放課後等デイサービスでSTとして約10年働いて分かったこと
放課後等デイサービスには保育スタッフの他にも様々な職種が関わっています。理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などなど。
このブログでも放課後等デイサービスでSTがやれることはあるのか?をテーマに記事を書いてきました。
現在、わたしはとある放課後等デイサービスで働いています。もうすぐ10年がたちます。これを機に今までの経験を踏まえて言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができるのか?という考えをまとめていきます。
放課後等デイサービスと専門職
そもそもすべての放課後等デイサービスに専門職がいるわけではありません。
専門職とは下記のような職種を指します。
・理学療法士(PT)
・作業療法士(OT)
・言語聴覚士(ST)
・心理職
・看護師
・医師、歯科医師
肢体不自由の子たちが通う放課後等デイサービスには専門職がいる施設もあります。
※重症心身障害児が通うためには専門職が必ず必要となります。
◆重症心身障害児についてはこちらをどうぞ
わたしは言語聴覚士の国家資格を取ってからずっと小児の分野で働いてきました。そのなかでも長く働いてきたのが放課後等デイサービスです。
重症心身障害児もその他の障害の子もたくさんいる施設です。
今回、10年近く務めてきた職場を退職することになりました。そこで、これまで働きながら考えてきたことをまとめてみたいと思います。
保育スタッフはどのように専門職を見ているか?
放課後等デイサービスでは10年近く働いてきました。そこで様々なスタッフと話しをする機会がありました。
・自分のいる施設のスタッフ
・他の施設のスタッフ
・ネット上で知り合った保育スタッフ
いろんな人たちのお話しを聞くことができたのは大きな財産となりました。
放課後等デイサービスで働く保育スタッフが PT、OT、STといった「専門職」をどのように見ているか?ということが分かってきました。
大きく分けると上記の3つです。人数的に多いのは( B )です。
わたしたちの支援に意見してもいいけど、納得できない助言は聞きませんよ。
そんなのばっかり。
専門職の味方は年々増えている!
10年前は放課後等デイサービスで専門職の認知度は低かったです。
・言語聴覚士って何?
・PT?OT?ST?紛らわしいんだよ
・なんで資格手当もらってるの?
専門職の味方をしてくれる人なんてごくわずかでした。
そういう保育スタッフの人たちは仕事面、心理面で助けていただきました。その人たちには本当に感謝しかありません。
最近はというと・・・
専門職の意見を聞いてくれる人が少しずつ増えてきました。味方になってくれる人が増えてきたように感じます。
◆専門職の現状をもっと詳しく知りたい人ははこちらからもどうぞ↓
放課後等デイサービスでの言語聴覚士の役割とは?
言語聴覚士が放課後等デイサービスでやる仕事は決まっていません。
それこそ施設ごとに異なるはずです。
ここではわたしが実際に働いて感じている STの役割について書いていきます。
私が大切にしてきたこと
「STとして何を大切にしてきたの?」
退職が決まってから他の専門職に聞かれたことです。わたしが答えたのは次の3つでした。
高すぎる評価は子どもの不利益にしかならない
保育職の人たちは優しい人が多いです。
・「子どものために」
・「子どもに楽しんでもらいたい」
と日々、頑張っています。そんなふうに考えてくれるスタッフがいるのは、子どもにとっても施設にとっても大きなメリットです。
しかし、これはデメリットにもなりうるのです。
「本当はこの子は分かっている」
子どもを評価するときに、根拠もなく能力を高く見積もる人は意外と多いです。
一回「できた」から、その力は獲得しているはず。
そんなわけはない。
偶然かもしれない。
一度見ただけの様子で評価するのは危険です。
どんなときでも「できる」ようになってはじめてその力を手に入れたと言えるのです。
次に会ったときできなかったら?
・やる気がなかった。
・発達が後退した
と判断するのですか?それは子どもにとってあまりにも失礼です。
高い評価をしてしまうと、その子の能力以上のものを求めてしまいます。それは本人にとってつらいことです。
だから子どもへの高すぎる評価は好ましくないのです。
「自分で楽しめる」力をつけて欲しい
発達が初期段階の子はいろんなものに気づきにくいと言われています。
・自分の周りにある人やもの
・周囲で起こっていること
では、自分の周りに気がつかないとどうなるのでしょうか?
→ 感覚遊びや自傷行為など
・他者の存在に気づけない
→ 遊びに誘われても理解できない
などの一見「他人に興味がない」だけのワガママな子と評価されてしまうこともあります。
もちろんそれは正しくない評価です。
「自分の力で楽しめる」とは「物事の面白さに気づける」ということです。
物事の面白さのおおもとは人やものと関わることで起こる動きや変化のことです。
・物が見えなくなっても物の存在が消滅したわけではない
・玩具のスイッチを押したら音が鳴った
・人やものには名前がついている
・単語を理解できていれば、回りの人たちが話している内容を聞いて楽しめる
わたしたち大人が無意識的に理解できていることでも、障害がある子のなかにはそれが理解できない子もたくさんいます。
支援をする際に「子どもの視点で考えて」と言われるのはそのためです。
何も分からないまま生活するのはしんどいと思います。何かしら「楽しいな」と思えることがあれば生活にハリが生まれてきます。
それは生きていくうえで一筋の光となるのではないでしょうか。
「楽しめること」がひとつでも増えれば、卒後でも大人になってからでも使える自分を助ける大切な力となるのです。
食事で事故を起こさせない
当たり前だと思いますよね?実際にはできていない支援者は意外と多いのです。
事故が起こる要因は大きく分けて次の4点です。
① 食事の硬さなど(食形態)
② 介助のやり方(介助方法)
③ 子どもの持っている「食べる力」
④ 環境の問題
特に「介助方法」と「環境調整」は何となくやっているケースが多いのです。
・口に入れればなくなるので硬さなんて配慮しない
・子どもが「はやく食べさせて」と急かすから、そのペースで口にスプーンを入れている
・楽しい雰囲気で食べたいので食事中にTVもしくは音楽は必ずつけている。
上記の例は事故が起こる高リスク要因なのです!大人がちょっと気をつけれていれば防げる事故はたくさんあるのです!
放課後等デイサービスに言語聴覚士は必要だ
約10年働いてみて考えた結果は言語聴覚士は放課後等デイサービスで必要だということです。
メリット① 視点を提供できる職種
それは自分の専門分野を中心に様々な視点を保育スタッフに提供することができるからです。
「提供」というのは「教える」ではありませんよ。
「助言する」ということです。あくまで視点の提供もしくは提案です。
メリット② 安心を与えられる職種
もう一つのメリットが保育スタッフに「安心感」を与えられるということでうす。
保育スタッフはやることがたくさんあります。
・遊び
・コミュニケーション
・食事
・身体面、運動面
などなど。
特に「食事」は子どもの安全に関わってきます。誤った情報や古い情報が蔓延している領域です。食事の支援では「知っているかどうか」という知識が支援に直結します。それをフォローできるのが言語聴覚士なのです。
最低限の「安全」を提供していく。し続けていく。
これが大切。
その場に言語聴覚士がいるだけで保育スタッフの大きな安心感につながるのです。
これだけは間違えるな!
一転注意してほしいことがあります。
国家資格を取ったばかりの新人が間違えがちなのが専門職の方がいろいろ知っていて偉いと思いがちということです。
明らかな間違えです。
資格を持っていることは自身にもなりますし、向上心も高い人が多いです。しかし、それが変なプライドになってしまうことがあります。
いろんな職種と関わるうえで大切なのがどの職種が偉いか優劣をつけないということです。プライドは非常に役に立つものだけれど、ときに自分や他人を傷つける可能性があるのです。
専門職も無意識的にそんな雰囲気を醸し出している場合があります。たまに自分の言動を振り返ることが大切です。
頑張っていけば「味方」も「見方」も増えるんです!
まとめとして
頑張っていけば必ず「味方」も「見方」も増えるんです。
それが10年働いてみて気づいたことです。
「味方」とは保育スタッフだけではなくST以外の専門職も含みます。
「見方」とは保育スタッフだけではなくST自身の見方(視点)も含みます。
ST単体では「できること」が限られています。しかし、それで自信を無くしたり不安に感じることはありません。
大丈夫。言語聴覚士の資格で戦っていけます。
いや、「戦う」のではなく「共存」できるといった方が適切でしょうか。
子どもたちのために少しでも何かできることはないか?その視点を持ち続けてください。
わたしも次の職場は放課後等デイサービスです。
引き続きこのブログでは「言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?」かを考え続けていきます。みなさんの救いになるような情報を提供していきたいと思います。
よかったら今後も参考にしてみてくださいね。