言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

大人からの声かけに反応しない子が反応するまでの発達とは?【障害児支援】

質問に「はい」「Yes」と応答するまでの発達

障害の重い子のなかには、大人から質問されても反応がない子がいます。

これでは「どっちが好き?」「これでいいの?」という質問にも答えることはできません。

大人からの声かけに反応しないからといっても 質問や声かけを無視しているわけではありません

質問されても「どうすればよいのか?」分からない状態であることが多いのです。

そういう子に、ただただ 話しかけるのではなくて、声をかけるのをやめるのではなくて。

この子とやり取りするためには、どんな支援が考えられるか?を探っていきましょう。

大人の「慣れ」は子どもの育ちをストップさせてしまうこともあります。

 

ここでは、大人からの質問に対して応えることができるまでの発達の流れについて説明します。

さらに、支援ではどのようなところに気を付けていけば 反応してくれるようになるのか?考えていきます。

 

 

 

質問に応えるとは?

障害が重い子の場合、まだ ことばを しゃべっていない子が多いです。

しかし、質問に応える場面では必ずしも「はい」としゃべる必要はありません。

・手を挙げる

・視線を動かす

・舌を出す

・スイッチを押す

ことば以外の答え方ってたくさんあるのです。

「はい」と言わせることだけに こだわらなくてよいのです。

それは大人側のこだわりです。

 

 

発達の順序

大人から質問されたときに「はいって言ってごらん!ほら!ほら!」と急かしたところで答えられるようになるわけがありません。

発達には順序があるからです。

前提となる力を蓄えてから次のステージに進むイメージです。

その順番は次の通りです。

・大人の働きかけに気づく

・大人とやることを「楽しい」と感じられる

・ものごとに「期待」できる

・大人が見ている物に「注目」できる

・「はい」と表出できる何らかの方法を獲得する

 


大人の働きかけに気づく

 

大人が楽しい遊びをしていても、それに気づかないと一緒に楽しむことはできません。

実際、自分の目の前で楽しいことが起きているのに気づいていない子はたくさんいます。

・自分の名前を呼ばれるとビックリしてしまう

・驚きはしないが気づきもしない

 

もしも、驚いてしまうのなら、驚きにくいやり方で声をかけたり働きかけの方法を探っていきます。

気づかないなら 子どもの身体に触れながら呼んであげることも有効です。

 

どういうやり方で関われば子どもの注意が一緒にいる大人にむきやすいか?

過敏があるから あの子には声をかけないで!

なんて支援は・・・意味が分かりません。

聴覚に過敏がある子でも、聞いてくれるやり方はあるはず。

 

ちなみに、同じ呼び方をただただ繰り返すのではなく、ちょっと変化を加えてあげると気づきやすい場合もあります。

ex.
「○○君」
 ↓
「□□(苗字)君」
 ↓
「○○さん」
 ↓
「○○ちゃん」などなど。

 

大人からの働きかけに注意が向かないようならば、介助者が子どもに気づくよう促していきます。

・注意を向けるべき方向を教える

・「楽しいね」等、気持ちの共有を促す

 

 

ものごとに「期待」できるか?

 

大人が楽しそうに遊びに誘うとき、子どもがニッコリと笑った。

これは、大人からの働きかけに対して「うれしい・楽しい」という「快」の反応がみられるということ。

ものごとに「うれしい・楽しい」と感じることができる子は 次に来るものに期待できるのです。

この「期待」というのが大切です。

なぜなら、得るものが大きいからです。

・「次に楽しいことが待って」という「予測」につながる

・サインやことばには意味があると気づくキッカケとなる

ちなみに、定型発達(障害がない子)では 6ヶ月くらいから獲得するといわれています。

さらに9か月ころになると「イナイ イナイ バア」を楽しむようになります。

これは、子どもが「このセリフの後には相手の顔が出てくるはず。楽しみだな」と分かっているから成立する遊びです。

 

子どもが「期待」しながら笑っている。

このような姿がみられたら、「そうだね。○○だね」等、大人はしっかりと子どもの反応に返していきます。

そうすることで、子どもは 自分が何かしらアクションをすることで、大人を動かすことができる と気づくようになります。

・子どもが玩具を見つめていると 大人がとってくれる

・子どもが大人の顔を見つめていると ニッコリと笑ってくれる

 

 

大人の視線の先にあるものに気づく

 

自分が何かをすれば大人自分のために動いてくれる。

こんなふうに子どもは気づくようになります。

・黙っているだけでは何もしてもらえない

・もっと「楽しいこと」をしてもらうためには 自分からアクションを出さないといけない

子どもは自分に注目してもらえるような動きをするようになってきます。

そして、大人の動きにも着目してきます。

・大人が持っている物

・大人の視線の先

・大人の指差しの先

そうすることで 大人と同じものに注目する機会が増えてきます

これを「共同注意(きょうどうちゅうい)」といいます。

定型発達では だいたい1歳前後に獲得します。

 

支援でつかえるポイント!

◆スイッチを押すと光る玩具を活用してみよう

子どもと一緒にスイッチを押す

光る

光を一緒に見る 

 

 

Yesのサインを獲得しよう

 

子どもが「期待」するときに見せるとき、様々な動きをします。

・笑う

・大人の顔を見る

・手を伸ばす

・指をさす

はじめのうちは、楽しいことが待っていると気づくと「笑う」子が多いです。

しかし、笑うだけでは 質問に対する答え(サイン)として活用することは難しい

なぜなら、はたから見れば、子どもが笑っているだけだからです。

そのため、別のやり方を身に着ける必要があります。

・「はい」と言う
・手を挙げる
・舌を出す
・眉を動かす
・口角を上げる
・スイッチを押す

一人ひとり身体の動きの制限が異なのため、どれがよいとは言えません。

その子に合った動き・サインを見つけるとよいです。

 

 

まとめとして

今回は、声をかけても反応がない子への支援をまとめてみました。

一言で「返事をしない」と言っても原因は様々です。

もしかしたら、今回の記事のような子がいるかもしれません。

「大人からの声かけの意味に気づいていない」

「質問に対してどう答えたらよいのか分からない」

そんな子がいたら、ぜひ試してみてください。

 

■参考資料


難しいけれど役に立つ本です