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【障害児保育】子どもと「関係性を築く」とは?対人関係と違うの?

いろんな使われ方をする「関係性」ということば

 

子どもの発達や障害児などの分野では、曖昧なことばが多く使われています。

なかには使っている本人たちもあまりよく分かっていないものもあります。

そんな中から今回は「関係性」ということばの説明をします。

子どもの関係性、という使い方をする「関係性」です。

いろんな使い方があることを理解することで視点が増えます。さらに子どもへの支援が深まっていきます。

 

 

 

使う人によって意味が異なる「関係性」

 

「関係性」ということばは様々な意味で使われています。

特に障害児保育ではゴチャゴチャになっているので混乱しやすいのです。

 

支援の現場でよく耳にするのが

・ まだ子どもとの関係性ができていない
・ 子どもとの関係性をつくらなくては

一見、子どもとのつながりを大事にしたように聞こえます。

 

しかし、「?」となる人もいるのではないでしょうか?

それはなぜなのでしょうか?

「子どもと仲良くなること」自体が支援の最終目的になっているように感じるからです。

 

 

関係性とは?

 

関係性とは自分と相手との関わりをさします。

一般的には「信頼」「つながり」「絆」のような目で見えない、測定できないものが含まれることも多いです。

ちなみに「性」はつけなくても日本語として正しいです。

◎ 関係 △ 関係性
(関連の場合は関連性とつけることがある)

 

 

心のつながりを指すという意味ではあまり使わない

 

障害児、発達の分野では、自分と自分以外の人・モノ・状況との関わりという意味で使われることが多いです。

支援の方向性のはなしをするときは、子どもが大人を信頼しているか?は考慮しますが、心のつながりを最重要課題にすることはあまりありません

 

心のつながりを軽視しているわけではありません。

客観的に評価しにくいからです。

 

 

「関係性」2つの意味

 

おさらいします。

 

「関係性」には大きく分けて2つの意味があります。

 

・ 仲良くなること

・ 自分に気づくこと


それぞれをみていきましょう。

 

 

① 仲良くなる

⇒ 「信頼」「つながり」「絆」など

確かに「仲良くなる」ことは必要です。子どもと仲良くならないと大人側の働きかけを受け入れてくれないことが多いからです。

では「仲良くなる」とは何をさしているのでしょうか?

それは「子どものことを知る」ということです。

 

障害を持った子に対して療育や教育を行うとき、やみくもに子どもに教材を出したりやらせたりしてもうまくいきません。

なぜなら、まだ子どものことが理解できていないからです。

・ 何が好きか?
・ どんな性格なのか?
・ どんな特性があるのか?
・ どんなペースで考え、動いているのか?

 

これらが分かってくると、子どもの行動や思考のパターンがみえてきます。

そうすることで

・ どんな教材を?
・ どんなタイミングで?
・ どんな刺激の強さにすればよいのか?

という受け入れてくれる支援のやり方が分かってきます。


これが「仲良くなる」という意味での「関係性」。

相手のことを理解するということです。

 

 

② 自分に気づくこと

⇒ 自分と自分以外の関わり方のこと

 

 

自分を中心として、

・人   ⇒ 自分―友達

・物   ⇒ 自分―物

・事象  ⇒ 自分―事象・状況など

どのように関わっているのか?ということです。

 

 

「対人」以外の意味もある

 

「関係性」=「対人」じゃないの?

そう思われるかもしれません。

人と関わる前のステップが存在するのです。

「自分に気づく」というのは「自分以外のものに気づく」ということ。


これは自分は自分以外のものに何らかの影響を与えることができるということです。

 

たとえば

自分の手足が動くことに気づく
 ↓
手がボールに触れたら、そのボールが転がった
 ↓
自分が動くことで他の物に影響を与えると気づく
 ↓
自分と物の「関係性」に気づく

 

 

両方の意味をうまく使っていくことが大切

 

まずは「仲良く」という意味での「関係性」をつくっていく

そこから、子どもが「自分に気づく」という「関係性」を育てるための手伝いをしていく。

どちらかだけでは支援は上手くいきません。


◆「仲良く」だけを求めてしまうと、

・ かかわった時間が長い人

・ すぐに子どもと仲良くなれる人

でなければ子どもとの「関係性」が築けないということになってしまいます。


◆「自分に気づく」ことだけ求めてしまうと

・ 支援のとっかかりが分からない

・ 子どもの理解が不十分になる可能性がある

 

「関係性」ということばの意味や範囲が使う人によって違うことがあります。

相手はどの意味で使っているのか?を考えながら話しを聞くことが大切なのです。


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ちなみに「友達関係」「親子関係」などのことばには両方の意味が含まれています。

・ 自分と相手との距離感
・ 自分の言動が相手に与える影響

 

 

「関係性」は子どもにどう影響するか?

 

自分以外に気づくと子どもの発達にとってどんなよいことがあるのでしょうか?

 

コミュニケーション発達のための前提となる力

 

コミュニケーションの力が育つためには、

・相手を認識する

・相手が何を言いたいか考える

・相手の動きやことばをマネる

ことが必要です。

これが相手と向き合うということです。

 

 

物と関わる、人と関わる

 

相手のすることに向き合うためには、まずは物との関係を育てていく必要があります。

 

ポイント!

 自分と物との関係を育てるために

 ・ 始まり―終わり(始点と終点)

 ・ 同じ―違う(弁別/べんべつ)

 ・ 見本を見て合わせる(照合/しょうごう)

 が土台となる力

 
たとえば、摸倣(もほう)。

マネっこ遊びですね。

これは意外と難しいのでできない子も少なくありません。

相手の動きをよく見なければいけませんし、相手の動きに自分の身体を合わせる必要があります。

ものには前提となる力が必ずあるのです。


「関係性」の場合は、子どもと物との関係が育つことが人との関係へとつながっていきます。

 

 

まとめとして

 

子どもとの関係性を築くために、ただ仲良くなればよいというわけはありません。

やみくもに練習させればよいわけでもありません。

まずは子どものことを知ろうとすることが欠かせません。

物との関わりの中から「終わり」「同じ」など認知的な育ちを促していきます。

そこから徐々に他者への気づきを促していくのです。

もちろん、大人と一緒にいることで「安心できる!」「楽しい!」ということに気づくことも大切です。

今回は、障害児保育で使う人によって異なる「関係性」の意味について説明しました。

なんとなく使っていることばはたくさんあるはずです。

自分以外の人がどのような意味で使っているのかを考えることが大切です。

それが相手の考えを理解することにもなりますし、自分への気づきにもなります。

どちらかだけに偏った考えでは、せっかくの支援も不十分なものになってしまうので気をつけていきたいです。

 

 

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