放課後等デイサービスで自分の「役割」と「職域」を考えてみる
障害児の施設では保育職以外にも様々な職種が関わっています。
たくさんの職種がいるということは、それぞれに自分の役目があるということ。
みんな分かっていても言いませんが長く勤務しているから人の意見が絶対になりやすいのです。「他の職種の役割も私がやる!」では他の職種は必要なくなってしまいます。
今回は小児施設での「役割」と「職域」のはなしです。
・もう一度自分の職種について考えてみよう
・役割と職域を意識している施設は働きやすい職場だ
「役割」と「職域」をどのように考えればよいのでしょうか?
ポイントは
・自分は何が求められているのか?(役割)
・自分がやってもいいことは何か?(職域)
を考える明確にしていくことなのです。放課後等デイサービスを例に「役割」と「職域」の説明をしていきます。
いろんな職種が関わる放課後等デイサービス
放課後等デイサービスでは、遊びや生活面など、子どもに関わる範囲が広いです。
保育職だけではなく、
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
・看護師
などなど、様々な職種も一緒に働いています。
役割とは?
「役割」とはそれぞれに割り当てられた役目のこと。
放課後等デイサービスなどの小児施設では、子どもの育ちを促すために各職種が得分野からさまざまなアプローチ(働きかけ)を行うことです。
・理学療法士(PT)⇒ 身体、運動など
・作業療法士(OT)⇒ 操作、作業など
・言語聴覚士(ST) ⇒ ことば、きこえ、飲み込み(食事)
・看護師 ⇒ 衛生、予防など
特に「専門職」と呼ばれる職種の人が「役割」をあやふやにしたままだと周囲から「何をする人なの?」と思われたまま働くことになってしまいます。
・国家資格は名前だけでしょ
・保育だけしていればいいよ
という目で見られるかもしれません。自分の役割を把握しておくことは大切です。
職域とは?
「職域」とは各職業のやること・やれること・やるべきことの範囲。
保育職は、どこまで手を出していいのでしょうか?
確かに保育職はジェネラリストです。しかし、独断で決めてはいけないこともあるのです。
同じ施設で長く働いていると、そこのところが曖昧になってくることがあるので注意していきたいです。
時々、薬に関して細かい提案をする人がいます。
確かに、薬が効いている(だろう)時間を把握して、保護者に伝えることで、今後の医療的な支援の方向性を決める足掛かりにしてもらうことは大切です。
しかし、親御さんに相談もなく、勝手に飲む薬や飲むタイミングをずらしてしまう等の判断は行き過ぎです。
看護師に相談して、親御さんにどう伝えたらよいのか?を決めるべきです。
職種によって「当たり前」が異なる
放課後等デイサービスに限らずですが、子ども(小児)の福祉施設には多くの職種がいます。それぞれ職域が異なるので、知識も異なります。
STとしては「当たり前」だけれど、保育職にとっては「初耳」というものもあります。または、「一般的に言われているが誤っている知識」もあります。
・「ことばを獲得していない子に対して、構音訓練をすれば喋れるようになる」
・「食べづらい子の食べ物は、とにかく細かくするのがよい」
※上記のような誤った知識を信じて支援を行っても、良い効果は得られません。
◆言語聴覚士と保育職の違いはこちらの記事をご覧ください
言語聴覚士の場合
別のことで、言語聴覚士にも同じことがいえます。
例えば、発達検査の報告書を書く際、障害名の診断わしてしまう人が、稀にいます。
「〇〇疑い」というのも同じことです。
診断は医師の仕事です。
一方、STは、検査結果から読み取れる状態を分かりやすく示して、支援の方向性やその案をスタッフに伝えることことが仕事です。
◆そもそもSTの仕事って何?という方はこちらの記事もご覧ください。
言語聴覚士の役割は施設(事業所)によって異なる
放課後等デイサービスでは、STの役割が事業所によって異なります。働き方や仕事内容も「事業所側から明確に指定されているケース」と「現場のSTにすべて任せてもらえるケース」で分けられると思います。
①事業所側から明確に指定されているケース
この場合は、与えられた仕事をしっかりとやっていくことで、おのずとSTの役割が明確になります。運営にSTが携わっている事業所であれば、ありうるケースです。
②現場のSTにすべて任せてもらえるケース
運営する人が、専門職(PT、OT、STなど)の職域を把握していない事業所に多いケース。その場合、「とりあえずやってみて」や「やりたいことがあったら教えて」と言ってくれることと思います。
何が求められているのか考える
放課後等デイサービスは、「保育」が中心となって、子どもへの支援を行っているところが多いです。そこに「専門職」として、どのように介入していくのか?
「こうすればもっと安全に支援ができる」⇒ 摂食嚥下(食事)
「こういう視点があれば子どものこういうところがみられる」⇒ 発達
摂食嚥下
摂食嚥下では、嚥下のメカニズムを勉強することが大切です。専門職はそれを身に染みて分かっている。
しかし、小難しいことよりも「介助方法」「食形態」「子どもへの対応」などの知識が重宝されます。特に、重症心身障害児が通う放課後等デイサービスでは、食事の問題を抱えているけれど対応が分からない、というケースがたくさんあります。
ここでSTの出番です。
安全に、楽しく食事を行えるように対応を考えていきます。
発達
発達面では「問題行動の原因となるもの」や「発達段階」の知識が重宝されます。
発達段階の指標として発達検査や言語検査を受けてることがあります。それらの報告書が分かりづらいと保護者やスタッフは困ってしまいます。
そういうときはSTやOTなどの専門職が報告書をうまく翻訳して、保護者やスタッフへと伝えると喜ばれます。これで「役割」がひとつできました。
もしも、STひとりの力ではどうにもならないときには、近くにいるPT、OT、歯科医師などに助けを求めるとよいと思います。
「保育スタッフが持っていない視点を提供すること」
「保育スタッフだけでは、どうにもならないこと」
の対応に、協力していくのです。保育スタッフの対応力が上がれば、子どもたちへの対応も変わってきます。
そういった内容をうまく伝えていくことが、結果的に専門職としての居場所をつくることにつながるのです。
放課後等デイサービスで働くなら自分の居場所を作ろう!
ここでの「自分の居場所」とは人間関係のはなしではありません。「専門職としての居場所」づくりのはなしです。
職場で「自分の居場所を作る」ためにはどうすればよいのでしょうか?
一番、理想的なのは「自分しかできない仕事」を作ることです。
専門職として働くときなら「役割」「職域」を曖昧にしない
おさらいです。
小児の施設で専門職として働くならば下記の点を常に考えておきたいです。
・自分は何が求められているのか?(役割)
・自分がやってもいいものは何か?(職域)
「これは自分の仕事じゃないからやらなくてもいいや」というのではありません。
自分の職種を見つめ直すのです。
それが多職種との共存ポイントとなります。
◆多職種に関する記事はこちらをどうぞ
まとめとして
今回は、放課後等デイサービスで働くときの「役割」と「職域」について説明しました。この2つを曖昧にしないことが、それぞれの職種が対等に働ける職場だと思います。
多職種がかかわっている放課後等デイサービスで働くなら覚えておいて損はありません。
よかったら参考にしてみてくださいね。