「手本」&「見本」は何となく見せるものではない!
子どもに本や玩具を見せたり、工作の手順をやって見せたりするときに「どうすればうまく伝わるんだろう?」と思ったことはありませんか?
障害がない子でもなかなか理解してもらえない。
障害がある子ならなおさらです。
今回は「手本」「見本」を見せるとき、どんなふうに見せれば子どもが理解しやすくなるのでしょうか?
・やり方は?
・そのとき大人が気をつけたいこととは?
というポイントを説明します。
「手本」と「見本」の違い
どちらも「真似るための対象」という意味合いがあります。しかし、微妙にニュアンスが異なるのです。
手本
「100%正しいもの・正しいとされるもの」という前提がある。
対象となるものを真似るためのもの
見本
「あくまで一例。完全に正しいかどうかは分からない」というもの。
具体的な例となるもの
※そこまで厳密に使い分けている人も少ないと思われます。この記事でも同様です。
何のために見本を見せるのか?
大人が出した見本や手本は子どもにとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
子どもがマネすることで「自分はどういうふうに動いたらよいのか?」に気づくことができます。
見本&手本には子どもがより理解しやすいような補助的な役割があるのです。
キッカケづくりなのです。
正しい見せ方ってあるの?
子どもにやって欲しいこと、理解してほしいことを伝えるために大人がやって見せます。
大人同士であれば、相手に見本をパッと見せるだけ、もしくは見せながらやってみればたいていは伝わります。
しかし、子どもは大人と同じようにはいきません。
なぜなら、まだ子どもは大人と同じような捉え方ができないからです。
・見分ける力
・覚える力
・一つに注意を向け続ける力
などの力が充分に育っていないからです。
これは、子どもに障害があってもなくても同じです。
なぜ理解できない?発達的な視点から
見本や手本を見せたとしても理解してもらえないことがあります。
なにがいけなかったのでしょうか?
やり方?タイミング?
支援者側に原因が見い出せないとき、子ども側の原因も考えてみてください。
たとえば発達面。
実は発達的にみて「それじゃあ理解できないよね」というケースがあるのです。
ここでは「目」と「耳」を例に説明します。
見る力が十分に育っていない
⇒ 見る力とは視力のことではありません。目で見て判断する力です。
・「同じ・違う」
・「グループ分け」
・「空間(前後、左右、上下など)」
・「背景と対象物を分けてとらえる」
などがあります。
また、小さい子や発達がゆっくりな子は素早く視線を動かすことが難しい場合があります。
そのため、パッと物を見せられても理解する前に目の前から消えてしまうといわけです。
これでは分かるわけがありません。
だから、子どもにお手本を見せるときには「ゆっくり」「はっきり」が大原則なのです。
↓ 視覚の発達を知りたい方はこちらをどうそ
聞く力が十分に育っていない
⇒ 聞く力とは聴力のことではありません。聞いて判断することです。
・「音の存在に気づく」
・「音と声の聞き分け」
・「何を言ったのかを理解する」
などがあります。目と同じです。耳もスピードが速いものはとらえにくい。早口でまくしたてられても理解が追いつかないのです。
↓ 聴覚の発達を知りたい方はこちらをどうそ
見せ方のポイントとは?
見本や手本を見せるときのポイントはあるのでしょうか?
一番気にすべきは子どもにとって理解しやすいのか?ということです。
① ゆっくり見せる
「当たり前じゃない」そう言う人が多いと思います。
しかし、実際はできていないことが多いのです。
ではどのくらいのスピードがよいのでしょうか?
子どもの年齢にもよるのですが、幼稚園児(3~6歳くらい)で大人が普段から無意識で見せるスピードの1/8が適切と言われています。
障害がない子でです。
何らかの障害がある子の場合は、さらに気をつける必要があります。
② 理解できるやり方で
生活年齢(実年齢)や発達年齢(知的年齢)などによっても、物事を理解できるものが違います。
・目の前にある物を理解できているか?
・大人がやっていること(意図)を理解できるか?
・見た後に子ども自身がやるということが分かっているか?
理解にもいろいろあります。目の前にいる子は、どのようにどのくらい理解できているのでしょうか?
ちなみに、子どもの現在の発達を大人が把握しておかないと、
・大人自身のイライラ
・虐待
・高過ぎ or 低すぎた評価
の原因になります。
だって子どもに能力以上のものを求めたってできるはずがないんですから。
↓ いろんな発達はこんな感じです。参考にどうぞ。
こんな見せ方はNG!
ゆっくりと子どもが理解できるやり方で見本&手本をみせよう、と説明しました。
それ以外に「こんな見せ方はダメ」というやり方はあるのでしょうか?
大人が喋りすぎると子どもに伝わりにくくなるということです。
意外と盲点なのではないでしょうか?
見てほしいものを目の前に出して「ほら、見てごらん。○○だよ。ほら、ほら!面白いね。楽しいね。お友達の◇◇君も好きなんだよ。これは昨日100円ショップで買ってきたんだ。お店を3つも回ってやっと見つけたんだよ・・・。ほら、見て!」
子どもは自分は見ればいいのか?話しを聞けばいいのか?迷ってしまいます。
というか困ってしまいます。
大人が喋りすぎると障害がない子であっても「?」となってしまいます。
まとめとして
今回は「手本」「見本」をどのように行えば子どもが応じやすくなるのか?というポイントを説明しました。
これをやれば絶対OKというものでもありません。
しかし、念頭に置きながら育児や支援を行うことは子ども理解につながるはずです。
手本や見本は何となくやってはいけないのです。
よかったら参考にしてみてくださいね!
ちなみに、相手を真似るという意味の「摸倣(もほう)」。
これにも発達の順序があるので注意が必要です。
↓ 模倣の発達はこちらをご覧ください