言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「ことばの遅れ」がある子への関わり方の基本「インリアル」!障害児にも!

発達の遅れや障害がある子へのかかわり方とは?

子どもは1歳になると喋り始めます。

これには個人差があります。

1歳前に喋り始める子もいれば、3歳頃にようやくしゃべり始める子もいます。

かならずしも喋れない=知的障害というわけではありません

 

子どもの「ことば」が早い・遅いは周囲の子たちと比べる必要はないのです。

しかし、どうしても比べてしまうかもしれません。

では大人たちが子どもにしてあげられることはあるのでしょうか?

 

ここでは、そんな「ことば」が遅れている子に対してできることを紹介します。

それが「インリアル・アプローチ」という方法です。

聞いたことがある人もいるかもしれません。

誰にでもできるアプローチ(方法)です。

 

 

インリアルとは?

ことばの遅れがある子への関わり方を調べているとよく目にするアプローチがあります。

それがインリアルです。

正式にはインリアル・アプローチ

 

「相互に反応しあうことで、学習とコミュニケーションを促進する」

日本インリアル協会 ホームページより

 

つまり、簡単に言うと・・・

 

ポイント!

コミュニケーションとは一方通行ではない

一方的に教え込むものでもない

目の前にいる子どものことをよくみて、やり取りを続けたほうがよい。

やりとりの楽しさを感じてもらうことがことばやコミュニケーションの力を育むことになる。 

 

 

子どもの今持っている力に注目する

障害の有無に関わらず 子どもの現状に合わせた環境の調整という支援は大切です。

「環境の調整」といっても、室内の環境だけでありません。

子どもに対する関わり方も「環境調整」のひとつなのです。

その関わり方のひとつが「インリアル」なのです。

 

 

インリアルというやり方

インリアルアプローチとは、子どもが持っている力に合わせることが大切とおはなししました。

大人が子どもに合わせてやり取りを行うのです。

インリアルが大切にしているのは次の通りです。

ということを基本に接していきます。

 

 

実際のアプローチ

さらに詳しく見ていきましょう。

インリアルの考え方は分かりました。

では実際にどのように子どもと関わればよいのでしょうか?

 

ポイント!

① 子どものマネをする

② 大人の気持ちや言動を言語化する

③ 子どもの気持ちを代弁する

④ さり気なく修正する

⑤ 付け加えて意味を拡げる

 

 

① 言動を真似る

子どもがしていることを同じようりにマネてみます。

まだほとんど話さない子どもには、身振り、動作で応えます。

子どもは、自分の喋りや動きをマネてくれる人に興味を持ちます。

インリアルでは「ミラリング」と呼ばれています。

 

ex.

「あーあーあー」「のんのんのん」など単語としては意味を持たないお喋りをしている子がいます。

また、何となく拍手をし続けている子もいます。

このような、子どもが言っていること・やっていることをマネてみるのです。

 

 

② 大人の言動や気持ちをことばにする

大人がやっていること・思っていることをことばで言い現わすというものです。

大人が何をやっているのか?

大人自身がどう感じたか?

どう思ったか?

といった目に見えないものをあえてことばで言うのです。

「セルフ・トーク」と呼ばれています。

 

ex. 人参を切るとき

⇒「いまから人参を切るよ・・・ちょ・・・っきん、はい、切れた」というように大人が今なのをやっているのかを言い表します。

ex. 子どもに叩かれた

⇒「痛い。すごく悲しい気持ちになったよ」と気持ちをことばで言い表します。

ex. 遊んでいるとき

⇒「楽しいね」

 

 

③ 子どもの言動や気持ちを代弁する

子どものことを大人が変わってことばにするというものです。

・子どもが「やっていること(状態)」

・子どもが「感じているであろうこと(気持ち)」

を大人がかわりにことばにすることで、子どもは「今自分がやっていること」に名前があると気づくことができます。

これは「パラレル・トーク」と呼ばれています。

 

ex.

遊んでいるときに

⇒「楽しいね」

玩具を取られたとき

⇒「嫌だったね」

 

 

④ さり気なく修正する

子どもが言い誤ったら大人がさり気なく修正して言ってあげるというものです。

子どもに言い直しはさせません

「リフレクティング」と呼ばれています。

 

ex.

子ども「チャカナがいるよ」

大人「そうだね、魚がいるね」

 

 

⑤ 付け加えて意味を拡げる

子どもが言ったことに意味を拡げて返すというものです。

大人がことばを付け加えることで内容が拡がるのです。

「エクスパンション」と呼ばれています。

 

ex.

子ども「ブーブー」

大人「そうだね、赤いブーブーいたね」

 

 

⑥ ことばの使い方を示す

正しい言い方、やり方などの見本を見せるというもの。

会話を通して「役割交替」「ことばの使い方」などのモデルを示していきます。

これを「モデリング」と呼びます。

 

ex.

子ども「(無言でおやつを食べている)」

大人「このドーナッツ、おいしいね」

 

 

まとめとして

今回は、ことばに遅れがある子や障害を持つ子と関わるときの関わり方を紹介しました。

「インリアル」は ちょっと付け加えてあげる というもの。

それが大切です。

ぜひ、インリアルを使ってみてください。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

www.hana-mode.com

 

 

参考資料

◆言語発達支援研究からみた指導アプローチの類型化
-欧米の指導法研究から- 大伴 潔
http://www.jasssdd.org/Journal/pdf/0506.pdf

◆幼児期における文脈推論能力と方略の発達的検討:

指示対象付与における語用論的解釈の発達と障害
九州大学大学院人間環境学府 村上太郎
http://www.coder.or.jp/hdr/27/HDRVol27.12.pdf

◆自閉症スペクトラム児のコミュニケーション支援に関する事例研究
内田芳夫 西村霞
https://www.nankyudai.ac.jp/library/pdf/mkn3_0002.pdf

◆高機能広汎性発達樟害にともなう語用障害 
特徴, 背景, 支援

大井学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcomdis2003/23/2/23_2_87/_pdf

◆日本INREAL研究会

http://www3.kcn.ne.jp/~inreal/INREAL.html