言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

模倣とは?種類・発達の順番・言語との関係を言語聴覚士が解説

摸倣で得られる力って何だろう?

 

「模倣」が子どもにとって、どのような力なのか知っていますか?

摸倣とはマネをすることです。マネをする=遊び、ちょっと小馬鹿にする・・・あまり良い意味では使われません。しかし、人のマネをすることが発達の育ちにつながるとも言われています。

今回は、模倣を獲得する順番、種類、支援につなげる考え方を紹介していきます。

※2026年4月内容を加筆修正しました。

 

 

 

摸倣とは?

摸倣とは、他者の動きやことばを真似ることです。人のマネを通して様々な機能を獲得することができます。

・顔マネ
・鏡遊び
・ダンス

など、模倣自体が遊びのひとつとしても活用されます。そのため楽しみながら学ぶことができるのです。

そもそも摸倣をするとき、相手の言動をしっかりと見ておかないと真似することができません。さらに真似をするためには自分の言動を自分でコントロールする必要があります。

 

 

 

模倣が大切といわれる理由


他者と合わせる力が育つ

摸倣をするためには、他者を意識しなければいけません。意識して合わせられるようになるということです。


自分の動きを調整する力が育つ

真似するためには、相手の動きに気づいて、自分の動きを重ねていくことが必要です。
自分の身体を意識して調節することは、自分自身をコントロールすることにつながっていきます。


外から情報を取り込み、学ぶ力が育つ

摸倣をするためには、見たり聞いたり身体を動かしたりしながら外からの情報を取り込んでいきます。この経験が様々な刺激や経験を吸収しやすくさせます。


イメージする力が育つ

遅延摸倣のように、過去に合ったことを思い出して、それを再現するということは、イメージする力を豊かにします。それが象徴機能を育てるのです。


ex.
・みたて行為がつながってストーリー性をもつようになる(象徴あそび)
・人形を自分物の代役として登場させるようになる
・過去の出来事を木片などを使って再現するようになる。

 

象徴機能(しょうちょうきのう):

外の世界(外界)に存在する情報を、いったん頭の中に取り込んで、必要に応じてイメージとして別のものに置き換える力。

ex.ことば、文字、看板、サインの理解など

 

 

何を真似るのか?という種類

 

模倣は、ただ真似ることではありません。種類があります。

下記の表は、何を真似るのか?という分類の仕方です。

 

模倣 内容
動作模倣 身振り・手遊び
音声模倣 音・ことば
物操作模倣 道具使用の模倣
意図模倣 目的の再現

 

 

 

「相手」「自分」が関係する模倣の種類

 

相手がいて、はじめて真似ることができます。どのように相手を真似るのか?という分類です。

 

つられ模倣

自分と他者という2項関係の中で、相手の動きに対する反射です。

⇒ 立つ、座る、飛び跳ねる、回る、列になって歩く、おじぎ、バイバイ、まばたき、舌出し、キョロキョロする

 


表層模倣

 

相手のやっていることを表面だけ真似する摸倣です。

※小さな自閉症の子が出やすい模倣
ex.CMのマネ

※大人の音声+動作をそっくり真似しているだけのこともある。
ex.「ぞうさん」と言いながら腕をブラブラさせる動きをする

 


意図模倣

 

相手の意図を理解して真似をする模倣です。

※支援者と同じイメージを共有して遊べるか?
→ダウン症の子が好む遊び

 

 

 

「時間的」な分類の仕方

 

いつ真似をするのか?でも分類することができます。

 

① 即時模倣

 すぐにその場でマネをすることです。


② 遅延摸倣

時間がたってから真似をすることです。記憶にとどめておく必要があります。これは、一般的に1歳半ころからみられるようになるといわれています。

見たことを後で再現する「遅延模倣」は、表象機能の育ちとも関係すると考えられています。

  
 

模倣の発達段階

 

模倣にも発達段階があります。どのような順序で獲得していくのか見ていきましょう。

 

 

生後1,2ヶ月

 

摸倣の始まり

⇒ 動作を大人が逆に真似すると動作は一層活発化するといわれている

 


生後8~12ヶ月

 

⇒ 見えない部位の模倣(舌出しなど)

 


1年半~2歳

 

⇒ 遅延摸倣ができるようになってくる

 

 

模倣を促す支援とは?

 

模倣がなかなかでない子がいます。そのとき、見落としがちなのが「子どもの力以上のものを求めていないか?」というものです。

・姿勢
・見た目
・手の位置

摸倣の難易度を調整することが必要です。

▶感覚遊びから土台を整える支援はこちら
放課後等デイの感覚遊びとは?目的・種類・具体例を解説【療育で使える】

 

 

姿勢

 

座ったまま(座位)

立ったまま(立位)

立ち続けるためには、
・両足を床につけて
・両手を下げて
・身体を真っすぐにして

私たちが無意識的に行っていることでも、自分の身体に意識を向けられない子だと立ち続けることは難しいことなのです。

 

 

見た目

 

左右対称

左右非対称

手や足の動きが左右で同じ(左右対称)なのであれば比較的楽に真似をすることができます。

 


手の位置

 

手が自分の身体についている

手が自分の身体についていない

自分の動きを空間で止めるよりは、自分の身体に置いた方が安定します。

 


その他

 

奥行きがない摸倣

奥行きがある摸倣

交叉しない模倣

交叉する模倣


手足を前後の位置に置いたり、クロスさせる模倣は難しいです。

※「視覚」と「聴覚」どちらの摸倣が先に出るのかは子どもによって異なります。

 

 

どうやって摸倣に誘うのか?

 

子ども自身が「やりたい」「やってみよう」と思わなければ模倣は出ないはずです。

例え、子どもの手を取って動きを教えたとしても、その動きは記憶に残らないのです。ではどうやって模倣に誘うのでしょうか?

 

 

方法

 

今していることから始める

⇒ 今できている動きを使って模倣を促していく

 

物を持たせる

⇒ 何も持っていないときよりも、何かを持っていた方が身体の動きが活性化することがある。


道具を使う

⇒ 低いハードルをまたぐ、台車を押す等、道具を媒介したほうが、やるべきことが分かりやすいこともある


摸倣にも種類と獲得する順番がある

⇒ 子どもはどの段階の模倣ならできるのか?どんな声かけをすればできるのか?

 

 

環境

                
身体模倣の見本

・見本をどのように提示するのかが重要です。
・模倣が苦手な自閉症にとっては、人を見本にするよりも、動かない絵カードをみて模倣する方がやりやすいケースもあります。

※人か絵か、というよりも「見本の背景があるかどうか」「見本は動かないか」の問題といえます。


音声の有無

・歌いながら模倣を促した方が模倣しやすくなります。
→見本に注意を向けやすく次の動作パターンへの変更の予測がしやすくなるためと考えられます。

・歌などの音声を、見本と同時に提示した方が、音声なしと比べると、はるかに産出しやすいです。


個別か集団か

・個別場面(1対1)の方が、子どもは見本への注意を向けやすく集中も持続しやすいです。

 

 

 

模倣から言語獲得へ

 

ことばを獲得する(しゃべり始める)というためには、いくつかの土台となる力を身につけることが必要です。それが下記の「力」です。

模倣

共同注意

象徴遊び(見立て・ふり)

ことば

模倣は直接ことばを生むというより、共同注意や象徴遊び、社会的なやりとりを支える土台の一つとして、言語発達と関係すると考えられています。

 

▶ことばの土台としての音韻認識についてはこちら
【ひらがなが読めない原因は?】音韻認識とは何か?

 

 

共同注意(Joint Attention)

 

相手に意識を向けなければ模倣は出てきません。

・人を見る
・相手に注意を向ける
・相手の行為を参照する

共同注意とは、大人と子どもが「同じ対象に注意を向ける」ことです。

 

ex.

犬を見て
大人「わんわん!」
子どもも見る。

模倣は、相手に注意を向ける力や共同注意とも関係し、こうしたやりとりがことばの育ちの土台になると考えられています。

 

 

象徴機能(symbolic function)

 

遅延模倣(見たことを後で再現する)は、「今ここにないものを表象する」力に関わります。これが象徴機能です。そこから、象徴遊びが始まります。

・電話ごっこ
・おままごと
・見立て遊び

「バナナを電話に見立てる」ことと、「音に意味を載せる」ことには共通性があります。これが、象徴機能は、ことばに近いのです。

模倣は、見立て遊びなどの象徴機能とも関係し、こうした力はことばの発達とも結びついていきます。

 

 

社会的学習(Vygotsky系)

 

模倣は「真似」だけでなく他者から学ぶ入り口ということができます。ことばも社会的相互作用の中で育ちます。

模倣は単独で言語を生むのではなく、共同注意や象徴遊びとともに言語発達を支えると考えられています。

 

 

 

まとめとして

 

摸倣とは、新しい行動を学ぶための重要な方略です。摸倣の様子は外から見えるので、現在の発達を捉えやすく今後の支援の手がかりとなります。

子どもが興味を持てるやり方を探して環境を整えることが、模倣を促していける近道なのです。

   

▶模倣を理解する用語集はこちら

感覚と運動の高次化理論 用語集③(ま行~わ行) 

 

 

 参考資料

◆対人関係と模倣の発達
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=6975&item_no=1&attribute_id=65&file_no=1

◆赤ちゃんの模倣行動の発達 ?形態から意図の模倣へ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/29/1/29_1_3/_pdf

◆発達段階に基づく汎用人工知能の考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2014/0/JSAI2014_2C4OS22a2/_pdf