言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

放課後等デイサービスで働く言語聴覚士と保育職の違いと役割とは?

言語聴覚士(ST)は何をする人なのか分かりにくい

  

リハビリなどを行う職業のなかに「言語聴覚士(ST)」というものがあります。

名前を見ると「言語訓練」とかをやってくれそうです。

しかし、ST全員が言語訓練を行うわけではありません。

さらに、ST全員が子どもを対象としているわけでもありません。

医師や看護師の「外科」「内科」のように言語聴覚士も分野があるからです。

今回は子ども(小児)の分野で働く言語聴覚士はどんなことをやる人たちなのか?という説明をしていきます。

 

 

放課後等デイサービスと言語聴覚士の現状報告【2021年5月】

 

放課後等デイサービスには様々な職種が子どもと関わっています。

保育スタッフを中心に、

・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)

などがいます。

この保育職以外の職種を「専門職」と呼んでいます。

放課後等デイサービスの専門職って保育スタッフと一緒に保育活動をやっているんでしょ?

その通りです。

だとしたら保育スタッフと専門職は何が違うのでしょうか?

 

放デイのST?保育職?

放デイとは放課後等デイサービスの略です。

そこで働く言語聴覚士と保育職。

どのような違いがあるのでしょうか?

 

保育職とは?

障害児保育の現場で中心となって働くのが保育職です。

・保育士の国家資格を持っている人
・資格はないけれど子どもと関わる人

を保育職・保育スタッフと呼ぶことが多いです。

言語聴覚士とは? 

障害や疾患があるために「話す」「聴く」「食べる」がうまくできない子がいます。

その際、機能の獲得や回復、代替え手段の提案などを行うのが言語聴覚士です。

放課後等デイサービスでSTが複数いる施設は少ないです。 

 

STと保育職の違い

 

仕事の違いをみてみるとこんな感じです。

ほぼ同じです。

保育職と一緒に同じことをしているので違いが分かりにくいのです。

違うことは「検査を行う」ことくらいでしょうか?

 

検査を行う

これは特徴的です。

知能検査や発達検査、言語検査を行うリハビリ職はSTだけです。

それ以外の職種で検査を行うのは心理職くらいです!

 

視点が違う

保育職も子どもの発達をみています。

それを元に評価も行います。

言語聴覚士も同じです。

しかし、言語聴覚士は自分の得意分野に関してはより深くみることができます。

食べること
しゃべること
聞こえのこと

これらはどんなことなのかを見ていきましょう。

 

 

放デイSTの強み

 

小児領域のSTの強みは医療や発達の観点から子どもをみることです。

保育職も発達の視点は持っています。

それに医療やリハビリなどの考え方も含んでいます。

 

 STだからこその強みは次の3つです。

 

食べること

私たちは毎日食事をしています。

食べること。それは当たり前になっています。

支援の現場でも食事は意外と軽く考えられがちです。

さらに支援を行うときには「自分だったら食べられるだろう」と支援者が自分自身をを基準に考えてしまうことが多いのです。

しかし、私たちの目の前にいるのは、何らかの原因で「うまく」食べられなくなっている子です。

それを忘れてはいけません。

 

「食べること」とは、

食事介助
食物の加工
環境調整

も含まれます。

 

しゃべること

障害がある子は、ことばの獲得が遅れることがあります。

言語聴覚士は発声の練習をする構音訓練のイメージが強いかもしれません。

しかし、しゃべらせることだけが目的ではありません。

サインや身振りなどを使って他者とコミュニケーションをとることも重要視しています。

 

聞こえのこと

ことばを話すうえで★耳が聞こえているということは重要です。

しかし、軽く考えられがちです。

声や音が聞こえにくくても、周囲の様子を見て動く子が結構います。
そういう子は、支援者がよく見ていないと「聞こえづらさ」があったとしても見逃されてしまいます。

聞こえにくい子やその親、スタッフたちに正しい情報を提供することも言語聴覚士の役割です。

  

ここまでのまとめ!

・保育職とSTは同じことをやっている
・どちらも発達面をみている
・STは子どもを評価するとき「食事」「言語」「聴覚」の視点がプラスされる
・検査を行うのは言語聴覚士

 

保育職と言語聴覚士には微妙な違いがあることが分かりました。

実際の現場で働いているSTはどのように感じているのでしょうか?

 

 

「ことば」をみてくれない言語聴覚士もいる?

 

言語聴覚士の分野は幅広いです。

「ことば」以外にも「聞こえ」や「食事」なども専門分野です。

それらすべての分野をみられる言語聴覚士も存在します。

しかし、それはごく限られた人だけ。

普段から業務で行っていることが専門となります。

そのため同じ言語聴覚士でも得意な分野に違いがでるのです。

 

・成人(大人)の言語障害をみているST
⇒ 小児のことは分からない

・「聴覚」を専門としているST
⇒ 食事(摂食嚥下)のことは詳しくない

・発達相談がメインのST
⇒ 成人の疾患は分からない

  

このように言語聴覚士の中でも携わるものが細分化されています。

専門というべきか、得手不得手というべきか

「言語障害」よりも「摂食嚥下」が得意!というSTももちろんいます。

 

  

STの実感と本音

  

実際に放課後等デイサービスで働いていると「おかしい」と感じることはあります。

様々なタイプの施設があります。

すべてが同じ問題を抱えているとは思いません。

1つの例としてとらえていただければ。

  

① 保育の仕事が忙しくてSTの仕事が後回しにせざるを得ない

保育スタッフと一緒に保育活動を行うのはよいです。

子どもと関われるのは楽しいですし、子どもと他者との関わりの様子をみることもできます。

検査以外の子どもの様子をみることができるのは、子どもを知ることで大きな判断材料となります。

しかし、保育や事務が忙し過ぎるケースがあります。

やろうとしていたことが後回しになっていきます。

・支援に関する資料作り
・設定保育の準備
・新人や後輩の育成
・他職種との連携

これってまさに保育とは別の視点となるものです。

これらがなくなってしまうということ。

 

② 療育的な考え方を軽くみられることがある

放課後等デイサービスでは、お勉強(療育)は必要ないという考え方がまだ残っていることがあります。

学校が終わった後は、お勉強なんてしないで楽しく遊んで過ごすべきだ

そのほうが、子どもの心にとっても良いはずだ、と。

 

たいていそう言う人は、

・なぜ心によいのか?
・療育的なかかわりを限定する必要があるのか?

の答えを持っていません。

何となくなんです。

「何となく」という理由で他人の考え方やアプローチを潰されるって・・・。

 

そんなのが続くと徐々に専門職は放課後等デイサービスから去っていきます

 

だって、児童発達支援の方が専門的な知識や技術を必要とされるから。
だって、訪問の方が給料がずっといいから。

 

人数が多い職種の考え方が正しいとは言い切れません。

いろんな視点や考え方が必要です。

 

 

専門職の強み

 

放課後等デイサービスでは職種による仕事内容の違いは少ない

しかし、検査のようなその職種にしかできないことも存在します。

さらに、職種独自の視点というものがあります。

  

専門職の視点!

支援やアプローチを行うときでも、医療的な基礎知識が根底にあります。

・なぜこのやり方なのか?
・そのときの身体の器官はどう動くのか?
・このやり方で起こるデメリット

このような知識をもとに評価やアプローチを行うのです。

 

 

まとめとして

今回は放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)は何をやっているのか?

保育職との違いとは何か?というはなしをしました。

STだけではなく、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)とかかわるときは、どんどん意見を交換するとよいです。

新しい視点を取り入れることで、子どもをより深く理解できます!

他職種と関わるとき「この職種はどんな見方をしているのかな?」と考えると、自分自身の勉強にもなるはずです。