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感覚と運動の高次化理論 用語集①(あ行~さ行)

​感覚と運動の高次化理論 用語集

 
 ​​​障害を持った子をみるとき、とても役に立つ【感覚と運動の高次化理論】。しかし、用語が難しくて、なかなか手が出しづらい印象があるのも確かです。そこで、今回、保育職でも分かりやすいように、用語集・キーワード集を辞書的に作ってみました。誰の許可もなく、私の解釈で勝手に考えた一大プロジェクトです。順次、更新していきます。
 
 
 ​あ行~さ行 ​   ​た行~は行 ​   ​ま行~わ行 ​ 

 


​​​​ あ行​​​ ​​​​

​​ あ ​​
 
アセスメント(あせすめんと):
支援の方向性を決めるために、目標や計画を設定します。そのための、子どもの発達に関する情報を集めること。①病気や障害、薬に関する「医学的情報」、②子どもの家庭環境や社会資源の利用の有無などの「環境面の情報」、③発達検査や所見などの「発達的な情報」などがある。 
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⇒ 障害児保育でアセスメントツールが必要な理由とは?
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​ い ​
 
一方だし模倣(いっぽうだしもほう):
自分の気が向いた時に、一人で行っている動作。本人に「相手と合わせよう」という意図はない。まだ模倣とは呼べない段階。しかし、この「一方だし模倣」は、やがて「模倣」につながる指標となる。
 
イメージの共有(いめーじのきょうゆう):
ままごとなどの遊び場面で、一緒にいる大人や他の子と、「同じ」シチュエーションや方法などを介して、遊ぶこと。
 
因果関係(いんがかんけい):
何かしたことによる結果。自分が行動した(原因)→対象のモノが変化した(結果)、というつながり。ex.玩具のスイッチを押したら光った。
 
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⇒ 【因果関係の理解】自分がやったことで変化したものに気づく【発達】
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 う ​​
 
内に向かう情動(うちにむかうじょうどう):
情動≒気持ち・感情。「情動」は、自分の中だけの感情や状態。「情緒」は、他者などが関わった時の感情や状態。という使い分けをするケースが多い。情動が内に向かっていると、物や人へ意識が向きづらくなってしまう。情動が高まり過ぎると、泣き出したり混乱したりすることがある。
 
運動感覚(うんどうかんかく):
触ったり、探索したりすることで得られる感覚。
 
運動の協応(うんどうのきょうおう):
目と手、耳と足など、身体の部位が一緒に使われること。発達が初期段階の子は、「見ながら手を動かす」「持っている玩具を振っていると目があらぬ方向を向いてしまう」ことがある。
 
運動調節(うんどうちょうせい):
自分自身の動きを調節すること。ex.動きを止めて姿勢を保つ、手を使って作業をする、など。運動を調節する力は、自分へ意識を向ける、対象物へ意識を向ける、手を使う、などの、対物・対人的な認知発達の育ちに貢献する。
 
運動感覚による始点と終点(うんどうかんかくによるしてんとしゅうてん):
手を使ったり、移動したりすることで、始まりと終わりが分かること。ex.レバーを動かし始める(始点)→もう動かないところまでレバーを下げ切る(終点)
 
運動方向(うんどうほうこう):
自分がどっちの方向に行きたいか、どこに手を伸ばしたいのか、など、自分の“行為(動き)”を向ける先。

音声摸倣(うんどうもほう):相手の声(話し)を真似して言うこと。
 
 え ​
 
エビデンス(えびでんす):
科学的根拠。実際に、その手技や技法などで効果が出るのか?という根拠。
 
 お 
 
応答性(おうとうせい):
対象物に何かしら働きかけをすることで、すぐに反応が得られる、ということ。ex.「応答性が高い玩具」=ごく簡単な操作で、玩具自身が光ったり音が出たりするもの。
 
 
​​ か行 ​​
 か ​ 
 
 外界(がいかい):
“自分”以外の物事、人、状況など。外界へ意識を向けることが発達の第一歩となる。
 
外界性志向(がいかいしこうせい):
自分の内側ではなく、外側(外界)に意識を向けること。発達が初期段階の子は、意識が外に向きづらいことが多い。自傷行為をし続ける子は、意識が内側に向いているといえる。
 
概念(がいねん):
共通して使われる物事の特徴。目には見えないけれど、頭の中にあるルールや分類。「時間」「長さ」「重さ」など。記号的な認識。
 
概念化(がいねんか):
頭の中で考えることを整理できるようになること。今まで、頭の中にイメージとしてはあるが、分類されていないためにグチャグチャだったものが、整理できるようになること。順番的には、象徴化→概念化。ex.「ことばを使って物事を考える」「文字や数という記号を使って物事を考える」

覚醒レベル(かくせいれべる):
覚醒度合の段階。はっきりと目が覚めている~何をされても反応がない。分類法には、【意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)】などがある。
 
覚醒水準(かくせいすいじゅん):
目が覚めている状態。目覚めている度合い。
 
過剰興奮(かじょうこうふん):
楽し過ぎたり嬉しすぎたりして、気持ちを抑えきれずに、興奮してしまうこと。泣く、怒るなど、子どもによっても表出する種類は異なる。
 
課題(かだい):
(障害児分野では)発達するうえで、つまずいている段階や、次に進むために必要な力。
 
からかいの拒否(からかいのきょひ):
自分がやりたくない、出来ないことを回避するために、やらなかったり、他の人にやらせようとするなど。本人は、人と親しくするために行っているのだが、周囲からは、「意地の悪さ」「性格の悪さ」と捉えられてしまいがち。やり取りとしては“間違った方法”といえる
 
感覚と運動の高次化理論(かんかくとうんどうのこうじかりろん):
淑徳大学の故・宇佐川浩先生が提唱した理論。『障害児療育の発達プロセスを縦断的に追い、そのつまずきを捉えることを目的としている。したがって、健常児の発達過程を完全な指標としているわけではない。また指導と直結する対応評価法でもない。(学苑社・感覚と運動の高次化からみた子ども理解Ⅰ P.188より抜粋)
発達段階は4つの層(今、どんな世界にいるのか?)8つの水準(その世界の中で、どのくらいの段階にいるのか?)に分類される。認知発達の凸凹がみえるので“個人内差”を捉えやすくなる。宇佐川先生が亡くなった後も、遺志を受け継ぐ先生方によって、どんどんアップデートされている。
 
感覚の過敏性(かんかくのかびんせい):
他の人たちは気にならないくらいの、音や光、触覚などの感覚刺激(量)でも、大き過ぎる刺激(刺激量量)と感じてしまうこと。ある程度、慣れるケースもあるが、「頑張れば」どうにかなるもの、ではない。視覚や聴覚以外にも、筋肉や関節の曲げ伸ばしの「固有覚」、姿勢やバランスの「前庭覚」、味覚や嗅覚でも過敏・鈍麻の症状は存在する。
 
感覚運動による始点と終点(かんかくうんどうによるしてんとしゅうてん):
触ったり、振動したりして気づく「始まり(始点)」と「終わり(終点)」のこと。見たり聞いたりするよりも、身体で感じた方が分かりやすい。ex.振動する玩具→震え始める(始点)→玩具の動きが止まる(終点)
 
感覚受容(かんかくじゅよう):
感覚刺激を受け入れること。発達初期の子だと、強すぎる刺激(過度な大音量、強すぎる光など)、複雑な刺激(光って音が出て・・・のような2つ以上の刺激が同時に出るもの)は受け入れられない。
感覚の受け取りやすさは、
易 ●揺れや回旋・筋や関節の曲げ伸ばし(前庭覚・固有覚)
↓   ●手で触った感じ(触覚)
↓   ●耳(聴覚)
難 ●目(視覚)
の順で、受け取りやすくなる。
 
感覚運動水準(かんかくうんどうすいじゅん):
「感覚刺激(感覚)」と「自分の動き(運動)」がつながり始める段階。ex.スイッチを押す(運動)と音が出た(感覚)。【感覚と運動の高次化理論】では、8つある水準のうちの、初期から2番目の段階。この段階の子と接するときは、感覚刺激をシンプルに、整理することが求められる。大人が子どもの原則に合わせる配慮も必要。
 
感覚入力(かんかくにゅうりょく):
感覚刺激を受け取ること。ex.音を聞く
 
感覚入力レベル(かんかくにゅうりょくれべる):
感覚刺激の強さ。ex.音量、光量、触れた感じなど
 
感覚入力系(かんかくにゅうりょくけい):
「見えること・聞こえること」と「見ること・聞くこと」は違う。感覚入力系とは、「目を使って情報を受け取ること」と「耳を使って情報を受け取ること」の2つ。「見ること(視知覚)」を「細部視知覚・全体視知覚」に、「聞くこと(聴知覚)」を「細部聴知覚・全体聴知覚」に分類している。(感覚と運動の高次化発達診断モデル)
 
感覚入力水準(かんかくにゅうりょくすいじゅん):
まだ、周囲の世界に気づいていなかったり、少しずつ気づき始めたりする段階。この段階の子は、まだ、手(運動)と目や耳(感覚)を同時には使えないことに注意。ex.まだ、玩具遊びの際に、目で見ながら手の動き(運動)を調節はできない。【感覚と運動の高次化理論】では、8つある水準のうちの、一番初期の段階。
 
環境の整備(かんきょうのせいび):
身の回りの状況をシンプルに整理すること。シンプルにすることで、子どもが、理解したり集中したりしやすくなる。ex.「食事中にCDから音楽が流れていると、食事に集中できなくなる。そのため、食事中は音楽を止めた」「自分の席が分からない子に対して、机に仕切りをつけたり、シールを貼ったりして分かりやすいようにした」環境整備の内容は、子どもによって異なる。環境を整えることが、情緒の安定にもつながる。
 
間主観的理解(かんしゅかんてきりかい):
支援者自身の経験から、子どもの気持ちを読み取って、行動や状態を理解していくもの。
←→客観的理解:行動を客観的に捉えるもの
  ※間主観的とは「主観的とは言い切れないが、客観的とも言い切れないもの」
 
間接化(かんせつか):
間に他のものを入れて、行うこと。
発達初期段階では、感覚と運動が近い存在。そのため、すぐに拮抗してしまったり、ごっちゃになってしまったりしまてしまう。発達が進んでいくにつれて、ことばや数なの記号を使うことができる。それら(記号)が、感覚と運動の間に入るため、様々なことが出来るようになってくる。記号を介することを間接的・間接化という。
ex.話す時に、一度、頭の中で“ことば”を使って考えてから、音声として表出する
 
関係づけ概念(かんけいづけがいねん):
実物や絵カードなどを見て、「シャツとズボン」「ボールとバット」のように仲間分け(関係づけ)をすること。その分類の概念。

関係性(かんけいせい):
人と人とが結びついた関係。モノでも事象でも同様。
日本語的には「関係」だけで意味は通る。「性」をつけなくても成り立つことば。
◆関係性の始点と終点(かんけいせいのしてんとしゅうてん):
人とのやりとりを使った「始まり」と「終わり」。
ex.ギターの玩具で、大人が弦を弾いた→子どもが気づいてギターに触れる(始点)、褒められた→喜ぶ など
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⇒ 【障害児保育】子どもと「関係性を築く」とは?対人関係と違うの?
 ※このブログ内記事に飛びます

  

関係性の発達臨床類型(かんけいせいのはったつりんしょうるいけい):
「自己像(関係性)発達」と「認知発達」のバランスをタイプ分けしたもの。
 
関係性認知バランスタイプ(かんけいせいにんちばらんすたいぷ):
関係性の発達臨床類型のひとつ。「自己像(関係性)発達」と「認知発達」がちょうど良いバランスで育っているタイプを指す。cf.【関係性優位タイプ】【認知優位タイプ】
 
関係性優位認知遅滞タイプ(かんけいせいゆういにんちたいぷ):
関係性の発達臨床類型のひとつ。対人関係と比べると、認知発達の遅れが目立つタイプ。好んで人と関わることが出来るが、本人は、自分の出来ないことを自覚出来ているため、「ふざけ」「からかい」によって回避することもある。誤学習につながりやすい。
 
認知優位関係性遅滞タイプ(にんちゆういかんけいせいちたいたいぷ):
関係性の発達臨床類型のひとつ。認知面の発達に比べると、自己像や関係性の発達が育ちづらいタイプ。たくさん喋っているが、他者と関わることが難しいなど。三項関係など、基礎的な部分でつまづいていることが多い。
 
 
​ き 
 
記憶の多容量処理のつまずき(きおくのたようりょうしょりのつまずき):
通常、記憶の課題では、同時に3つのものを覚えることが可能。しかし、注意力、集中力、記憶のために頭の中でリハーサルする力が弱い、などのために、記憶の課題でつまづくケースがある。
 
記憶の登録(きおくのとうろく):
物を記憶する際の、注意→記銘→保持→想起という一連の流れ。物事を記憶すること。 
 
記号(きごう):
あるものが表す事象やモノのこと。
ex.身ぶり記号:
両手を合わせる身振り→「ちょうだい」の意味になる。ことばで分からなくても身振りで相手の意図が分かるということ。
ex.音声記号:「ちょうだい」と言えば、その物が「欲しい」のだと相手に伝わる。
相手の言ったことばの意味・意図が分かるということ。     
 
記号化(きごうか):
自分の気持ちや意図などの伝えたい概念的なものを表現すること。
 
記号操作(きごうそうさ):
文字や数などの概念を使って、物事を考えること。
 
聞き分ける力(ききわけるちから):
どんな音が聞こえるのか?耳から聞こえるものから、情報を選び取る力
 
基礎視知覚(きそしちかく):
見分ける力(視知覚)の基礎となるもの。
 
基礎聴知覚(きそちょうちかく):
聞き取る力(聴知覚)の基礎となるもの。
 
記銘(きめい):
新しく経験したことを覚えて定着させること。
 
客観的理解(きゃっかんてきりかい):
客観的に物事を理解すること。子どもの言動をみて、その子の心情を予測せずに(主観的・間主観的には捉えずに)状態や原因の理解や特定をすること。
←→主観的理解
 
共同(きょうどう):
力を合わせて行うこと。用途が同じ物事。
 
協応(きょうおう):
異なる器官や機能が、協力し合って、それらがかみ合って働くこと。
 
協調(きょうちょう):異なるものが、互いに協力し合うもの。⇒手と目が協力しあうこと(協調)が、操作や一つの動作(協応)となる
 
教具(きょうぐ):
療育で使う玩具や用品のこと。玩具店で市販されている玩具や、自作のものなど。
 
 く 
 
具体物(ぐたいぶつ):
実際にあるもの。絵カード学習の前段階として、具体物(実物・現物)を理解することが必要。
 
グルーピング(ぐるーぴんぐ):
療育や訓練などの集団を作る際の、集団分け。どのようなメンバー構成、チーム分けにするかということ。発達段階を同程度の子を集めるのか、異なった段階の子を集めるのか、目的や現状にもよるため、慎重に考えなければならない。
 
空間(くうかん):
自分よりも外の世界。空間を把握するには、前後左右、上下、奥行きなどの方向、自分と人や物との距離感などを捉えることが、対人関係の育ちにも影響する。
 
空間の捉えの歪み(くうかんのゆがみ/ひずみ):
すぐに物にぶつかる、距離感をつかみづらいなど。自閉症の子によくみられるもの。この歪みに対して直接的なアプローチは難しい。しかし、その子が、どのように空間を捉えているのかを理解することは大切。
 
空間的文脈(くうかんてきぶんみゃく):
誰が、どこに、どんなふうに、という状況を読み取ること
cf.発達的文脈、時系列の文脈
 
空間的認識(くうかんてきにんしき):
前後左右、上下、奥行きなどの方向を捉えること。触って探索していくことが空間認識を育てる。
 
 
​ け 
 
 
 
 こ 
 
行為(こうい):
【行為】は動きが集まって意味をなすもののこと。【動作】は、身体の動き一つ一つのこと。
 
高次化(こうじか):
ある事象や力を踏まえて、次の段階に進むこと。
ex.ことばを獲得→ことばを使って物事を考えることが出来る
 
恒常的(こうじょうてき):
いつも同じであること。一定で変わらない様。
 
誤学習(ごがくしゅう):
本来の目的とは違ったものが身についてしまうこと。大人の関わり方や環境や好ましくないものであった場合に、誤って学習してしまうこと。
 
個人内差(こじんないさ):
発達の様々な部分の“育ち方の凸凹”のこと。ex.ペラペラ喋っているけれど、支援者からの声かけは全く理解していない(言語表出>言語理解)子どもの発達は、一概に「このレベルです」とは言いづらい。ごっこあそび:やくわりやシチュエーションのある遊び。
発達検査には、個人内差を知ることが目的の一つとなっているものも多くある。
 
固有感覚(こゆうかんかく):
筋肉や関節の曲げ伸ばしなどの感覚。
 
コミュニケーション手段(こみゅにけーしょんしゅだん):
他者と情報や意図のやり取りをするときに使う方法。身振りサインや現物提示などもこれに含まれる。ことば(音声)だけがコミュニケーション手段ではない。
 
語連鎖(ごれんさ):
単語を2つ以上つなげたもの。「ママ、来た」のように、助詞(が)は入っていなくてもよい。
 
 
​​さ行​​
 ​ さ ​
 
座位坐位(ざい):
座った姿勢。
 
細部知覚(さいぶちかく):
細かい部分を認識する力。四角形や三角形をの形を理解するためには、角が何個あって、斜面もあって等の細かいところを見るひつようがある。
 ・細部視知覚(さいぶしちかく):細かいところを見分ける力
 ・細部聴知覚(さいぶちょうちかく):細かいところを聴き分ける力
 
細部知覚と全体知覚の処理様式のバランス(さいぶちかくとぜんたいちかくのしょりようしきのばらんす):
細部知覚と、全体知覚の発達のバランスの分類。本来だったら、バランスよく育つことが求められる。
「知覚未発達タイプ」「細部知覚発達タイプ」「全体知覚発達タイプ」「細部・全体知覚統合タイプ」に分類される。
 
三項関係(さんこうかんけい):
「子ども ― モノ ― 大人」という、モノを介した子どもと大人のやり取り。三項関係が育ってくると「モノ」でなく「ことば」を介したやり取りが出来るようになってくる。そのため、三項関係は、コミュニケーションの基礎といわれている。
 
 し 
 
視覚的表象
視覚的な物からイメージをする力。
ex.地図を描きながら道順の説明をするなど
視覚と聴覚の統合(しかくとちょうかくのとうごう)
「見ること」と「聞くこと」を一緒に使って、情報を把握するすること。一つの感覚だけを使うよりも、複数の感覚を使うほうが、よりイメージしやすくなる。ちなみに、歩きスマホは、視覚と聴覚の情報の統合を妨げるといわれている。止めた方がよい。
 
視覚入力系(しかくにゅうりょくけい):
感覚入力系の中の、視覚系のもの。「基礎視知覚」「細部視知覚」「全体視知覚」のこと。
 
視覚優位(しかくゆうい)
「優位」というのは、どちらの感覚を使った処理が得意か?ということ。「周囲にある物を目で見て判断するタイプ(視覚優位)」と「耳で聞いて判断するタイプ(聴覚優位)」。これらは「どちらが得意か」というよりは、「どちらかが苦手なために、他方が発達している」という意味合いが強い。また、優位性は、視覚と聴覚で2つの対極で考えられがちだが、障害児の分野ではもう一つ「初期感覚優位」というタイプがある。
cf.聴覚優位、初期感覚優位
 
時系列の文脈(じけいれつのぶんみゃく):
子どもの行動を発達的にみて、意味を探るための分類。その中の一つ。
cf.発達的文脈、空間的文脈
 
刺激に振られやすい(しげきにふられやすい):
周囲から音が聞こえたり、誰かの動きが見えると、意識がそちらに向いてしまうこと。それらが顕著であること。ex.食事中、音が聞こえると、意識が音のほうに向いてしまう
 
志向性(しこうせい):
どこに意識を向けているのか。人に対して意識が向きやすいこと、モノに対して意識が向きやすい子がいる。『障害の重い子どものコミュニケーション評価と目標設定(坂口しおり著)』を使って評価ができる。
 
自己(じこ):
他人を通して感じられる「自分」。
自己に気づくことは、他者と関係を気づいていく前提となる力。
 
自己肯定感(じここうていかん):
自分で自分のことを「大切な存在だ」と思えること。
障害を持った子、とくに“グレーゾーン”と言われる子や、自己などによる中途障害の子は、自己肯定間を持てなくなるケースもある。     
 
自己刺激的行動(じこしげきてきこうどう):
自分の頭を叩き続けたり、手を振り続けたり、声を出し続けたりといった、常同的な行為のこと。感覚刺激が感じづらいこの場合、自分に入ってくる感覚が「足りていない」ために行っているケースもある。
 
自己像(じこぞう):
「自分はこんな人間」と思うイメージ。自分に関する気づき、イメージ、情報のまとまり。自己概念ともいう。
 
自己像発達(じこぞうはったつ):
自分自身の身体のイメージを活用して、自分の行動や運動を調節していく、という過程。自己像の形成は、目や耳、自分の身体や感覚などを意識して、自分の身体に気いていくもの。「情緒の安定」や「対人関係」などを支えに育てていくことが大切。大人との楽しい活動の共有だけでは難しいので、環境や発達へのアプローチが欠かせない。
 
自己調節性(じこちょうせつせい):
分かることに合わせる、運動や情動(気持ち)の調節。または、他者と向き合うこと。玩具の操作といった単純な行動調整ではない。
 
自我(じが):
自分が思う「自分」のイメージ。
 
自我強調(じがきょうちょう):
自我がしっかりとしてきた頃にみられる、反抗様の言動や態度。
姿勢と身体の志向性(しせいとからだのしこうせい)
外の世界に意識を向けるために、姿勢や動きを調整すること。対象物が視界に入るように姿勢を整えたり、しっかりと座ってもらったりすることなど。
 
視知覚(しちかく):
見分ける力。
 
始点と終点(してんとしゅうてん):
「はじまり」と「おわり」のこと。授業の「始まり」と「終わり」も「始点と終点」といえる。しかし、それよりも、もっと細かいスパンのものが重要。終始点とも呼ぶ。
ex.スイッチを押す(始点)→音が鳴る(終点)、玉を落とす(始点)→箱に落ちる(終点)
 
事物操作(じぶつそうさ):
実際に物を使って操作をすること。
 
自由場面(じゆうばめん):
活動場面で、大人が遊びの設定などをせず、子どもに自由に遊んでもらうこと。実際には、大人の介入や援助がないと“遊べない”子は多い。
 
受動と能動(じゅどうとのうどう):
「(他者から)○○させられる」→受動、「(自分で)○○する」→能動
 
情緒(じょうちょ):
気持ち、感情など心的なもの。「情緒」は、他者などの要因が絡む。
 
情動(じょうどう):
気持ち、感情など心的なもの。「情動」は、自分の中だけの気持ち、感情。発達が初期段階の子は、他者などの要因があまり絡まないので、情動ということばを使うことが多い。気持ちが高まり過ぎてしまったときに、自分で調節することができないと、興奮や混乱してしまう子がいる。
 
情動混乱タイプ
大人が伝えようとする意図やことばが分からなかったり、触覚や聴覚に過敏がある子も、刺激によって混乱してしまうタイプ。発達が初期段階の子に多くみられる。

情動興奮タイプ
楽しむことはできるが、徐々に感情が高まりすぎて、最終的には興奮してしまうタイプ。周囲からの刺激に振られやすい子に比較的多くみられる。

パニック型不安タイプ
いつもの場所や物、やり方と異なったときに、不安になり、情動が崩れるタイプ。自閉症に多いが、そのほかの障害の子にもみられる。
常同行動・行為(じょうどうこうどう・こうい)
手をヒラヒラさせたり、頭を振り続けたり、周囲から見て、一見意味がないように見える、繰り返される動き。
 
象徴機能(しょうちょうきのう):
外の世界(外界)に存在する情報を、いったん頭の中に取り込んで、必要に応じてイメージとして別のものに置き換える力。ことばに置き換えるものと、記号に置き換えるものがある。これまでは、パターンを使って物事を認識していた。象徴化する(象徴機能を使う)ことで、イメージやことばで物事を意味づけすることができるようになる。
 
象徴化(しょうちょうか):
頭の中にあるイメージを別のものに置き換えること。
ex.足を使って前に進むこと→「歩く」、赤くて丸くて甘いもの→「リンゴ」。数、文字等に置き換える等。
 
象徴化水準(しょうちょうかすいじゅん):
これまで、見たり聞いたりしたものをそのまま感じているだけだったが、この段階では、頭の中で考えてイメージ化して、別のものに置き換えることができるようになる。積木を車に見立てて遊ぶ「見立て遊び」などがこの段階でみられる。【感覚と運動の高次化理論】では、8つある水準のうちの、初期から6番目の段階。
 
視覚優位(しかくゆうい)
「優位」というのは、どちらの感覚を使った処理が得意か?ということ。「周囲にある物を目で見て判断するタイプ(視覚優位)」と「耳で聞いて判断するタイプ(聴覚優位)」。これらは「どちらが得意か」というよりは、「どちらかが苦手なために、他方が発達している」という意味合いが強い。また、優位性は、視覚と聴覚で2つの対極で考えられがちだが、障害児の分野ではもう一つ「初期感覚優位」というタイプがある。
 
初期発達発達初期(しょきはったつ・はったつしょき):
発達の段階がまだ初期であること。
 
触運動感覚(しょくうんどうかんかく):
触って“分かる”こと。触感覚を使って、外の世界から情報を得ること。
処理系(しょりけい)
【感覚と運動の高次化発達診断モデル】(『感覚と運動の高次化からみた子ども理解』P.189~)の分類方法。「知恵」「自己像」「情緒」を中心に、「視覚運動協応」「聴覚運動協応」の5領域
cf.「感覚入力系」「運動表出系」
 
新奇性が高い(しんきせいがたかい):
目新しいもの。珍しいもの。新奇性が高いと、子どもの目を引きやすい。
 
身体像(しんたいぞう):
ボディイメージ。身体をイメージ通りに動かす際、必要な力。
 
身体摸倣(しんたいもほう):
身体を使った模倣。身振りサインの獲得に必要となる力。ダンスなどもこれに含まれる。
 
 
​ す 
 
好き嫌いの拒否(すききらいのきょひ):
認知の力が育ってくると、自分の「好き・嫌い」に気づき始める。そのため、支援者からの働きかけに対して、嫌いなものには「拒否」がみられるようになってくる。
 
ステップアップ(すてっぷあっぷ):
ステップダウン(すてっぷだうん):
段階を踏んで先に進んだり、前に戻ったりすること。【感覚と運動の高次化理論】では、子どもとの関わりで、遊びなどの難易度の設定するときに行われる。一見出来るように見えるから、課題をどんどんステップアップさせるのではなく、一段階戻って、進めていくことも必要。 cf.ゆらし
 
図と地の弁別(ずとちのべんべつ)
人が描かれた絵を見るとき、実際は1枚の紙の平面的なものであっても、私たちには、人と背景の違いが分かる。このような、図形や文字(図)と背景(地)の違いを見分けること。この「図と地の分化(図地分化)」は絵以外のものにも言える。例えば、1対1で指示を出せば応じられる子でも、集団の中で指示を出しても通らないことがある。この場合、指示(図)、集団という雑多な刺激(地)ということができる。
 
 
​ せ 
 
静的活動と動的活動(せいてきかつどうとどうてきかつどう)
・「静的活動」とは、積み木などを組み立てる遊びや、物事を調べたりする遊びなど。
・「動的活動」とは、ダイナミックな体を使った遊びや見立て遊びなど。
緊張不安の強い子は「静的活動」を好むことが多く、動きの激しい子は「動的活動」を好むことが多い。活動の流れを組む際は、グループにどちらのタイプの子が多いかによって、「動的→静的」「静的→動的」を決めることで、効果が変わってくる。
 
(せん):
物事のつながり、流れ。点がいくつも重なりあって、線になる。発達初期の子は、「いま・その場所で」世界を捉えている。それが、因果関係や、始点と終点などの認知面が育つことによって、点が線になってくる。ex.ボールを缶に入れる遊び:ボールに触れる(点)→つまむ(点)→手を放す(点)→球が缶に落ちる(点)→缶の音がする(点)、といった一連の流れがつながると「線」になる。
 
前言語期(ぜんげんごき)
生まれてから1歳前後(始語)の、ことばが出るまでの期間。やり取りの際には、大人が子どもの言動から意図や感情を読み取る段階。定型発達の子は自力で力を獲得、乗り越えることができる。しかし、障害や発達のつまづきがある子の場合は、丁寧なアプローチが欠かせない。ことばを話す・話さない、だけでなく、コミュニケーションの発達にも影響する。
 
前言語機能(ぜんげんごきのう)
喃語、視線の共有や指さし、模倣、二項関係、三項関係、象徴遊びなど。
 
 
全体像(ぜんたいぞう):
子どもの発達状況などのトータル的な所見。発達には、認知、言語、社会性などの、様々な項目があるが、これらの網羅や羅列ではなく、集まった情報から“何を読み取るのか?”が大切。
 
全体知覚(ぜんたいちかく):
全体を関係づけて、まとめて、意味を持たせて、認識する力。日本語は助詞やニュアンスで意味が変わる。相手が話した会話を全体的に把握しないと、中身の理解はできない。
 ・全体視知覚(ぜんたいしちかく):
    全体的に見て内容を理解、把握する力
 ・全体聴知覚(ぜんたいちょうちかく):
    全体的に聞いて内容を理解、把握する力 ※「全体をパッと見たり聞いたりしてイメージする」というよりは、「対象と対象を“関連付け”て全体を理解する」こと
 
選択(せんたく):
複数のものの中から、選び取ること。ただ単に「対象物を見ているから」「はいと言えるから」という理由だけで、子どもに選択を迫るのは考えものである。
 
選択的拒否(せんたくてききょひ):
発達が進んでくると「拒否」が強くなることがある。これは、始まりと終わりが分かってくることで、行動に目的がみられるようになる。しかし、まだ、「好き」の幅が狭く、好き以外のものが「嫌い」となり「拒否」として現れてくる。この拒否のこと。
 
前庭感覚(ぜんていかんかく):
回旋や揺れ、などの感覚。
 
選択項(せんたくこう):
選択する際に、選ぶ事物のこと。2つのうち1つを選ぶのであれば、その「2つの物」のこと。
 
 
​ そ ​
 
即時対応模倣(そくじたいおうもほう):
⇒「模倣(もほう)」参照
 
粗大運動(そだいうんどう):
身体を使った大きな動きのこと。姿勢や運動、移動など。
←→微細運動

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​感覚と運動の高次化理論 用語集​

 

 

・2019.08.14:一部追加
・2020.06.02:手直し
・2021.01.17:手直し