小学生の発達段階を知ろう
子どもの発達を勉強していると様々な文献やデータを目にします。しかし、どれも 0 歳~ 6 歳までのものばかりです。
たしかに乳幼児期の発達は、それ以降の土台となるものなので大切です。それ以降の就学してからの発達はどのように進んでいくのでしょうか?今回は特に小学生にポイントを絞って説明します。
小学生の「○○時期」とは?
小学生(6、7歳~12歳)のことは様々な名前で呼ばれています。
・児童期
・学齢期
・学童期
・就学期
などなど。様々な呼び名があります。
小学生は 2 つもしくは 3 つに分けられています。
・小学年(1,2年生)、中学年(3,4年生)、高学年(5,6年生)
・小学年(1,2、3年生)、高学年(4、5,6年生)
◆参考(各段階の呼び名)
時期の名称 | 年齢 |
新生児期 | 生後 4 週 |
乳児期 | 0 〜 1 歳 |
幼児期(前期) | 1 〜 3 歳 |
幼児期(後期) | 3 〜 6 歳 |
学童期 | 6 〜 12 歳 |
青年期(前期) | 12 〜 18 歳 |
青年期(後期) | 18 〜 22 歳 |
成人期(前期) | 22 〜 35 歳 |
成人期(中期) | 35 〜 50 歳 |
成人期(後期) | 50 〜 60 歳 |
高齢期(前期) | 65 〜 74 歳 |
高齢期(後期) | 75 歳〜 |
0~6歳までは発達の土台作りの時期、6~12歳まではこれまで獲得した力をふまえて、さらに能力を深めていく時期なのです。
ギャングエイジ?
小学校3,4年生のころ(中学年)はギャングエイジと呼ばれる時期でもあります。このころには「規則・ルール」が分かるようになってきます。
・集団の規則を理解して活動に参加できるようになる
・自分たちで決めたルールを守るようになる
規則を守れれば集団活動もスムーズになってきます。
同時にこの時期の特徴として集団で徒党を組むというものがあります。それを「ギャングエイジ」といいます。
ギャングエイジっていつまで続くの?
個人差が大きい。
なんでも集団で、というのは段々と減っていきます。
小学校高学年に入ると、子どもたちも趣味や興味が増えて自分だけもしくは小集団で楽しみたいという子も出てくるからです。さらに中学校にあがると、子の関心は周囲よりも自分の内側に意識が向き始めるためギャングエイジはほとんど見られなくなります。
6~12歳は何が育つ時期なの?
児童期全体の発達に話しを戻します。
この時期(6~12歳)を見るうえで何をおさえておけばよいのでしょうか?
ポイントがいくつかあります。
・思考の育ち
⇨ 考え方が変われば行動も変わります。
・他者意識の育ち
⇨ 他人をどのように認識するか、によって対人関係やコミュニケーションの取り方も変わります。
ものごとの捉え方、考え方がしっかりとしていきます。逆にいうと児童期の思考の発達が弱いと「幼い感じ」が残ってしまう場合があるのです。
それでは小学生の時期の発達を分野(領域)別にみていきましょう。
児童期の発達段階
発達には様々な種類があります。
・ことば(音声言語、読み書きなど)
・からだ(身長、体重、運動など)
・きもち(思考、認知、対人)
それぞれが絡み合って育っていくのです。
なので「すべてが6歳レベル」だとは言い切れません。「からだは10歳レベルだけれど、ことばは6歳レベル」という場合もあるのです。
発達は細かくみていくことが大切です。
ことば(言語発達)
小学校入学までに多くの子が言語能力の基礎となる力が身についています。
・日本語の音を正確に発音する力
・十分な語彙の獲得(単語数)
・基礎的な文法能力
これらの言語能力を基礎として、
・コミュニケーション能力
・読み書き能力
を身につけていきます。
音韻意識の発達
ことば(単語)には意味があります。意味以外にも様々な要素が組み合わさって成り立っています。この要素のことを「音韻(おんいん)」といいます。
・意味
⇒ その単語にはどのような意味があって、いまどの意味で使われたのか?
・文字の組み合わせ
⇒ 単語を分解していくと「子音」「母音」などの単位に分けることができます。
「りんご」という単語
① 「り」「ん」「ご」の3つに分けられる
(この単位を「モーラ」といいます)
② ローマ字で表すと「r i n g o」の5つの文字からなる
(子音「r」「n」「g」と母音「i」「o」)
音韻を理解していないと、しりとりや逆さことば遊びはできないのです。
① 4歳
「逆さことば」で遊べるようになる。「しりとり」もできるようになる。
② 5歳
単語の先頭にある音(語頭)、お尻(語尾)、真ん中(語中)にどんな音があるのか気づくようになる。
「りんご」
⇒ 「り(語頭)」「ん(語中)」「ご(語尾)」
③ 6、7歳(小学1年)
5文字以内の単語ならば一文字欠けても残りを言うことができる。
「プレゼント」の「プ」を抜かして言うと?
⇒ 「レゼント」
④ 8、9歳(小学2年)
5文字以上の長い単語で一文字欠けても残りを言うことができる。
「フライドポテト」の「フ」を抜かして言うと?
⇒ 「ライドポテト」
気持ち・対人(社会性の発達)
社会性とは「どのように他者と関わっていくのか」ということ。
他者への意識や社会への順応のために必要な力の発達です。まずは自分から。
・自分を意識できるようになる
・他者への意識も育っていく
自分と他者への意識
自己と他者への意識化は以下のような流れで獲得していきます。
① 生後1ヶ月
自分と他者の違いには気づいていません。この状態はしばらく続きます。
他人が受けた苦しみを見ただけで、あたかも自分が受けたように感じてしまいます。そのときの苦痛を和らげるために、指しゃぶりや母親に抱きつくなどの行動も見られます。
② 2歳頃
(幼児期前期)
自分と他者とは感情や気持ちが違うものだということに気づきはじめます。
③ 5~7歳くらい
(幼児期後期)
自分と他人の違いが分かります。しかし、容姿や性別など外見や属性のみの違いで判断しています。
④ 8~10歳くらい
(児童期前・中期)
自分と他人の違いは、見た目や属性だけではなく、性格や感情、態度などの内面的なものにも違いがあることに気づきます。
⑤ 10~12歳くらい
徐々に自分が分かってくる時期
(児童期後期)
自分のことを把握できるようになってきます。人によって経験してきたことが異なるということに気づきます。
また、他者の有能さを知り自分のことを否定的に評価しがちです。
詳しくはこちらの記事もご覧くださ
判断基準の獲得
子どもは何を基準にしてものごとや状況の判断をしているのでしょうか?年齢によって理解できることがことなるため判断材料も異なります。
① 1歳~
② 2歳
自分にとって「いい」のか「だめ」なのか。周りと折り合いをつける時期。
③ 3歳~
自分が「好き」なのか「嫌い」なのか。好きでないことを取り組めるようになる時期。
④ 4歳~
勝ち負けで判断する。相手を応援、慰めることもできるようになる時期。
⑤ 5歳~
その行動が「善い」ものなのか「悪い」ものなのか。我慢することもできるようになってくる時期。
⑥ 6、7歳~
⑦ 8、9歳~
⑧ 10、11歳~
役割が果たせるのかどうか。目的意識や役割意識が明確になってくる時期。
⑨ 12、13歳~
それはどのような意味があるのか。抽象的なものの理解ができるようになってくる時期。
からだ(身長&体重の成長)
小学生の身長と体重の平均は下記の通りです(文部科学省 令和2年度 学校保健統計調査【発育状態調査】より)
「○歳の壁」「○歳の坂」
「○歳の壁」「○歳の坂」ということばを聞いたことがありますか?
子どもが発達のなかでぶつかりやすい時期と事柄です。それらが「壁」や「坂」と呼ばれています。
5歳の坂
これまで生活の中では「話しことば」が中心でした。学校の授業が始まると「読み」「書き」が加わります。抽象的な学習のはじまりです。
この「4歳の坂」でつまづきやすのが耳が聞こえづらい子(難聴児)です。耳か聞こえづらいと目で見てものを判断することが多いのです。しかし、目で見えない「抽象的」なもので判断することが求められるようになってきます。そこで戸惑ってしまうのです。
⇒日本語 : あなたが好きな食べ物は何ですか?
⇒手 話 : あなた・食べる・すき・何?・あなた
9歳の壁(10歳の壁)
9歳は小学校中学年(小4)から高学年(小5、6)に上がる時期です。これまで学校の授業では「具体的なものを使って考えること」ができました。高学年に入ると抽象的思考が求められ授業も難しくなっていきます。
授業(勉強)についていけなくなると自信もなくなってきて自己評価も低くなっていきます。この頃の子は他者意識も育ってくるので、他人と自分を比べるとも増えてきます。そのため、さらに自己評価が下がってしまうケースがあるのです。
このことを「9歳の壁」もしくは「10歳の壁」「小4の壁」といいます。「9(10)歳の峠」と呼ばれることもあります。
・この時期は大きな転換期
・様々な「壁」にぶつかる時期
※この頃の子どもには褒められたり認められたりする経験が必要なのです。
【参考資料】生涯の中での位置づけ
人の人生において「小学生」の頃の子はどのような位置づけとされているのでしょうか?多くの心理学者が研究をしています。なかでも有名なのが下記のようなものです。
ピアジェ
外の世界(自分以外)をどのように認識してどのように関わっていくのか?を分類したものです。
子どもは、経験や環境との関わりによってできる知識の枠組みを使って、実際に目の前にあるものに立ち向かっていきます。その枠組みは「シェマ」と呼ばれています。シェマを使って、磨き上げていくことが発達するということになるのです。
それでは各期をみていきましょう。
環境と関わることによって積み重ねられる知識の枠組み(シェマ)を作っていく段階。
ex. 目の前から見えなくなっても消えたわけではないということに気づく、目的をもって身体を動かす
情報の処理がまだ未熟な段階。まだ自分の視点でしか物事を見ることができない自己中心性がみられる(「わがまま」とは別物)。
ex. 自分が見えないものは相手も見えないはず
論理的に考える力がついてくる時期。他人の気持ちを考えられるようになってくる。見た目が変わっても個数や量が変わらないことに気づく。見た目に騙されなくなる。
ex. 量・数の保存(8歳)、重さの保存(9~10歳)、体積の保存(11~12歳)
目の前にないものでも論理的に考えられるようになってくる時期。仮説を立てることができる。
エリクソン
発達段階を 8 つに分類した。各段階にはそれぞれ「心理社会的危機」が存在していて、それを乗り越えることで力が身についてくるとした。それがエリクソンの心理社会的発達理論です。
各段階を見ていきましょう
⇒ 基本的信頼 対 基本的不信
⇒ 自律性 対 恥・疑惑
⇒ 積極性 対 罪悪感
⇒ 勤勉性 対 劣等感
⇒ 自己同一性 対 同一性拡散
⇒ 親密 対 孤立
⇒ 生産性 対 停滞
⇒ 統合性 対 絶望
まとめとして
今回は学齢期の発達段階についてまとめてみました。
0~6歳までに獲得してきたものを土台として、学齢期の発達が進んでいきます。
障害を持つ子の評価をするときにも定型発達の順序は参考になります。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
◆参考資料
『チャイルドヘルス vol.13』診断と治療社
『言語・コミュニケーション・読み書きに困難がある子どもの理解と支援』学苑社