言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

数の概念を理解(獲得)する年齢は?足し算・引き算ができるのはいつから?

数の概念と計算

よく「この子は10まで言えるから、1~10までの数の理解をしています」という話しを聞きます。言えること=理解しているなのでしょうか?

また、足し算、引き算などの計算ができるまでにはどんな力が必要なのでしょうか?

今回は、数の理解と、加減算の獲得までの流れについてです。

 

 

足し算と引き算ができるようになる年齢

結論から言うと・・・

計算ができるようになる年齢

 

・足し算 5歳
・引き算 6歳 

 

もちろん、かんたんな計算のみです。

それ以前にできはじめる子もいます。

計算ができるイコール数の概念を理解しているわけではありません。

概念を理解するためには前提となる力を身につける必要があるのです。

それでは、その「前提となる力」を段階でみていきましょう。

 

 

頭のなかだけで考えるものではない

数は頭の中だけで考えるものではありません。頭だけではなくて、手や指を使ったり、目で見たり。運動しながら考えるものです。数も自分の身体が基本です。


声と手の動き(運動)

数を数える時、「いち、に、さん」という声と対象を指さす指の動きが合っていることが必要。

 

目と手の動き(運動)

端から順に間を飛ばさずに数えること


複数の感覚を一緒に使っているということがポイントです。

 


獲得する目安

①第1段階(~3歳)

数を機械的に覚えているだけ。数を使って物を考えられない


②第2段階(3、4歳~)

・数を見聞きして多少を判断する
・数字を読む
・おはじきを取りだす

※確実に操作できるのは9以下


③第3段階(5歳~)

・操作できる数が10以上まで拡がる
・数唱は20まで
・物の数を数える(10まで)
・10まで数字が読める
・答えが5以下になる加算(足し算)

 

④第4段階(6歳~)

・11~19までの数字を読める
・13個の物を数えられる
・複数の中から12個だけ取り出せる
・簡単な引き算(減算)ができる
・10以内の数を逆から言えるようになり始める(逆唱)


繰り上がりの計算は小学校就学後~

 

 

数の概念を理解するために

数のルールに気づくことが大切です。

数には大きく分けると2つの意味があります。

順序

 ⇒ 数は「1,2,3・・・」と順番を表している

 

集合

 ⇒ 数がいくつでも塊となれば「1個の塊」となる


これらを理解するためにに「計数」というルールを身につけることが大切です。

 

 

数を数えるために必要なルール(計数原理)

理解して数を使うためには「計数のルール」を身につけることが必要です。


計数とは、数をかぞえる&計算をするということ

 

この計数を身につけるためには5つの原理が必要であるとゲルマン(アメリカの心理学者)は言っています。


ゲルマン 5原則

① 1対1対応の原理
② 順序無関係の原理
③ 安定順序の原理
④ 基数の原理
⑤ 抽象の原理

 

数を数えるときには、1つの物に対して1回しか数えない。(1対1対応の原理)

⇒ これが理解できないと「今から数えるもの」と「既に数え終えたもの」がゴチャゴチャになってしまいカウントできません。

どれから数えても総数は変わらない。(順序無関係の原理)

数の並びはいつでも同じ。(安定順序の原理)

⇒ 物を数えるとき、「1、2、3、4、5・・・」という並び方は変わることはないということです。


あるものの数を数えたとき、一番最後に行った数が前他の大きさを表す。(基数の原理)

⇒ 「1、2、3、4、5」とすべてを数え終えたら、この集合体の総数は「5個」ということになります。


大きくても小さくてもそれぞれ1とカウントする(抽象の原理)

⇒ 「白い車×2、赤い車×1、黒い車×2、車は合計5台」
「赤ちゃん×1、お姉さん×2、お爺さん×1、人は合計4人」
何を数えても1は1。数え方は一緒ということです。

 

 

加減算の基礎となる計数の発達

数を数えるためは「計数」が必要だということが分かりました。

それでは、足し算(加算)や引き算(減算)ができるためにはどんな力が必要 なのでしょうか?


1から10まで順番に数えることができても
指定された数で止めることができない
自分が知っている数までカウントしてしまう

指定された数で止めることができるようになると
加算(足し算)ができるようになってくる

また「10,9,8・・・」のように、逆から数を言えるようになってくる(逆唱)
これで減算(引き算)も出来るようになってきます。

もう一つ大切なのが「記憶」する力です。これがうまくいかないと計算はできません。


視覚と記憶

「1+2=3」
→ 視覚と記憶で対応できる

「1個にあと2個を合わせたらいくつ?」
→ ことばでイメージを浮かべて対応する

ex.「2+3」のような文章題の可算が出来るには
・5まで読める
・5個の物を数えられる
・10まで言うことができる(数唱)
・4と2の多少が分かる

 

 

数を理解する

数のルールに気づく

① 順序

数は「1,2,3・・・」と順番を表している

② 集合
数がいくつでも塊となれば「1個の塊」となる

 

計数

①数を数えるときには、1つの物に対して1回しか数えない。(1対1対応の原理)
②どれから数えても総数は変わらない。(順序無関係の原理)
③数の並びはいつでも同じ。(安定順序の原理)
④あるものの数を数えたとき、一番最後に行った数が前他の大きさを表す。(基数の原理)
⑤大きくても小さくてもそれぞれ1とカウントする(抽象の原理)

 

その他にも

・数の意味に気づく
「いち、に、さん」という数字と「1個、2本、3番目」などの数詞が対応することに気づく

・物を数える

・数を言うことができる

・分割でいうことができる
「1,2,3・・・10」ではなく「4、5,6・・・10」と途中から数えられる

・分割を逆から言える
「10,9,8・・・1」ではなく「5,4,3・・・1」と途中から逆に言える

・多少の判断ができる
「9を2はどちらが多いか」が分かる

 

 

まとめとして

今回は「数の理解」と発達の流れについて説明しました。

「数えられる」イコール「数の理解OK」ではないのです。

数の概念を理解することにも順序(段階)があるのです。

足し算・引き算ができるのは就学前後といわれています。

大人の目は「計算ができるかどうか?」にばかりに目が向きがちです。

それ以前に「数をちゃんと理解しているか?」をチェックしてあげることが大切なのです。

 

 

参考資料

◆発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性
立松英子/ジアース教育新社

◆幼児の加減算習得にいたる数の理解に関する発達順序性
大塚 玲
https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=129&item_no=1&attribute_id=31&file_no=1

◆幼児の数字使用力の獲得の過程について
丸山 良平
https://juen.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=5515&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

◆乳幼児期の数量の概念変化
湯澤正通・湯澤美紀
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/54/3/54_283/_pdf/-char/ja

◆8~10歳の「重さの保存」に関する研究
─子どもの保存・非保存判断の記述による説明に着目して─
大西 真樹男
http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=367120