言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

前言語期の発達段階を知ろう!「原平叙(原叙述)」「原命令」の違いは?

ことばを獲得する前のコミュニケーション発達

 

赤ちゃんは生まれてから様々な経験を積みながらしゃべれるようになってきます。

だいたい1歳前後から話し始める子が多いと言われています。

しかし、個人差が大きくて、それよりも前から喋る子もいれば、3歳頃にようやくしゃべり始める子もいます。

 

喋り始めるまでの時期は「前言語期(ぜん・げんごき)」と呼ばれています。

この時期にはコミュニケーションの基礎となることをたくさん学んでいきます。

 

前言語期のことを本などで勉強しようとしても、やたらと専門用語がたくさん出てきます。

調べるだけで疲れてしまいます・・・。

 

今回は

・「原平叙(原叙述)」や「原命令」などの分かりにくい専門用語の違い

・前言語期の発達の流れ(発達段階)

を説明します。

 

 

前言語期とは?

コミュニケーションの発達は大きく2つに分けることができます。

・ことばが出る前(前言語期)
・ことばが出てから(言語期)

ことばの獲得の前後で分けます。

 

それでは前言語期とはどんなものなのでしょうか?

前言語期とはことばを使わずに他者とコミュニケーションを行っている時期です。

この時期はことばや言語コミュニケーションの土台となる力を蓄えていくのです。

 

 

1)発達の流れ

ことばが出る前の子は、どのように他者とかかわっているのでしょうか?

年齢別にみていくと


◆新生児期・乳児期
⇒ 生理的・情緒的状態を相手に伝える

 

① ~8ヶ月 

(聞き手効果段階)

この時期の子は自分から相手に何かを伝えることがありません。そのため、親が子どもの反応を見て解釈する段階です。大人との二項関係が中心です。

※二項関係
子ども自身と物、子ども自身と他者という関係性

 

② 8~10ヶ月 

(意図的伝達段階)

玩具を取って欲しいときに「あー」と言いながら手の伸ばす子がいます。このような慣用的な動作や発声で自分の意図を表現するようになってきます。大人とも三項関係が中心です。

※三項関係
物を介して子どもと大人が交流すること

 

③ 1歳~  

(命題的伝達段階)

意味のあることばを使うようになる時期。伝達手段に「ことば」が加わります。

「何を」「どうやって」と具体的に言うことができるので、意図が相手に伝わりやすくなります。ここでも三項関係が中心です。

 

聞き手効果段階:~10ヶ月
意図的伝達段階:10~15ヶ月
命題伝達段階 :15ヶ月~

という年齢の分け方もあります。


※★2項関係・3項関係★詳しくはこちら
www.hana-mode.com

 

 

2)やりとりの発達

対人的相互関係

これまで「子ども-大人」という2項関係のみで他者とかかわってきました。それが、徐々に「子ども-物-大人」という3項関係のやりとりができるようになってきます。

 

① 原会話

乳児と母親の間にみられる様々な気持ちのやり取り(情動的コミュニケーション)のことです。これは会話パターンの原型で、授乳児など出生直後からみられます。

※2項関係のやりとり

 

② 原命令

指さし等で要求することです。自分の目的のために大人を使います。

ex.目的の玩具を取る(目的)ために、母親を使う(手段)

※3項関係のやりとり

 

③ 原叙述

物を介しながら母親と遊ぶことです。他者の気を引きていときに物を使う様になります。

ex.母親の気が引きたくて(目的)、物を使う(手段)

※3項関係のやりとり

 


↓↓↓ここからはことばを使います↓↓↓


④ 原言語(プロトワード)

母との関係のなかだけで意味が通じることばです。

子どもが自分で編み出したことば。喃語と幼児語の間に位置します。

ex.「ジアップ」→「カレンダー」のこと
  ことばと意味につながりはない

 

⑤ ターンテイキング

会話では「話す人」と「聞く人」に分けられます。

この役割は都度、交代します。

役割が入れ替わるシステムのことを「ターンテイキング」と呼びます。

 

 

⑥ 社会的参照  

1歳前

自分で決定できないものがあるときに、養育者の視点や観点、顔色、反応をうかがってから自分の行動を決めようとするもの。

 

 

「原平叙」と「原命令」の違い

見た目も似ていて分かりづらい「原平叙」と「原命令」。

違いは何なのでしょうか?

 

「原平叙」⇒相手の注意を自分に向けること

「原命令」⇒相手に何かをやってもらうこと

 

 

喋るよりも前に理解する力が身につく!

ことばを獲得する前でも、身振りや行動を使って自分の要求をかなえていきます。

ことばを獲得してからは、ことば(音声)には意味や意図があり様々な使い方ができるということに気づいていきます。

●ことばを使って他者に伝える
→自分の要求が叶う

●ことばでやり取りをする
→情緒的な交流

 ことばは、道具としてだけではなく、楽しみのためにも活用するようになっていきます。

言語獲得がゆっくりでまだ喋れていない子に「○○だよ。言ってごらん」と半ば強制的に言わせようとするのは逆効果です。

「伝えたい!」と思えるようになって、理解できることが増えて、それからことばが出るのです。

 

表出よりも理解が先です。

 

ことばが出る前の段階である前言語期とは、理解できることを増やす準備期間でもあるのです。

 

 

まとめとして

今回は前言語期について説明しました。

 

「原平叙」⇒相手の注意を自分に向けること

「原命令」⇒相手に何かをやってもらうこと

 

意外と分かりにくい前言語期。

ことばを使わないコミュニケーションが「前言語期」

ことばを使うようになってからは「言語期」

 

これだけ覚えればOKです。

よかったら参考にしてみてください。

 

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参考資料

◆やりとりを支える社会的基礎
母子健康協会 機関紙 ふたば
https://jp.glico.com/boshi/futaba/no68/con05_05.htm

◆共同注意:その発達と障害をめぐる諸問題
https://ci.nii.ac.jp/naid/110004872467

◆乳幼児の発達における共同注意関連行動についてhttp://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_f/F-114/F-114_04.pdf


◆重複障害児のコミュニケーションに対する模倣的関わりの効果
https://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/09seika/reports/files/postgraduate/h16/tanaka.pdf

◆コミュニケーションに関する発達段階表(前言語期)
http://www.kochinet.ed.jp/tosakibo-s/mt/10.%20%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%81%94%E6%AE%B5%E9%9A%8E%E8%A1%A8.pdf