なぜ肢体不自由児に感覚遊びがよいのか?
感覚遊びを知っていますか?
粘土のような手で触る感触遊びを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、それ以外にも種類がたくさんあります。
シーツブランコ、光遊び、身体を動かす遊び・・・
障害があってもなくても子どもたちに人気の活動です。
障害を持った子の施設では活動として取り入れているところが多いです。
では、感覚遊びをするとき目的(ねらい)を設定してから行っていますか?
支援者が遊びの目的をおさえておくことで子どもたちの言動の意味をより深く理解できるようになります。
今回は放課後等デイサービス&児童発達支援で感覚遊びを行うときのポイントや目的(ねらい)を紹介します。
感覚遊びとは?
感覚遊びとは文字の通り身体の感覚にうったえかけるような遊びの総称です。
障害がある子もない子も同じように遊べることがメリットの一つです。
人間の感覚はいくつかあります。
放デイ&児童発達支援での感覚遊び
障害児が学校が終わってから通う施設である「放課後等デイサービス(放デイ)」や未就学児が通う施設の「児童発達支援」では様々な活動を提供しています。
次はどんな活動にしようか?
活動内容を考える人は頭を悩ましているのではないでしょうか?
そんなときはぜひ感覚遊びをやってみてください。
感覚遊びは多少の発達段階の差は関係なくなります。
集団で活動しなければならないときでも有効です。
感覚の種類
人間には様々な感覚があります。
手や目だけではありません。
体中の感覚器を使って外からの情報を受け取り理解しているのです。
発達が初期段階の子たちは感覚器は 1つずつしか使うことができません。
(手と目を同時に使うことができない)
しかも、わたしたちの周りにある情報というのは複数の感覚からなっているのです。
だからこそ、それぞれの感覚を感じる(受け入れる)練習として感覚遊びを行うとよいのです。
まずは感覚を受け入れる、そして次の段階として他の感覚も意識するようにしていく。
先ほどの「手と目は同時に使えない」という例では、触る→見る→見て調整するという流れを作っていくわけです。
単なる「感覚遊び」でも「どの感覚にうったえかける遊びなのか?」を考えることは大切なポイントとなります。
五感+α
分かりやすいのが「五感」と呼ばれるものです。
目で見て、匂いを嗅いで、触ってみて、味わって、耳で聞いて。
「五感」以上に大切な分け方があります。
発達支援や療育で重要だと言われるのは次の5つです。
・視覚
・聴覚
・触覚
これらに加えて次の2つもおさえておきたいです。
・固有覚
・前庭覚
これら5つはまとめて「基礎感覚」と呼ばれています。
固有覚や前庭覚という感覚があります。
固有覚&前庭覚
固有覚と前庭覚。
あまり聞かないことばです。
これらは本人も感じにくい感覚なのです。
固有覚(こゆうかく):
固有感覚と言ったりもします。
筋肉や関節が曲がったり伸びたりしたときの感覚です。
わたしたち大人はこの感覚を無意識的に感じています。
そのため、ちょっと離れたところにある物を持ったり、立ち上がったりが無理なくできるのです。
自閉症のなかには、手を曲げたり伸ばしたりすることを繰り返している子がいます。
これは固有覚を感じにくいからです。
何度も繰り返しやってみないと手足を曲げ伸ばした感じが身体に入ってこない(感じられないのです)。
あれは癖ではないのです。
前庭覚(ぜんていかく):
前庭感覚と言ったりもします。
これはバランス感覚のことです。
揺れを感じるか?というものです。
この感覚が充分でないとまっすぐ歩くこともできません。
フラフラしてしまう。
発達障害の子で公園の遊具を渡るときにいつもピューっと駆け抜ける子を見たことがありませんか?
これは運動神経がよい子ではないことが多いです。
ゆっくり歩くとバランスが取れないから駆け抜けている状態なのです。
基礎感覚
基礎感覚とは
特に基礎感覚を重視しているのが「感覚統合」という考え方です。
簡単に言うと「感覚統合」では感覚(感覚刺激)を次のように扱っています。
人は常に様々な感覚が身体を通して自分の中に入ってくる。
入ってきたものは脳へと送られる。
それはひとつではなく、いくつもの感覚が送られてくる。
その感覚をまとめ上げたものが大切な情報となる。
その土台となるのが「基礎感覚」なのです。
これはピラミッドのようにあらわすことができます。
常に不安定であり、土台部分にあるものが一つでも育たなければ、上のものは崩れてしまいます。
崩れるということは育たないということです。
感覚にも難易度がある
感覚の受け取りやすさがあります。
どの感覚が「簡単に感じ取れるのか?」ということです。
易 ◆揺れ、手足の曲げ伸ばし(前庭覚・固有覚)
↓ ◆手で触れた感覚(触覚)
↓ ◆耳で聞いた感覚(聴覚)
難 ◆目で見た感覚 (視覚)
面白い絵本を見せるよりも、抱っこしてユラユラと揺らしてあげた方がよっぽど理解しやすいのです。
特に障害の重い子ほどこの難易度が重要になってきます。
感覚遊びの種類と目的
感覚にはいくつか種類があることをおはなししました。
感覚遊びの「ねらい」は目的の感覚刺激をじっくりと感じてもらうことです。
ただし、無理強いはいけません。
「楽しい」遊びとして感覚遊びを提供していきます。
感覚遊びにはどのような種類がある?
どんな目的で行っていくの?
肢体不自由児と感覚遊び
その前に、肢体不自由児と感覚遊びについて考えていきます。
感覚遊びはどんな子でも参加出る遊びです。
・障害がない子
・発達障害の子
・肢体不自由の子
本当に誰でもOKです。
しかし、注意点がいくつかあります。
・何でも口に入れる子
⇒ スライムやビー玉など、口に入れると事故が起こる可能性があるものは要注意
・過敏がある子
⇒ ほとんどの子は触ったりしても何ともないけれど、極度に触るのを嫌がる子がいます。これを「過敏」といいます。
※生理的過敏と心理的過敏
◆生理的過敏
⇒ 触覚や聴覚など生理的に受け付けられない状態。いつ、どんな場面でも過敏が出ます。自閉症などの子に多い
◆心理的過敏
⇒ 経験が少ない場合、何となく嫌な場合、受け付けられない子がいます。その時によって過敏が出たりでなかったりします。生理的過敏とは異なるので注意が必要です。
ちなみに発達障害の子でよくみられる「偏食(へんしょく)」。
特定の食材を食べられない症状です。
これも感覚が関係しているケースがあるので注意が必要です。
前庭覚
※「前庭感覚」が弱い子は普段からクルクルと回っていたり揺れる遊具を怖がったりします。
例)
・シーツブランコ
・トランポリン、エアートランポリン
固有覚
※自覚しにくい感覚である「固有覚」。
障害を持つ子のなかには固有覚を十分に受け入れられない子がいます。
それが原因でいつも飛び跳ねている等、落ち着きのなさが見られる子もいます。
揺れなどの「強い刺激」を取り入れることで「心地よさ」を感じられる可能性があります。
それで落ち着くようになるのです。
例)
・綱引き
・紙ちぎり
・ハサミ
触覚
※「触覚」が弱い子のなかには他者から触られることを嫌がる子がいます。抱っこなどのスキンシップを嫌がることも。見慣れないものには近づかないことが多いです。
例)
・小麦粉粘土
・片栗粉粘土
・春雨遊び
・スライム
・泥んこ遊び
・絵具遊び
・水遊び
・その他
⇒ スポンジや葉っぱ等、異なる触感のものに触れる
聴覚
耳で聞いた感覚
※「聴覚」に過敏がある子は特定の音や大きさに対して過剰に反応するようになります。何かに夢中になっているときには過敏が和らぐこともあります。
例)
・リズム遊び
・楽器遊び
視覚
※「視覚」に過敏がある子のなかには、蛍光灯の光(チカチカした感じ)を嫌がる等、特定のものを見るのが苦痛な子がいます。
逆にタイヤや扇風機の回転を見るのが好きでずっと見ていられる子もいます。
例)
・絵本
・ペープサート
・光遊び
⇒ 暗い部屋でペンライト等を使って光を動かす
⇒ スヌーズレンのような緩やかな光を楽しむ
・ミラーボール
・パラバルーン
・スノードーム
・万華鏡
まとめとして
今回は感覚遊びのはなしをしました。
感覚遊びにも目的や種類があります。
障害が重い子ほど丁寧に準備をしてあげると活動自体がよい経験となります。
侮ることなかれ「感覚遊び」
よかったら参考にしてみてくださいね。
★感覚遊びの本はたくさん出ています。
療育系だけでなく保育系の本も活動を決めるときの役に立ちます!