ことばが遅い子に私たちができること
子どものことばが遅い?と感じている保護者の方や支援者たちへ。
ことばが出るのが遅かったり、ほとんどしゃべらなかったりする子がいます。子ども自身は気にする様子は見られない。しかし、親や支援者は気になってしまいます。愛情が足りていない?そう思ってしまうかもしれません。昔は愛情不足を発達の遅れの原因と決めつけていた時期もありました。最近は一番に疑うことではありません。
では近くにいる大人が何をしてあげればよいのでしょうか?
まずは楽しく遊ぶ経験が大切
大人ができること。
それは子どもと一緒に楽しく遊ぶということです。
ことばとどんな関係があるの?
そう思われるかもしれません。
大人と一緒に遊ぶことで、子どもは相手や物へ意識を向けるようになってきます。
関わり方のポイント
ちゃんと遊んでいないから、ことばが遅れているわけではありません。
まずは丁寧に関わってあげることから始めるとよいです。
同じものを見て楽しむ
散歩しているときに花や虫を見つけたら、
「お花、きれいだね」
「テントウムシ、いるね」
と声をかけて、子どもと一緒に見てみるのもよいです。
ポイント
一緒の物事に注目することです。
身体を使って楽しむ
子どもが「ああ楽しいな」と瞬間的にでも思ってもらえる経験を重ねられるようにします。
素敵な玩具やゲームを用意する必要はありません。
自分の身体だけでできる遊びもたくさんあります。
・抱っこ
・追いかけっこ
・くすぐり遊び
子どもは理解をしてから話しはじめる
ここで注意しておきたいことが「ことばは理解が先行する」ということです。
ものや人のことが分かる(理解する)
↓
喋るようになる
ex.いつも自分のお世話をしてくれる女の人
⇒「ママ」「かあちゃん」
「ま」は比較的早くから出る音です。
そのため、まだしゃべることができなくても「ま、ま、ま」と言う子がいます。
この段階では、まだ「ママ」の意味で使っていないことが多いです。
意味も分からず喋る子もいるかもしれません。
しかし、それは相手に自分の気持ちを伝えるわけでもない、単なる音遊びです。
子どもがいま興味を持っているものを知る
「○○って言ってみなさい」というような練習をさせるのではありません。
いま子どもが興味を向けているものを大人が一緒に「楽しむ」のです。
⇒ 車の話題で話しをしてみる
⇒ キャッチボールをしたり、缶に入れてもらったりしてみる
その興味も年齢によって変わってきます。
というか、年齢によって興味を持てる内容が違うのです。
下記は年齢ごとの特徴と声かけのポイントです。
年齢ごとの特徴と必要な関わり
子どもはどんどん周囲から物事を学んでいきます。
それには順番があります。
下記は月齢や年齢ごとの特徴と大人ができる関わりをまとめたものです。
0歳(~6ヶ月)
大人は少し高めの声で、ゆっくりはっきり話してあげます。子どもと向き合う時間をじっくりとつくります。子どもの視線や動きをよくみることが大切です。
妊娠7~8か月
聴覚の仕組みが働きはじめる
いつも母親の声は聞こえています。
新生児期(生まれてから28週)
・母親の声は生まれたその日から聞き分けられる
・人の顔に強く反応する(顔に似た図形にも反応)
・泣き声が甲高い
口腔器官が液体の流入に適しているため
ex.母乳
1~2か月
自分で動く物に目を向けたり、動きを向かえるようになります
人の声や周りの音に注意を向ける
抱いてあやすことが相互関係をつくる基礎
3~4ヶ月
定頸(3ヶ月ころ)と平行して、興味のある物を追視する
(目を動かす筋のコントロール向上)
笑い声の変化(口腔器官の変化)
4~5ヶ月
自分の手に気づき、なめたり、眺めたりするようになります。
なめることで舌などの反射的な動きが弱まり、離乳食を受け入れる準備ができます
離乳食が始まると舌や口唇、顎の使い方が変化してきます。
→出せる声の種類も増えてきます。
目の合う時間、注意を集中させていられる時間が増えます。
0歳(6ヶ月~)
子どもの気持ちや動きを言語化してあげます。「楽しいね」「ボール ポーンしたね」など。気持ちや動きをことばで表せることに気づくきっかけとなります。子どもと同じ目線で話すことが大切です。
6~8ヶ月
座位保持(9ヶ月)
視野が高くなり興味を持つとハイハイ(8ヶ月)で向かうようになります。
探索行動が十分にできるように部屋を片づけて、動き回らせ、知的好奇心を満足させてあげることが大切
発声の準備
ゴックン、モグモグ(舌や口唇を思い通りに動かす練習)
注視、イナイイナイバアなどを好む
9~10ヶ月
今まで積み上げてきた力が一挙に開花し変化が起きる
ことばの理解
記憶する力が整う
ことばの意味が分かってくる
ex.「ご飯よ」「パパだ」に反応し、行動する
はじめてのこと、不思議なこと
「あれ?」という顔つきで大人の方を見る
その都度「飛行機の音だね」など丁寧に教えてあげる
摸倣
人のマネができる=ことばのマネができる時期に近づいているといえる!
※分かる(理解)が先。言える(表出)は後。
11ヶ月~1歳
速い子はしゃべり始める(始語・初語)
構音器官のコントロールは高度な脳の働き。まだうまく言えなくて当然。
動作で自分の思いを伝えようとしてくる
※無理に言わせるのではなく、大人が子どものかわりに言ってあげることが大切。
「先に言ってしまう」ではない。
「大人って頼りになるな」「ぼくのできないことを助けてくれるんだ」という思いを持たせてあげる。
それで伝えたい気持ちを育てていく。
1歳~
大人が「これやろう」「あれやろう」と素敵な遊びを提案することも大切です。しかし、子どもが興味を向けているものは何か?に着目して、それを遊びに取り入れることの方がもっと大切です。大人にとって退屈なことでも、子どもにとっては楽しくてしょうがないことかもしれません。
この頃から言えることばも増えてきます。その音に合わせたオノマトペなどを使うと、子どもは興味を持ってくれやすいです。子どもは繰り返しことばやリズムのよいことばが大好きです。
1歳~1歳半
言えることばが徐々に増えてくる
口唇音(マ行、パ行、バ行)から
独歩(1歳~1歳半ころ)
この頃にはひとりで上手に歩くようになってきます。自分で移動もでき、視界も拡がります。興味の対象もどんどん拡がっていきます。体験したことを確実に覚えていきます。
※周りの大人はいろんな冒険につきあい、丁寧なことばがけをしていく
1歳半~2歳
意識がはっきりしてきて、今までのように親の言う通りにはならないことが出てくる。
2歳~
「なぜ?」「どうして?」が増えてくる時期です。もう、しつこいくらいです。大人はなるべくそれに答えてあげます。正確な回答でなくてもOKです。せっかく子どもが質問してくれたことです。それを否定しないようにします。
まだことばも不明瞭なこともあります。そんなときは修正するのでなく、さり気なくただして言ってみるくらいでよいのです。
ex.
子ども「どどろ いたね」
おとな「そうだね。トトロ、いたね」
2~3歳
2語文
分かることの範囲が拡がるにつれて、言えることも増えている。
語連鎖も。
単語の関係を理解し始める。文構造が身につき始める。
「これ何?」
なぜ、どうしてが増える時期。なるべく付き合ってあげる。
→親と自分が別のもの(違う存在)だと気づく。それによって、何でも自分でやりたい。大人から言われることも、提案されることもイヤ。
3歳~
「イヤイヤ」が増えてくる時期です。しかりつけるのではなく、子どもの気持ちを受け止めたうえで言い聞かせてあげるようにします。
ex.
子ども「イヤ!まだ遊ぶ」
おとな「そうだね。まだ遊びたいよね。でも、もうすぐお昼ご飯だから、おうちに帰ろう。食べたらまた来ようね」
3歳を過ぎると
言語体系がほぼ身につく。
・文で自分の思いを伝える
助詞、副詞の確立
・質問応答
名前は?に答えられる
誰と来たの?に説明できる
ことばが遅れているときに疑うこと
まずは、聞こえの問題を疑います。それから対人関係や知的の問題などをチェックしていきます。
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普段の生活が子どもを支える
物事には順番があります。1つずつ積み重ねて、はじめてしゃべるようになります。
周囲にいる大人たちは、子どもがことばを獲得するための土台をつくってあげることができます。まずは、
・生活サイクルをつくる
→落ち着いて過ごすことで気分も落ちつく
・しっかりとした食生活
→口腔器官を育てる
当たり前のようなことがすべての基礎となります。
教え込むのではなく
・一緒に楽しい経験を重ねる
・理解を深めてあげる
これがポイントとなるのです。
まとめとして
今回はことばが遅い子へできる関わり方を年齢別に説明しました。
子どもに高すぎる評価や急かすような接し方をしてしまうと、子ども自身がつらくなってしまいます。
目の前にいる子が「どのくらいの理解ができているのか?」を考えることが大切です。
いぞぎ過ぎず楽しく関わってあげてください。
◆参考文献
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