言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

「指さし」はいつからどのように発達していくのか?その種類は?

指さしがなぜ大切と言われるのか

子どもは小さいころから「指さし」をしています。「電車が来た!」というような「あれ見て」という意味のものもあれば、「あれ取って!」という要求を表すものもあります。

言語後獲得する前から出現する指さし。いったいどんな種類があるものなのでしょうか?また、いつからどのように獲得するものなのでしょうか?

今回は「指さし」について説明します。

 

 

 

 

指さしとは

ことばを使わずに指をさすことだけで自分の気持ちや意図を表現することです。相手との場面の共有でも使われます。

指さしは、ことばやコミュニケーションの前段階にみられます。ことばが出る前の時期(前言語期)の重要な指標となるものです。そのため、1歳半検診で「指さしをするか」という項目もあるのです。

 

★象徴とは

「意味するもの」のことです。身振りやことばの「意味」の部分をさします。

たとえば、
・「道端で見つけた花を指さす」という行為は、「花があったよ」という意図(意味)を相手に伝えること

・「今日のおやつを複数のお菓子の中から選ぶとき。その中の1つを指さした」という行為は、「これに決めた」という意図(意味)を相手に伝えること

 

 

指さしの役割

子どもはことばを話せるようになる前から指さしをするようになります。

それによって「自分のやったこと(指をさす行為)によって相手に何かを伝えることができる」ということに気づきます。これはコミュニケーションの基礎となる力です。

 

 指さしには役割があります。

・自分の気持ちや意図を相手に伝える

・相手との気持ちの共有

 他者とのやり取りするためのキッカケとなる力なのです。

 

指さしの種類

 「何を表すためのものか?」「自分がどうしたいのか?」「してもらいたいのか?」によって使う指さしの種類が変わります。下記は分類の例です。

種類

注意喚起
 ⇒ 自分が関心を持っているものに、相手の注意を向けようとする指さし

場所・方向
 ⇒ 対象物がある場所や方向などを示すための指さし

要求
 ⇒ 自分の要求を伝えるための指さし

質問
 ⇒ 「これは何か?」を相手に質問するための指さし

説明
 ⇒ 指示対象を説明するための指さし (他者は対象に気づいている)

模倣

 ⇒ 手の働きかけを模倣して使用する指さし

その他

 ⇒ 上記のどの機能にも当てはまらない指さし 

 

 

指さしの発達段階

指さしの発達は下記の順に育っていきます。

0歳台

3 ヶ月頃
指差しの起源とされる「指立て」をするようになる(形だけ)

9・10 ヶ月~
「わんわんだよ」と言われて指差された方向を見る。
相手が指をさした方を見ること
★「指向の指差し」とも呼ばれる

11 ヶ月~
自分が見つけたものを「あ!」と言いながら指をさす。二項関係のはじまり
 ★自発の指差し 

※「指立て」は減少。腕を伸ばして、目も使った指差し行動が増える。(9~13ヶ月)

 

1歳台

1 歳~
自分の欲しいものをしきりに指さす。1歳台前半に最も頻繁に指差しがみられる
★「要求の指差し」とも呼ばれる 

1 歳~1 歳6 ヶ月
何かを見つけたとき、「あ!」と言いながら指をさして母親の方を見る。三項関係の始まり。
★「叙述の指差し」とも呼ばれる

1 歳6 ヶ月~
「○○はどれ?」の質問に対して指をさして答える。三項関係の成立
★「応答の指差し」

対象が目の前に無くても、その方向を指差す。
自分では見えない顔の部分を指差して教える。 三項関係の成立  

※1歳から2歳にかけて、他者とのコミュニケーションをするための行動へと変化していく 

 

 

指さしの前提となる力

指さしを獲得するためは「前提となる力」が存在します。ある日突然できるようになるわけではないのです。子どもは小さな力を日々積み重ねているのです。

◆ 見る力の発達
⇒ 相手の視線の先にあるものを見ること(追随凝視、視線追従)、さらに、指さされたものを注目する力

◆他者との注意の共有
⇒ 大人の視線の先に自分の視線も向けること 

◆ 手の分化
⇒ 人差し指だけで対象となるものをさせるか。手指を一本ずつ使うこと(分化)が必要。分化していない状態を「手さし」とよぶ

◆ リーチング
⇒ 指(手)を対象となるものの方向にのばせるか。リーチングに加えて、対象をつかむことも大切な力となる

◆ 指さし行為の模倣
⇒ 大人の指差しをマネできるか

◆ 伝達手段の獲得
⇒ 「物を見せる」「相手に渡す」などの相手に伝える行為ができるか

 

 

指さししないときには 

子どもが指差しをしない・・・。

そんな相談を受けることもあります。前段階の力が獲得できるよう(活かせるよう)おてつだいをするようにします。一見、関係ないんじゃないの?というような日常の動きややり取りが指さしの力となっていきます。
 
・指さしをして共感を促す
 ⇒ 「(指をさしながら)あ、お花だ。きれいだね」 

・受け渡しをする
 ⇒ 玩具などを「どうぞ」「ありがとう」とあげたり、もらったりしながら 人と関わる楽しさに気づいていく。

・まずはカードにしてみる
  ⇒ 好きなお菓子をそのままあげるのではなく、まずはパッケージを切り取ったものをカードにしてそれを見せてからお菓子をあげるようにしてみる。そのカードを大人に渡してもらい、そうすればお菓子がもらえるようにする。

・探し出す
 ⇒  隠れているものを見つける絵本などを使って「○○はどこだ?」という遊びをしてみる。

 ※探し出すやり方の場合、遠いところにあるものだと分かりにくい子もいます。まずはすぐ近くにおいてあげましょう。
 

 

身体的な制限がある場合 

肢体に不自由があり、手もしくは目を動かすのが難しい子もいます。苦手な機能を他で補うことで対象物に意識を向けることで情報を得ることが大切になります。

 

たとえば、

・肢体不自由がある子
⇒ 手や目が動かしにくい場合、聞くことで注意を向けることはできる

・視覚障害がある子
⇒ 本来なら見て得られる情報を、聞くことや触ることで補う

 

 

まとめとして

今回は指さしの種類と発達について説明しました。コミュニケーションや言語獲得(ことば)の基礎となる指さし。障害がある子のなかには、できていない子が意外と多くいます。

そんな子に対して「人さし指を突き出させる練習」をさせる人を時々みかけます。そういう練習以外にも有効なものがたくさんあるのです!

ポイントは前提となる力は何か?

よかったら参考にしてみてください。  
 
 
 
 

◆参考文献
保育現場における前言語期の子どもの「指さし行動」
宮津 寿美香
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shes/8/2/8_2_105/_pdf/-char/ja

指 さ し 行 動 の 発 達 的 意 義
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/31/3/31_255/_pdf