれば温かい。
感覚遊びのメリット
・遊びながら感覚を育てられる
⇒ 感覚遊びを行うことで、「感覚に気づく」「感覚を受け入れられる」練習となる。
・どんな子でも遊べる
⇒ 難しい手順がないものが多い。感覚を受け入れることがメインの遊びなので、障害がある子もない子も一緒に参加することができる。
感覚遊びのデメリット
・目に見えないもの
⇒ 「感覚」「感覚刺激」は目に見えません。与える刺激の強さは子供によって異なります。しかし、刺激の量を調整しろと言われても、目分量というか人によって異なってしまいます。刺激を感じづらい子に対して、どのくらいの時間、待っていればよいのか?という問題があります。
・嫌がる子がいる
⇒ 感覚遊びを好む子は多いです。しかし、なんらかの理由で拒む子がいます。
・経験不足によるもの
・感覚過敏によるもの
・体調によるもの
原因を把握してから遊びに参加する量を決めるとよいです。無理やりやらせるのは子どもにとってつらすぎるときもあります。
※過敏は発達障害以外にもHSPなどの子にみられることがあります。
感覚を受け取れないとどうなるのか?
目には見えない「感覚」。では、この感覚がうまく身体に入ってこれなくなるとどうなるのでしょうか?
情報が身体にうまく伝わらなくなる
周囲からの感覚刺激は大切な情報です。
ex.
熱い、重い、食べられる、危ない、など
では、感覚が受け取れないとどうなるのでしょうか?
触覚や固有覚(筋や関節の曲げ伸ばしなど)、前庭感覚(バランス感覚)などの感覚を受け取りにくい状態の子がいます。
私たちは、自分の身体(感覚器官)を使って、周囲にある物を感じとっています。これが「情報を受け取る」ということです。刺激が感じ取りにくいと、物との位置関係などが分かりません。そのため、自分の身体をどのように動かしていいか分からなくなります。不器用さや運動面の困難さとして現れることもあります。
障害児はみんな感覚を受けるのが苦手?
では、障害のある子は全員、感覚を受け取りにくいのでしょうか?
答えはNOです。
障害によって様々です。自閉症だから全員が感覚過敏や鈍麻だと言うこともできません。障害よりも、むしろ発達段階をみたほうが分かりやすいです。
例えば、発達が初期段階の子。
この段階の子は、感覚をうまく受け取れないケースが多いです。
発達が初期段階の子
反応が薄い子がいます。
例えば、普段からメガネやコンタクトを使っている人は多いと思います。メガネとかコンタクトをはずすと視界がボヤけてしまいます。
発達が初期段階で、まだ目がうまく使えていない子もこんなふうにボヤけた中で生活していると推測ができます。
目だけではなくて、
・耳で聞くときもぼんやり
・物を触った感じもぼんやり
特に触覚がぼんやりだと、
・何を触っているのか?
・どうやって触っているのか?
が分かりません。
これでは、自分と物(もしくは人)との境界線が分からなくなります。そのため、「自分」「自己」などが育ちにくくなってしまいます。
さらに、感覚に気がつきづらい子は、どのくらいの感覚の量や強さが適正か分からない。そのため、自分の頭や顎(あご)を叩き続けるといった自傷行為に発展するケースもあるのです。
感覚を上手に受け取る練習
そのため、発達が初期段階の子にとって感覚遊びは大切な学びの場となるのです。感覚遊びを使って様々な種類の感覚刺激を感じる練習をします。
はじめは拒否反応が出ます。だって、今までじっくりと触れることがなかったものに触っているのです。少しずつ触るものの種類や時間を増やしていくことで拒否は減っていきます。
これは障害があってもなくても同じです。
気をつけないといけないのが、自閉症やHSPの特性を持っている子です。練習で克服するのが難しい生理的な拒否であるケースもあるからです。
参考資料
◆障害保健福祉研究情報システムDINF
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年8月号
作業療法士の立場から
―感覚統合理論の視点で発達障害を理解する―
https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n349/n349006.html
◆発達を促す遊び(2017.2.4)
飯能中央病院 リハビリテーション科 理学療法士 岡田朋子
https://www.fukushi-saitama.or.jp/saitama13/hattatsu/tenpu%20data/H29/02/041kougisiryou.pdf