言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

障害児支援が上手くいかない!それって「自分のやり方」を押し付けていない?

上手くいかない支援や遊び。その理由とは?

障害を持つ子とかかわっている人はたくさんいます。

支援員、保育士、リハビリの先生、看護師などなど。

どれも仕事内容や得意分野などが異なる職種です。

しかし、共通しやすい悩みはあります。

それが 遊びや活動が上手くいかない ということです。

・子どもが言うことを聞いてくれない
・上手く場を回せない
・楽しそうじゃない

はたから見ると、大人も子どもも辛そうに遊んでいる・・・。

 

そこには支援者が無意識的にやっている悪い癖が隠されています。

ここでは、なぜ「上手くいかない」と感じるのか?

どうすれば上手くいくのか?を子どものタイプ別に説明していきます。

今回は「ことばがまだ出ていない」もしくは「少しだけしか喋れない」子を想定して説明しています。

 

 

上手くいかないのは「押しつけ」ているから

最近、障害を持つ子への支援がうまくいかない。

・子どもが自分の言うことを聞いてくれない。
・遊びや活動、訓練指導などに応じてくれない。
・挙句の果てには子どものせいにしたり・・・。

障害児とかかわる仕事をしていると 誰しもが一度は感じる悩みです。

一度、悩むと出口が見えてこない やっかいな問題です。

しかし、原因はあります。

それが、支援を押し付けているかもしれない ということです。

支援者自身が気づきにくいのが

支援が上手くいかないと、だんだん 訳が分からなくなってきます。

 

それでは 自分のやり方を押しつけているかもしれないとは どんなことなのかをみていきましょう。

 

 

自分のやり方を押しつけてない?

「やり方」とは 支援や訓練、遊びなど、支援者が実際に使っている方法のことです。

 

障害を持つ子へのアプローチには様々な「やり方」があります。

しかし、大人側が自分の「やり方」に固執してしまうケースが本当に多いのです。

 

大人は良かれと思って自分の信じているやり方で子どもとかかわります。

しかし、すべての子に同じやり方が通用するわけがないのです。

 

・大人の提案に従ってくれる子 — くれない子

・課題に集中できる子 — できない子

・人に興味がある子 — ない子

 

一人ひとりの特性を把握しておくことで「じゃあ、別のやり方で関わってみよう」と考えることができます。

そう考えられないと、お互いにぶつかったままになってしまいます。

 

 

指導員の場合は?

障害児施設の指導員や保育職は、毎日のように一緒に遊んでいます。

コミュニケーションをとる機会もたくさんあります。

・遊びのルールに大人がこだわりすぎる大人
・工作ではきれいに作らせないと気がすまない大人
・自分のペースで遊びを進めたい大人

「これをやっていれば大丈夫」

そんな絶対的な支援方法なんて存在しないのです。

 

療法士の場合は?

では、訓練を担当するようなPT、OT、STのような療法士(セラピスト)はどうなのでしょうか?

・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)

それぞれが得意な「やり方」を持っています。「○○療法」「△△アプローチ」のような系統立った関わり方です。セラピストたちも これらを信じて行っているわけです。

しかし、子どもに受け入れてもらえないこともあります。それでは 訓練だってうまくいきません。

受け入れてもらえていないときは、たいてい子どものこと なんて見ずに訓練を進めているときなのです。

 

 

子どものタイプと対応の例

先ほど、子どもにはタイプが存在する と説明しました。

子どもとかかわるときに把握しておきたいポイントは次の通りです。

 

・周囲に意識が向いているか?

・「やらされる」ことを嫌がるか?

・他者とかかわることを面白がるか?

・どのくらいの理解力があるのか?

 

 

意識が常に自分の内に向いているタイプ

自分の指を触って遊んでいるだけで一日が終わってしまう子がいます。

首を左右に振り続ける子がいます。

このタイプの子は 周囲に意識や関心が向きづらく、自分の内側だけで完結してしまっています。

発達が初期段階の子に多くみられます。

周囲がワイワイ言うだけでは 他者の声はこのタイプの子に届きません。

感覚を通して伝えてあげると上手くいきます。

 

ex.

大人  「楽器で遊ぼう」

子ども (大人の方は向かずに何か身体を動かしている)

大人  (楽器を持たせてみる)

子ども (楽器の感触に気づき動きが止まる)

大人  (一緒に楽器を鳴らしてみる)

子ども (楽器の感触や音に気付いて笑う)

 

 

動きはあるが他者に意識が向かないタイプ

この子が好む感覚やリズムを使って大人に意識を向けてもらう。

気づいてもらえたら 遊びに誘ってみる。

遊びにも好きな感覚やリズムを取り入れてみる。

 

ex.

子ども(机をリズムよく叩いている)

大人 (同じリズムで叩いてみる。無言で)

子ども(リズムに気づいて 動きを止める)

大人 (続けてリズムを打つ)

子ども(再び机を叩き始める)

大人 (急に叩くのを止めてみる)

子ども(気づいて 動きを止める)

大人 (子どもが叩き出すまで止まったまま)

子ども(叩くのを再開する)

大人 (叩くのを再開する)

子ども(「あれ?」という表情になる)

大人 (大人が叩いて次は子どもが叩く、というように順番で叩いていけるように主導権を握っていく)

「大人⇒子ども⇒大人・・・」というような交代でやり取り遊びを始めることを目標に関わっていくこともできるのです。

 

「やらされる」ことを嫌がるタイプ

「やらされる」ことを敏感に察して逃げたり泣く。

そんな子がいます。

このタイプの子で、人と関わることが嫌いでない子ならば、やり取りをしながら遊びを進めていく。

 

ex.

大人 「今から やってみるね。3・2・1・・・」

子ども(ちょっと興味を向ける)

大人 「一緒にやってみようか。いくよ・・・」

子ども(笑いながら介助を受ける)

大人 「ほら、面白いね。もう一回やってみようか」

子ども(ちょっと期待した表情になる)

 

 

関わり過ぎると嫌がるタイプ

人と関わることは好き。

でも、グイグイ来られると嫌になってしまうタイプの子がいます。

そういう子の場合には、はじめは「やり取り」しながら遊びや活動をするようにします。

子どもの気持ちや動きがのってきたら、大人は盛り上げすぎないよう淡々と場を進めていきます

子どもが大人のほうを気にするようになってきたら、再び、少しだけ盛り上げて遊びを進めていくのです。

 

ex.

大人  「ちょっとこれを触ってみて」

子ども (大人を見て笑っている)

大人  「やるよ?・・・せーの・・」

子ども (なんとなくやってくれる)

大人  「いいね!じゃあ 次はね・・・」

子ども (徐々に声かけが なくても 手を動かすようになってきた)

大人  (黙ってみよう。最低限の手伝いだけ行う)

子ども (集中して取り組んでいる)

子ども (あれ?という顔で大人のほうを見る)

大人  「じゃあ、次はこれね。せーの!」

子ども (再び集中してくれる)

意外と、このやり方で うまくいくケースは多いです。

 

 

理解する力が弱いタイプ

「ここを押さえて、その間にこっちの手で裏から軽く持って、ボンドが乾かないうちにこの線に沿って貼り付けるんだよ」

そんな説明、障害がない子だって理解できません。

あなたは説明をするとき、相手の理解度を考えながら言っていますか?

理解できていないのに、難しい声かけをしている人は結構います。

そういう支援者は たいてい自覚はありません。

 

ex.

大人  「○○で遊ぶ?」

子ども (無反応)

大人  (○○を子どもの目の前に提示)

子ども (○○を見る)

大人  「そう。○○で遊ぼうね」

 

理解する力が弱い子に「言って聞かせる」支援をしても効果は薄いです。

おとなは、実物(見てもらいたいもの)や手本などを子どもの目の前にもってきたり、実際に触ってもらったりします。

すると「これをするのか!」と気づいてくれることが増えるはずです。

身体を通して理解してもらうのです。

 

 

まとめとして

今回は、障害児支援で「上手くいかない」と感じるのは、支援者側の問題もあるはず!という話しをしました。

子どもの「タイプ」は上記以外にも たくさんあります。

一緒に働く仲間たちと情報を共有しながら対応策を考えていくとよいです。

「原因」はいろいろあるかもしれませんが、自分自身のやり方を客観的に見直してみてください。

大人が「自分のやり方」にこだわってしまい、子どもに押しつけてしまっていないか?

障害ばかり見ていないで、子どものことをしっかりとみた支援を行っていきたいものです。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

今日のポイント!

意識が常に自分の内に向いているタイプ
⇒ 感覚刺激を使って気づいてもらおう!

動きはあるが他者に意識が向かないタイプ
⇒ 子どものリズムを使って気づいてもらおう!

「やらされる」ことを嫌がるタイプ
⇒ やり取りしながら「いつの間にかやっていた」感じに!

関わり過ぎると嫌がるタイプ
⇒ あえて淡々と関わる。距離感をつかもう!

理解する力が弱いタイプ
⇒ 実物や手本、身体の使い方を通して理解を深めよう! 

 

まずは子どもに「気づいてもらう」ことが大切です。