放課後等デイサービスで実習を行う学生に知っておいて欲しいこと
言語聴覚士になるためには養成校に行く必要があります。
そこで数年学んで知識を身につけます。
さらに外部の施設で「実習」を受けなければなりません。
近年、放課後等デイサービス(放デイ)が実習先になる人も増えてきました。
しかし、放デイは、ことばの教室や病院と比べると、まだまだ「よく分からない」施設です。そこで、今回は、実際に放デイで長年働いてきた言語聴覚士であるわたしが、放デイについて説明します。
・放デイとは何か?
・実習では何に気をつければよいのか?
放デイに実習に行く学生さんのヒントとなれば嬉しいです。
実習生以外にも、これから放デイで働きたい人の助けになれば。
- 放課後等デイサービスで実習を行う学生に知っておいて欲しいこと
- 1)放課後等デイサービスの役割
- 2)放課後等デイサービスの中の言語聴覚士
- 3)子どもの見方 ―肢体不自由児の場合―
- 実習の心構えとして
- まとめとして
放課後等デイサービスとは?
そもそも、放課後等デイサービスとはどんな施設なのでしょうか?
簡単に言うとこんな感じです。
・障害を持つ子が通う施設
・学校が終わってから通う
・塾ではない
・リハビリ施設でもない
通っている子の障害や疾患も様々です。知的障害や発達障害、肢体不自由など。
施設によって肢体不自由や障害が重い重症心身障害児、医療的ケアが必要な子を受け入れていないところもあります。
逆に、重症心身障害児、医療的ケアが必要な子だけが通う放課後等デイサービスもありあります。
1)放課後等デイサービスの役割
では、放課後等デイサービスはどのような役割の施設なのでしょうか?
① 第3の場
子どもたちの生活は「家」や「学校」が中心です。
そのプラスアルファが「放課後等デイサービス」です。
勉強やリハビリを教え込むための施設というよりは、子どもが落ち着くことのできる場。
ただし、子預かりではなくて、遊びや他者との関わりを通して成長していこうねという方向性の施設が多いです。
② リハビリ職が中心ではない
基本的には支援員・指導員の人たちがメインとなって働いています。
なかにはPTやOT,STなどが中心となって運営している事業所もあります。しかし、ほとんどの施設は、訓練中心ではなく「保育」や「支援」が中心です。
保育者や支援者と共存するために、STはどのように関わっているのか?はリハビリ職にとって大切な課題となります。
※場所によって「保育」「支援」など呼び方は様々です。
③ 様々な視点
放課後等デイサービスには様々な職種が関わっています。
・保育職
・支援員、指導員
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
・看護師
・歯科医師
・小児科医
放デイには、多くの人たちがそれぞれの視点で子どもたちをみているのです。
それらをすりあわせて、よりよい支援を行っていきます。
2)放課後等デイサービスの中の言語聴覚士
放課後等デイサービスには多くの職種が関わっていることが分かりました。
では、言語聴覚士はどのような位置づけなのでしょうか?
① 「ことば」だけみているわけではない
言語聴覚士は言語面だけみていればいいの?
そう思っている人は多いです。
しかし、「ことば」だけみても子どもを理解することはできません。
もちろん食事面もみます。さらに、発達全般をみることも欠かせません。
言語聴覚士なのだから、運動面はよくわかりません。
そういう分野のことは理学療法士・作業療法士の先生に助けを求めます。
※発達全般とは、言語・コミュニケーション以外にも、認知発達、情緒発達など)
※STの職域を超える領域のものは、PTやOT、歯科医師などに相談するようにします。
② 専門職として保育職・支援職と関わる
基本的に保育職や支援職以外を「専門職」と呼んでいる施設が多いです。
専門職はそれぞれが独自の動くのではなく連携を取りながら支援を行う必要があります。
もしも、あなたが関わる(であろう)施設に常勤の専門職がひとりしかいなければ、その人が他の専門職とのパイプ役を受け持っている可能性が高いです。
パイプ役というのは
・保育職と他の専門職をつなぐ
・専門職からの助言や検査結果を翻訳する
などのコーディネイト的な役割を担っています。
3)子どもの見方 ―肢体不自由児の場合―
先ほど、施設によって通っている子の障害が異なるというはなしをしました。
知的障害や発達障害であれば、本やネットで情報を得ることができます。
しかし、肢体不自由の子の情報が手に入りにくいのが現状です。
障害が重い子や発達が初期段階の子であれば、反応が分かりにくかったり、どう介入すればよいのか迷ってしまうかもしれません。
基本的には分からなければ丁寧に関わろうでOKです。
① 反応が分かりにくい
こちらが話しかけたり遊びに誘っても反応が乏しい子がいます。
原因は、身体的な制限や、外界(自分より外の世界)へ興味を向けづらいことなど様々。
そういうとき支援者は丁寧に関わっていきます。
・反応が出るまで待つ
・思い込みを捨てる
・生理的な変化も反応のひとつとして考える
などの配慮が大切です。
目の前にいる子のことを知ろうという姿勢が大切です。
② 働きかけの方法
声かけや遊びの際にはより丁寧に関わるようにするとよいです。
・早口にならないように
・相手によってはサインや実物呈示も加えて
・物の呈示の仕方は、ゆっくりと
・子どもの顔が見える位置から話しかけたり物を呈示したりする
など、子どもの理解度などに合った働きかけを行うとよいです。
一度、関わっただけではその子のことを完全に理解することなんてできません。
気負わずに!
4)「実習生」として気をつけたいこと
わたしも放課後等デイサービスで言語聴覚士の実習生を受け持ったことがあります。
その時に感じたことをもとに、実習するときに気をつけたいことをまとめてみました。
① 様々な人の協力があっての実習
実習生にとっては、資格取得のための授業の一環です。しかし、実習の影では、様々な人が協力してくれています。
お世話になる施設の言語聴覚士の先生以外にも保育職や支援職のスタッフの協力があってはじめて実習が成り立っているのです。
このことを忘れてはいけません。
② 社会人・医療人として
社会人としてのルールも意識してみましょう。
挨拶やホウレンソウ(報告・連絡・相談)など、社会人として「当たり前」のルールは、出来て当たり前です。逆にいうと、出来ていないと様々な人から「なんだろう、この人は?」と思われてしまいます。
③ 子どもに対して
子どもに対して「障害や疾患を学ぶための実験材料」ではなく「一人の子ども」として接してください。
始めは、どのように接すればよいのか分からないことも多いと思います。
・この子と楽しく遊ぶためにはどうすればよいのだろう?
・どうすれば楽しんでくれるのかな?
・この子をみる(評価する)ためには、どこをみて、どう仮説を立てればよいのだろう?
そんなふうに考え続けてください。
関わっていくうちに、障害や疾患に対する偏見がなくなっていくはずです。
実際の臨床の場を肌で感じることの出来る機会です。誰も実習生に完璧は求めていません。自ら学ぼうとする姿勢、それが実習には欠かせないことなのではないでしょうか。
もちろん、最低限の知識は必要ですが・・・。
実習の心構えとして
実習で気をつけたいことを説明しました。
補足として「心構え」も追記しておきます。
1)実習は「単なる授業の一環」か?
2)実習は誰が準備してくれるもの?
3)実習生はお客さんではない
まとめとして
今回は実習生に知っておいて欲しい「放課後等デイサービス」のことをまとめました。
実習生はまだ資格を取っていない「たまご」です。
学ばせていただく姿勢を忘れず、丁寧に、謙虚に楽しんでください。
頑張ってください。
よかったら参考にしてみてくださいね。