言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

ことばの遅れが気になる!普段の生活でできることのポイント

ことばの発達を促すためにはできることは?

 

障害があってもなくても、ことばが遅れることがあります。

ことばの遅れ=言語訓練

というイメージが強くあると思います。

たしかに早期から訓練を始めることは大切です。

しかし、言語訓練よりも前に身につけておくべき力があるのです。

今回は、ことばの遅れに対して言語訓練以外でできることはあるのか?

というはなしです。

 

 

普段の生活の中でできること

訓練や練習としてではなく、家庭や施設でできることは?

ポイントは、ちょっとだけ意識的に子どもと関わってみるということです。

子どもが考える前に大人がやってしまっていませんか?

 

 

何でもかんでも大人が仕切らないようにしてみる

子どもに何かを伝えたいとき、教えたいとき、あなたならどういうふうに声をかけていますか?

「これを見て!○○よ。言ってごらんなさい」大人のペースで声かけをする

子どもが注意を向けているものを大人も見ながら「これは○○だよ」と声をかける

 

実は後者の方がよい声かけです。

本人が興味を持っているものを活用すると子どもが効率的に語を学習できるのです。これは研究で明らかになっています(Tomasello&Farrar.1986)

 

大人が何でもやってしまうのではなく、子どもの興味に合わせて声かけの仕方やタイミングを変えていくとよいのです。

子どもの主導権を完全に奪っていませんか?

 

 

子どもが「どのくらい理解しているのか?」を考える

「いま子どもが理解できていること」を考えることは大切なポイントです。

理解できないことを言われても子どもは困るだけです。

 

×長すぎる声かけ×
「ハンカチを持って、カバンに入れたら、おばあちゃんに挨拶をして、出発しなさい。」
毎日やっていることならともかく、声かけや指示が長いと子どもは覚えておくことができません
どのくらいなら覚えていられるか?を大人が把握しておくこともポイントのひとつです。
 

×難しすぎる声かけ×
「ちゃんと片づけて」⇒「ちゃんと」ってなんだ?
「そこに行って」⇒「そこ」って?
「いいかげんにして」⇒「いいかげん」?

 

 

生活の流れを一定にしてみる

 

食事や遊び、寝る時間など、普段の生活の流れは決まっていますか?

できる限り、子どもの生活は一定にした方がよいです。

なぜなら、そうすることで子ども自身の「見通し」がたちやすくなるからです。

決まった時間にお風呂に入って、歯磨きをして、お布団に入る。

毎日、同じ流れだと「次は何をやればよいのか」という見通しがたってくるのです。

 

 

 

個人差が大きい時期

 

通常子どもは1歳くらいからしゃべり始めるといわれています。

この「通常」ということばがくせもの。

通常=普通

という捉え方になってしまうからです。

 

全員がきっちりと1歳になった時点でしゃべり始めるわけではありません。

数が多いというだけです。

1歳前からしゃべり出す子もいれば、3歳になるまでしゃべらない子もいます。

1歳から3歳というのは個人差が大きい時期なのです。

 

 

他の子と比べてもメリットはない

・友達の○○ちゃんは1歳前なのにたくさんおしゃべりをしている・・・
・うちの子は2歳だけど数個しか単語を言わない・・・

どうしても他の子と比べて心配になってしまいますよね。

だとしたら、出来るだけ早くから「ことばの訓練」を受けた方がよいのでしょうか?

 

よく「○○っていう訓練をしたら喋れたわよ」という情報を教えてくれる人がいます。

・○○という施設がいいよ
・声かけが足りないのよ

子どもによって遅れの原因や現状が異なります。

そのため、他の人から教えてもらったことが必ずしもお子さんに合うとは限らないのです。

教えてくれた人も親切心から言ってくれているはずなので、それを無下にするは忍びないのですが・・・。

 

 

口が「動く」だけではしゃべれない!

注意する点があります。

口周りの筋肉を鍛えるだけで喋れるようになるわけではありません。

意外と知らない人が多いのです。

普段の生活や遊びのなかでことばの土台をつくる必要があります。

 

 

ことばには土台となる力がある

 

ことばの土台とは、ことばを話すために必要な力のことです。

口だけが動くようになったとしても「話す」ことはできません。

直接関係ないような、生活や発達を見ていく必要があるのです。

 

ことばの育ちを促すために

 

・子どもの場合には“ことば”のみに焦点をあてた訓練は効果的ではなく“からだ”や“こころ”を含めた発達全体を促すことが必要となる。

分かるのが先、言えるのは後

・言えることばをふやそうとの教え込みより、伝えたい気持ちをしっかり育てるのが先決である。周りの大人がよい聞き手,じょうずな遊び相手になること,など
である。

 

『子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために(中川信子)』P.8より
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/34/3/34_234/_pdf/-char/ja

 

 

まずは生活のなかで分かることを増やすこと

 

ちょっとした体験や経験ができる場を用意してあげる。

経験を繰り返すことで気づき、理解できることがたくさんあります。

・一緒に虫や花を探してみる
・一緒に洗濯物をたたんでみる
・一緒に片付けをしてみる

子どもと一緒にやるということがポイントです。

大人と同じ目線で同じものを見るのです。

 

 

からだを使った遊びを充分に楽しむ

子どもは同じ遊びを何回も繰り返します。ブランコや滑り台、砂遊びなど。それらを行うと感覚が身体に入っていきます。

 

・ブランコ

 ⇒ 重力やスピード感などの「前庭感覚/ぜんていかんかく」

 

・抱っこ遊び

 ⇒ 手触りや肌ざわり、ギュッとした感じなどの「触覚」や「圧覚」など

 

・砂や粘土遊び

 ⇒ 手触り、掴んだ感じなどの「触覚」や「固有覚/こゆうかく」

 

・高い高い

 ⇒ 上下の揺れ、動きなどの感覚

 

子どもによっては、上記のような感覚刺激を感じづらい場合があります。

好きな感覚、嫌いな感覚もあります。

感覚刺激がしっかりと感じられれば、子どもの心も安定してきます。


からだを使って一緒に遊ぶこと自体が親子のコミュニケーション改善にも役立ちます。

ぜひ感覚を使った遊びにたくさんつきあってあげてください。

  

 

注意するべきこと


下記の様子がみられたら病院で相談してみるとよいです。

・聞こえが悪い
 ⇒ 音が聞こえているか?中耳炎で聞こえづらいこともある

 

・口の中のかたち
 ⇒ 口の中には様々な器官があります。上顎(口蓋/こうがい)が裂けていたり(口蓋裂)や舌の裏の筋(舌小帯)が短かったりするために上手くしゃべれないケースもあります。

 

・言語環境は適切か
 ⇒ テレビやスマホなどを見せっぱなし。身体を十分に使って遊んでいない。なんでも先回りしていってしまう、やってしまう。ことばかけが極端に不足している。

※ただし、原因を何でもかんでも「親の愛情不足」にしてしまうのは間違い!個の判断は慎重に!

 

・発達上の特性
⇒ 極度なこだわりや注意力の障害など

※ただし、「ミニカーを一列に並べる」「決まったことにこだわる」というのは発達に障害がない子にもおこりうる過程です。判断は慎重に!

 

 

「聞こえ」や「食事」もことばに関与

「聞くこと」「食べること」もことばの発達に関わってきます。

聞こえて初めてことばを認識できます。

食べるのは喋るときに使う器官と同じものを使います。

様々なことが重なってことばも育っていくのです。

 

聞こえ

聞こえ(聴覚機能)を育てることも大切です。

ただ音や声が耳に入るだけでは聞こえると言えません。

細かく見ていくと順番があります。

 

音に気づく

音の聞こえてくる方向が分かる

音を聞き分けられる

音を理解する

 

ex.
・音や声に気づくこと
→声や音に気がついて耳を傾けるよう促す


・音や声がどこから聞こえてくるか気づくこと
→音や声がする方向が分かって、そちらを見たり、意識を向けたり


・音を聞き分けること
→何の音が聞こえるのか?人の声なのか、楽器の音なのか、車のエンジン音なのか?
音を聞き分けることができるようにすること

 

・音を理解する
→この音が何を意味するのか?目の前の人が言ったこと(声)はどんな意味なのか?

ex.
「ブービー音」
→正しくありませんよという警告音

ex.
「こっちにおいで」と言う声
→相手の方に行けばいいんだな、という理解ができるか

 

食事

「食べる」「しゃべる」は同じ口腔の器官を使います。

口腔機能の発達がしゃべるための基礎にもなるのです。

上手に食べることが上手にしゃべるための近道ということもできます。


・食べる
⇒唇で食物を取り込む→舌で食物を移動させ→口のなかで転がして塊にする→それを喉の奥に送って→飲み込む。飲み込むときにも首や舌の根元など、直接口と関係なさそうな部分も使う必要がある。

 

・喋る
⇒肺から空気を出す→その際、声帯のそばにある声門が開いたり閉じたりする。この開き具合で音が変わる→舌の位置や口唇の開きでも音は変化→声が出る。

 

「食べる」力や一連の動きを高めていくことが「しゃべる」ことの上達につながっていきます。
唇や舌、顎(あご)などが上手く動くようになることが欠かせません。

それぞれを動かす練習と言うよりは、すべての器官が一緒に協力(協調)して動けるようにする必要があります。

 

 

ことばが出るまでに必要となる力とは?

 

子どもはことばが出るまでに様々な力を蓄えていきます。

その準備段階の時期を「前言語期(ぜんげんごき)」といいます。

 

ことばをどのように使っていくのか?

子どもはことばが出る前に、コミュニケーションの基礎となる力を身につけていくのです。

  

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一度相談してみると安心できる

 

心配なときには相談してみるとよいです。

誰かとつながることで、親御さんの気持ちが少し和らぐからです。

 

相談をできる場所はたくさんあります。

・発達相談センター
・発達支援センター
・こども家庭センター

など。名前は地域によって異なります。

役所や市報などに情報があります。

 

 

まとめとして

今回はことばの遅れについて説明しました。

言語訓練以外にも、日常の中で出来ることはたくさんあります。

生活や遊びを丁寧にやってみてください。

他の子と比べないであげてください。

お子さんの良いところをたくさん見つけながら、少しでも安心して過ごせるようにしてみてください。

きっと子どもが変わってくるはずです。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

ポイント!

まずは土台作り

そして、しゃべることが心地よいと感じられるようにしてあげられるとよいです。

・子どもが何か言ったら大人がそれに笑顔で応じる
・子どもの興味や関心にそった声かけをする
・子どもの理解度にあわせる

 

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