言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

発達検査などで点数が低く出る「発達初期段階の子」への支援とは?

発達初期の子の"発達"をどのように捉えればよいのか?

子どもの発達は遊びや生活を通して段階的に上に伸びていきます。

しかし、心身に何らかの障害があると、発達の途中でつまずいたり、スピードがゆっくりになったりすることがあります。

初期段階でつまずいている状態を「初期段階」ということがあります。

今回は発達が初期段階の子どもをどのように捉えて支援を行っていけばよいのか?

ポイントは3つあります。

 

ポイント!

① 「できない」理由を考える

② 子どもの「原則」を知ること

③ 「感覚」をベースに考えること

 

 

発達が初期段階の子の特徴

周りの状況をうまく理解できないので、意識が内側に向きがちです。特徴としては下記のようなケースが多いです。

 特徴 

感覚を使った遊びを好む
→揺らし、ブランコ、水などのしっかりとした感覚刺激

目をうまく使えていない
→何となく見てはいるけれど、ものを見分けたり、意味を理解したりするのが苦手

玩具遊びが上手でない
→玩具の使い方や操作の仕方を理解できていない

周囲のことを把握できる力が弱い
→ことばや物事の意味、状況を理解しづらい

 

 

発達初期の子の検査結果は低く出やすい

では、発達初期の子の発達検査やアセスメントシートではどのような結果になるのでしょうか?

子どもによっても異なりますが全体的に低い点になりやすいです。そのため「できないことばかりでした」という結果になりがちです。

 

大人は結果を見て「できないこと」にばかり目が向いてしまいます。しかし、そうではなくて「なぜできなかったか」を考えることが必要です。「できない」のにも必ず理由があるからです。

「なぜ?」を深めていくことで本来の子どもの力が見えてくるのです。

 

 

「できない」理由を探ろう!

発達検査やチェックリストなどで点数が極端に低く出る子がいます。

いったいどんな子がどんな時に低くなりやすいのでしょうか?

 

何が分からないのか?

発達が初期段階のため、検査項目に引っかかりにくいケースがあります。

検査では「積み木を2つ積む」というように通過基準がしっかりと決められています。

しかし、発達初期の子の場合「何をすればよいのか分からない」から答えられないというともあります。

 

質問の意味が分からない

何を聞かれているのか分からないと答えようがありません。

これは言語理解の問題です。

 

目の前にある物品が何だか分からない

例えば、自分の手が届く場所に積み木が置いてあったとします。検査的にはその積み木を持ったり動かしたりしてもらいたい。しかし、物品がもつ意味が理解できない。そのため舐めたり手で払ったりするだけで終わってしまう。

物品の用途理解の問題です。

 

特定の動作が身についていない

私たちが普段何気なくしている動作は、生まれてから今まで学んで身につけてきたからこそできているのです。

例えば「置く」という動きは意外と難しい。発達初期の子たちは置かずに投げるか放ってしまうことが多いのです。

動きの獲得にも順番があるのです。支援者にとって盲点なのがこれです。

 

答え方が分からない子・出せない子

質問の内容は理解しているが、どう答えたらよいのか分からないケースです。

分かっているけれど何ならの理由で大人に応じられない子です。

 

身体的な制限がある

麻痺があるためにうまく身体を動かすことができない、話すことができない。

質問の意味を正しく理解していたとしても、実際に物品を動かせないと正答(通過)にはなりません。

⇨ 肢体不自由など

 

他者へ意識を向けにくい

他者に意識を向けることが苦手なために質問に答えられない。

支援者から質問されても、物品に夢中で聞こえていなかった、というケースも考えられます。人の話しを聞くメリットを感じていない場合もあります。

⇨ 発達障害など

 

 

子どもの原則を探ろう!

それでは発達初期の子の捉え方をみていきましょう。

どのようにみていけば本来の子ども像を理解できるのでしょうか?

子どもによって異なる「考え方」や「捉え方」「理解の仕方」の特徴を探るためには何をみるべきなのでしょうか?

 

表出や反応はゆっくり小さく出ているかも

まずは丁寧にみてあげる

「丁寧」と言われても曖昧過ぎるかと思います。ようは子どもからの反応をしっかり待ってあげるということです。

発達初期の子、特に肢体不自由の子の場合、反応がゆっくりだっり小さかったりします。意外と大人は見落としてしまうのです。

 

反応や表出の種類

発達初期の子の反応や表出方法は子どもの様子を見ながら大人が判断していきます。着目するべき部分の例は下記の通りです。

ex.
・表情の変化(パーツの動き等)
・発声(ことばにならない声も含む)
・手足の動き(指先だけの場合もある)
・身体の緊張
・発汗
・視線

※反応の仕方も子どもによって異なります。支援者間で情報を共有することが大切です。

 

子どもによって異なる反応

丁寧にみていくうちに「子どものこと」が分かるようになってきます。

・Yesのときに左口角を上げているな
・Noのときには舌を出しているな
・困ったときにも笑う子だな

上記のような反応に気づくことで、子どものことを知ることようになってきます。

そして、その積み重ねがお互いのコミュニケーションのストレス軽減につながるのです。

 

ex.
子どもによっては 「Yesのときに舌を出す子」もいれば 「Noのときに舌を出す子」もいます。

 

 

感覚ベースで考えよう!

発達が初期段階の子たちは会話を聞いても理解できないことがあります。文字やサインも同様です。

だとしたら何から情報を仕入れているのでしょうか?

それは感覚(感覚刺激)です。

 

感覚を使って情報を手に入れる

子どもたちは周囲からの感覚(感覚刺激)を通して情報を集めています。

・あっちで何かが光った(視覚)
・足音が聞こえた。誰か来るかな?(聴覚)
・いい匂いだな。僕の好きなカレーかな?(臭覚)

 

感覚を使って快・不快を判断する

感覚(感覚刺激)から何が分かるのでしょうか?
それは「これ、いいな」「これは嫌だな」という感じです。
「これ、いいな」がキッカケで遊びにつながることも考えられます。

発達初期の子は「快・不快」で物事を判断しているのです。

 

 快・不快とは? 

はじめは「不快さ」でしか判断できません。

不快 or 不快じゃない

そのように判断を繰り返していると、自分にとって「快」に気づくようになってきます。

不快 or 快

「快」に気づくということは、自分の「好き」に気づくということです。

快・不快は感覚的な刺激もしくは生理的な要因が元になります。

 

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ex.


・抱っこされて心地いいな
・ご飯が美味しいな


不快
・暑くて嫌だな
・オムツが濡れて嫌だな

 

 

感覚を支援で活かすためのポイント

子どもが「好きな状態」はどんなものなのか分かります。

・強く揺られた方が好き
 =揺れが弱いと気づけない

・しっかりとつかまれた方が好き
 =ソワソワ触られるのが嫌

・硬い物の方が受け入れやすい
 =軟らかい物をつかむのは嫌

 

遊びの際にどのくらいの感覚刺激で関わればよいのか?が分かるのです。

・強弱
・長短
・タイミング

などなど。

 

 

どんな遊びがよいか?

そんな子たちにどのような遊びを提供してあげられるのでしょうか?

基本的に実際に自分の手を使う遊びを用意してあげるとよいです。

自分で物に触れて動かすことで、触感や変化などに気づき、興味が拡がっていくのです。触って初めて気づくことがたくさんあるのです。

 

・入れたり出したりする玩具

⇒ 物を「入れる」-「出す」という遊びはシンプルで分かりやすいです。行為自体が複雑ではないので、発達が初期段階の子でも比較的楽しめる遊びとなりうるのです。

 

・目を使って手をコントロールできる玩具

⇒ 玩具で遊ぶときに手元を見ていない子は多いです。普段から動きが「雑な子」「粗い子」と言われる子たちです。目と手を一緒に使うことは難しいのです。しかし、目を使って自分の動きをコントロールすることで細かい動きが上手になってくるのです。


・型はめやパズルなど

⇒ 簡単なものを選ぶこと。大人は「複雑なものの方が楽しそう」だと思いがちです。しかし、簡単な形の方が見分ける練習になりますし、集中力を養うことにもなります。

 

・真似遊び

⇒ 真似をすることで動きや手順などを身につけることができます。他者の真似をするためには、相手の動きや表情などをしっかりと見る必要があります。しかも、見ながら自分の身体を動かす、見て覚えることが求められるのです。

 

・音楽にあわせた遊び

⇒ 真似遊びの延長線上にあるのが音楽遊びです。楽器を弾いたり、ピアノの音に合わせて動いたり、バリエーションがたくさんあります。それらをするためには、耳で音を聞くことが欠かせません。

 ・音が聞こえる/聞こえない
 ・音が同じか/違うか
 ・何の音なのか?
 ・どんな意味がある音なのか?

リズムやテンポを捉えるためにも聞くこと(聞き分けること)も大切なのです。

 

まとめとして

今回は、検査で数値が低く出る「発達初期段階の子」に対して、どのように関わっていけばよいのか、のヒントを説明しました。

子どもの反応を待つ
感覚という考え方で子どもをとらえる

ことを念頭に置いて係ると、子どもの見え方がけっこう違ってきます。

よかったら試してみてくださいね。

活動として感覚遊びを取り入れるのもよいですよ!

 

 

★発達段階をまとめた記事です。こちらの記事もご覧ください

www.hana-mode.com

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