放課後等デイサービスで実習を行う学生に知っておいて欲しいこと
言語聴覚士の学生として、放課後等デイサービス(放デイ)で実習を受ける人も増えていると思います。しかし、放デイは、ことばの教室や病院と比べると、まだまだ認知されていないマニアックな分野です。そこで、今回は、実習に行く前に頭に入れておくとよいことを書いてみました。イメージが深まれば嬉しいです。
1)放課後等デイサービスの役割
① 第3の場
子どもにとって「家庭」や「学校」ではない第3の場といえます。「落ち着くことのできる場」を目指している事業所も多いです。
② 保育が中心
PTやOT,STが中心となって運営している事業所はその限りではありません。ほとんどの放デイは、訓練中心ではなく「保育」が中心です。「保育と共存するために、STはどのように関わっているのか?」は課題です。
③ 様々な視点
放デイには、保育職だけではなく、PT、OT、ST、看護師、歯科医師、小児科医、MT(音楽療法士)、プール指導、サッカー指導などの多くの職種が関わってる事業所が多くあります。いろいろな立場からの視点で子どもをみる、ということは、それだけ可能性が拡がると言うことができます。
2)放課後等デイサービスの中の言語聴覚士
① 他の職種とのかかわり方
事業所によっては、すべての専門職が非常勤で働いているケースもあります。私の施設では、STのみが常勤職員です。そのため、役割としては
・保育職と他の専門職をつなぐ
・専門職からの助言や検査結果を翻訳する
などのコーディネイト的な役割を担っています。
② 「ことば」だけみているわけではない
PT,OT,心理職などが常勤でいない施設では、必然的に、STは“専門職の代表”の意味合いが強くなります。ということは、子どもの「発達全般」を見る必要がある!ということです。(発達全般とは、言語・コミュニケーション以外にも、認知発達、情緒発達など)
※STの職域を超える領域のものは、PTやOT、歯科医師などに相談するようにしています。
3)子どもの見方 ―肢体不自由児の場合―
① 反応が分かりにくい
→身体的な制限や、外界(自分より外の世界)へ興味を向けづらいことなどの理由から、何らかの
働きかけに対する反応が出なかったり、出づらかったりすることがあります。そのため、支援者は
・反応が出るまで待つ
・思い込みを捨てる
・生理的な変化も反応のひとつとして考える
などの配慮が大切です。
② 働きかけの方法
・早口にならないように
・相手によってはサインや実物呈示も加えて
・物の呈示の仕方は、ゆっくりと
・子どもの顔が見える位置から話しかけたり物を呈示したりする
など、子どもの理解度などに合った働きかけを行うとよいです。
4)「実習生」として
① 様々な人の協力があっての実習
実習生にとっては、資格取得のための授業の一環です。しかし、裏では、養成校の先生やバイザーのSTだけではなく、様々な人の協力で成り立っています。養成校の担任以外の先生や、実習先の責任者やその他スタッフなど。このことを忘れてはいけません。
② 社会人・医療人として
挨拶やホウレンソウ(報告・連絡・相談)など、社会人として“当たり前”のルールは、出来て当たり前です。逆にいうと、出来ていないと様々な人から「なんだろう、この人は?」と思われてしまいます。
③ 子どもに対して
子どもに対しても、「障害や疾患を学ぶための実験材料」ではなく、「一人の子ども」として接してください。始めは、どのように接すればよいのか分からないことも多いと思います。「この子と楽しく遊ぶためにはどうすればよいのだろう?」「この子をみる(評価する)ためには、どこをみて、どう仮説を立てればよいのだろう?」と考え続けてください。関わっていくうちに、障害や疾患に対する偏見がなくなっていくはずです。
実際の臨床の場を肌で感じることの出来る機会です。誰も実習生に完璧は求めていません。自ら学ぼうとする姿勢、それが実習には欠かせないことなのではないでしょうか。
もちろん、最低限の知識は必要ですが・・・。
実習の心構えとして
1)実習は「単なる授業の一環」か?
2)実習は誰が準備してくれるもの?
3)実習生はお客さんではない