音楽療法はどんな職業なの?
音楽療法士という職業を知っていますか?
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なら知ってるけど・・・。
そんな人も多いのではないでしょうか?
音楽療法士とは、ざっくりいうと「音楽を使って様々な人たちによい影響を与えてくれる」プロです。
病院や高齢者施設、障害児施設などで働いていることが多いです。
これまで私が現在勤めていた障害児施設にも音楽療法士の先生が来てくれていました。
子どもたちも音楽療法の日を楽しみにしていました。
今回は「音楽療法士」について説明します。
言語聴覚士からみた音楽療法士についておはなしします。
音楽療法士とは
音楽療法士(MT)
おんがくりょうほうし(Music therapist)
音楽療法士とは
音楽には、人の生理的、心理的、社会的、認知的な状態に作用する力があります。
音楽療法では、活動における音楽の持つ力と人とのかかわりを用いて、クライエントを多面的に支援していきます。
言語を用いた治療法が難しいクライエントに対しても有効に活用できる方法です。
日本音楽療法学会HP
https://www.jmta.jp/
どんなことをやるの?
音楽療法は、医療、福祉、教育など、様々な分野で使われています。
数十分の時間内で、退所者と一緒に楽器を演奏したり、歌ったりしています。使われる楽器も様々です。
音楽療法の目的
・子どもの発達支援
・健康維持
・介護予防
・病気や事故後のリハビリ
・学習支援
・リラクゼーション
・認知症の症状緩和
・痛みの緩和
・心のケア
日本音楽療法学会
相手によって目的も様々です。場所も、病院や福祉施設、特別支援学校など。
もちろん、放課後等デイサービスにもいます。
セッションも「個別」と「グループ」に分かれています。
これは他の療法士たちと同様ですね。
セッションの方法として特徴的なのが、下記の分け方です。
・能動的
⇒ 実際に楽器などを弾いてもらう
能動:自分から他者に働きかけること
・受動的
⇒ セラピストの弾いた曲などを聞いてもらう
受動:他者からの働きかけを受けること
資格について
現在、音楽療法士の資格は国家資格ではありません。
いずれはなりそうですが。
この「音楽療法士」の資格ですが、いくつかの種類があります。
認定している団体が異なるのです。
・日本音楽療法士協会
⇒ 音楽療法士、音楽療法士(補)
・全国音楽療法士養成協議会
⇒ 音楽療法士「専修」、「1種」、「2種」
・ぎふ音楽療法協会
⇒ 岐阜県音楽療法士
・奈良市社会福祉協議会
⇒ 奈良市音楽療法士
・兵庫県音楽療法士会
⇒ 兵庫県音楽療法士
複雑すぎる・・・。
さらに増えていきそうですし・・・。
音楽療法士は役割がしっかりとしている職種なので、ぜひ国家資格にして欲しいです。
言語聴覚士が国家資格になる前も
・言語療法士
・言語治療士
などなど。いろいろな名前で呼ばれていました。
資格自体もかなりあやふやでした。
いまだに言語療法士、聴覚療法士と呼ばれることもあります・・・。
ちなみに、
日本音楽療法士学会の認定音楽療法士が、3,000人います(2016年)。
その他の団体を含めても、それほど多くはありません。言語聴覚士よりも少ないです。
資格が一本化される流れに!
日本音楽療法学会によると「認定音楽療法士」の資格が一本化されるよう動いているとのことです。
一般社団法人 日本音楽療法学会(2021年 6月)
https://www.jmta.jp/cms/wp-content/uploads/2021/06/d4c0f0a1f15c515980f1681a60958ec2.pdf
良い兆しです。
資格取得までの流れ
下記は、代表的な、日本音楽療法士協会の資格取得までの流れです。
療育でも活躍できる!音楽療法
音楽の持つ特性は、発達を促すうえでの本当に助けになります。
音楽療法は療育や保育において、どのような点で優れているのでしょうか?
いくつか例をあげて考えてみたいと思います。
「静」と「動」
◆療育は、活動を組み立てる際に、「静」と「動」の考え方があります。
・「静」とは落ち着いた活動
⇒ ミラーボールやパラバルーンなどでリラックスを促す遊びや課題です。
・「動」とは動きのある活動
⇒ トランポリンやサーキットなどで、身体を使った遊びや課題です。
◆子どもによっても、タイプがあります。
・落ち着いてじっくりと遊ぶ「静」のタイプ
・元気よく動き回る「動」のタイプ
活動の順番もタイプによって変えるとよいといわれています。
「静」のタイプは「静」→「動」
「動」のタイプは「動」→「静」
と組み立てると、活動に入っていきやすく終えやすいのです。
この流れも、音楽を使うと瞬時に切り替えることができます。
不安や緊張が強い子や動きが激しい子などへは、この切り替えを丁寧に行うことでうまくいくことが多いです。
始まりと終わり
音楽は「はじまり」と「おしまい」がはっきりしています。
音や音楽が聞こえれば「始まり(on)」
音が聞こえなくなれば「おしまい(off)」
終始点の理解が苦手な子でも、音楽を使うことで楽しくon-offを学ぶことができます。
予測しやすい
音楽は子どもにとって楽しくて分かりやすいものなのです。
音のon-offや曲といった「枠組み」がはっきりしていて分かりやすい。
また、音の繰り返しによって「次はこのメロディがくるな」という「予測」が立ちやすい。
これらを楽しみながら学ぶことができます。
模倣
マネする力を育てるときに音楽を使うことができます。
リズム遊びなど、種類はたくさんあります。
模倣にも発達の段階があります。
①気が向いたときに、ひとりでマネする
↓
②繰り返されるものをマネする
↓
③新しいものもマネることができる
↓
④模倣の内容をイメージできる
ex.「動物のマネ」「ゾウは鼻を左右に振る」
どの段階でも音楽を活用することができるのです。
動き・操作
楽器を使いますので、演奏を通して手や目の使い方も学習できます。
楽器によっても「叩く」「なでる」「ひっかく」「振る」など、動きは様々です。
その際、姿勢を整えることは重要です。
姿勢が崩れていれば手も出ませんし、目も逸れたままですから・・・。
まとめ
音楽療法とは、音楽を使って、相手の心に働きかけをする職種です。
「音楽」は目に見えません。目に見えないものは信用してもらえないことがあります。
言語聴覚士も同様です。
「ことば」「きこえ」「のみこみ」を対象としている言語聴覚士とは、重なる部分が多いと感じています。
対象児者が、楽しみながらセッションに参加する。
学ぶべきところがたくさんあるのではないでしょうか。
参照
◆日本音楽療法学会HP
https://www.jmta.jp/
◆全国音楽療法士養成協議会
http://jecmt.jp/
◆しろくろ猫のおもむくまま
音楽療法士の資格とは?国家資格なの?1種・2種・補って何?取り方は?
https://shirokuroneko.com/
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