言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

放課後等デイサービスで「リハビリ」が施設の特色となるのか?

放課後等デイサービスとリハビリの関係

あなたが働いている施設の「特色」は何ですか?

近年、様々なタイプの放課後等デイサービスが出てきました。種類も質も施設によってバラバラです。生き残るためには「特色」を押し出す必要があるからです。その中に「リハビリ」を前面にアピールしている施設もあります。

「リハビリ中心の施設です!」なんて聞くと「すごいなぁ」と思われるかもしれません。これが放課後等デイサービスではない施設であれば「あり」なのかもしれません。

しかし、放課後等デイサービスがリハビリを前面に押し出すのは上手くありません。なぜなら、放課後等デイサービスはリハビリ施設ではなく療育施設だからです。

リハビリや訓練を上手く活用するのは良いことだと思います。しかし、支援をリハビリ中心にしてしまうと「放課後等デイサービス」としての存在意義が薄れてしまいます。放課後等デイサービスで支援を行う中心となる職種は「支援員」だからです。リハビリ職ではありません。

 

今回の記事は、放課後等デイサービスで「リハビリを行っている」ことを施設の特色・アピールポイントにしてもよいのか?という話しです。

実際に わたしは放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)として10年以上働いてきました。リハビリ職としての自分の立ち位置をメインではなくサブとして考えた方が、施設としてうまくいくと感じています。

なぜ 放課後等デイサービスの施設の特色を「リハビリ」ではなく「支援員の活動」にした方がよいのか?という説明をします。

 

 

 

リハビリを行う職種

リハビリというのは「リハビリテーション」の略語です。小児の分野には主に3つのリハビリ職があります。

理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)

多く目にするのは この3職種です。もちろん、その他にもリハビリ職は存在します。

視能訓練士(CO)
音楽療法士(MT)

細分化が進んでおり、得意分野は職種によって違います。

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放課後等デイサービスとリハビリの関係

放課後等デイサービスには様々な職種の人が働いています。

放課後等デイサービスは2つに種類があります。

「一般 放デイ」と呼ばれる、発達障害やダウン症の子たちが通っている放課後等デイサービスと、「重心の放デイ」と呼ばれる、肢体不自由、重症心身障害児が通っている放課後等デイサービスに分けられます。

「重心の放デイ」には、機能訓練担当職員というリハビリ職がいることが必須なのです。リハビリ職というのがPT、OT、ST。名前の通り、リハビリや訓練などを行える職種です。

 

 

リハビリを前面に出したい放デイ

徐々に、全国的に放課後等デイサービスが増えています。そのため、他の施設との差別化が求められています。差別化とは、近隣の施設とここが違うよ!というアピールポイントです。

・うちには「お風呂」があるから入浴介助をしますよ

・調理活動をたくさんしますよ

・地域密着型で近隣の学童と連携していますよ

ここで微妙なのが「リハビリ職が在籍しているからリハビリを売りにしよう」というもの。なにが微妙なのかというと・・・

支援員のプライドはないのか?ということです。リハよりも自分たちの活動を前面に押していった方が、自分たちで頑張っている素敵な施設に見えるはずです。

まぁ、リハビリを前面に押しているのは施設のトップであるケースが多いのですが・・・。そういう人に限って「PTとOTの違いも よく分かっていない」ことが多い・・・。

 

 

本当は簡単にできないリハビリ

実はリハビリは「簡単にやってはいけない」ということをご存じでしょうか?PT、OT、STといったリハビリ職も、自分で勝手にリハビリを始めてはいけないのです。国が定めた法律で決められているのです。

【理学療法士及び作業療法士】

・「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。

・「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。

 

厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法」第一章 第二条

【言語聴覚士】

医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

 

厚生労働省「言語聴覚士法」第二章 第四十二条

どの職種も、医師の「指導」「指示」がないと訓練を行うことができないのです。放課後等デイサービスでPT、OT、STが行っている訓練的なことは、実はグレーな感じでやっている、というわけです。

医師からの「指導」「指示」をもらってリハビリを行っている施設は少ないはず。だから表立って「うちの施設ではPTがリハビリやってますよ!」と宣伝するのは意外と危険な行為なのです。

 

 

メインは支援職&保育職

リハビリ職が「自分にできることはないか?」と考えると、PT、OT、STの特色を活かそうとするはずです。

・筋力や可動域の個別訓練を増やそう

・言語訓練や構音訓練をやろう

でも、考えてみてください。あなたの施設で働いているのはPT、OT、STといったリハビリ職、専門職だけでしょうか?きっと違うはずです。保育士や指導員などの支援員の人もたくさんいるはずです。だとしたら、リハビリができない支援員たちはどうすればよいのでしょうか?

リハビリを覚えてもらえばいい?

マッサージ等を覚えてもらえれば、多少は子どもの身体も変わってくるかもしれません。しかし、放課後等デイサービスの施設職員の中心はあくまで支援員です。リハビリ職はサブもしくはフォローに回った方がうまくいきやすいのです。

 

 

小児の施設でリハビリ職が活躍するポイント

放課後等デイサービスはリハビリ施設ではありません。リハビリ目当てで施設に通いたいならば、常に医師がいる施設でリハビリを受けた方がよいです。予約が取りづらいという問題もありますが・・・。

施設側も勘違いしがちです。「リハビリをやっていることを前面に出そう!もっとPTを募集しなくては!」となってしまうのです。そうではなくて、発達に詳しい作業療法士(ОT)や心理職を雇って、もっと「発達面」特に「認知面」に注目した訓練や療育を行うべきなのです。

 

活動の中で輝くリハビリ職

リハビリというと、個別にマッサージや言語訓練を行うというふうに思う人が多いと思います。確かに個別訓練でリハビリ的なことを行うケースもあります。しかし、放課後等デイサービスでは活動を通して、それぞれの専門領域を活かす方に力を注いでいるセラピストが多いのです。それは、支援員が立案した活動にリハビリ職が助言を行って、活動に深みをつけるということです。

 

ex. 【支援員だけで進める場合】

①活動で「調理」をやろう
  ↓
②一斉に子どもと支援者が料理を進めよう
  ↓
③おかずごとに子どもを振り分けて最後までやってもらう
  ↓
④出来たら一緒に食べよう

ほとんどの放デイは、支援員が立案して、実行する、という流れが多いのではないでしょうか?

ex. 【支援員+リハビリ職で進める場合】

①活動で「調理」をやろう
 ↓
②作業療法士(OT)に 持ちやすい調理器具を選んでもらうおう
 ↓
③理学療法士(PT)に 調理しやすい姿勢を考えてもらう
 ↓
④言語聴覚士(ST)に 声かけの仕方、食べさせ方を考えてもらう
 ↓
⑤ひとつの おかずを最後まで作るのではなく、部分的に子どもにやってもらう
 ↓
⑥みんなで食べる

そこにリハビリ職が介入することで、別の角度から子どもをみることができる場合もあります。これが、放課後等デイサービスでの支援員とリハビリ職の共存なのではないでしょうか?

 

 

多職種連携の意味を考えよう

小児の分野は「多職種連携」「他職種連携」が大切だといわれています。

 

高齢者の分野との違いは、子どもを捉えるときに「発達」という考えを重要視することです。誤解を恐れずに言うと・・・子どもは高齢者よりも「未来」のことを視野に入れて支援を行うことが大切です。

・今後、どのように生きていくのか?
・「発達」をどのように扱えばよいのか?

様々な職種が、それぞれの視点で子どもの支援を行っていきます。ひとつの職種がワンマンプレーをしてしまっては、チームとしての支援が成り立ちません。複数の職種の中のひとつ、と考えて自分の立ち位置を考えていくことも欠かせないポイントです。

 

 

まとめとして

今回は、放課後等デイサービスの特色を「リハビリ」としてアピールしてもよいのか?うまくいくのか?という話しをしました。答えはNOです。上手くいかないことが多いです。理由は次の通り。

・放課後等デイサービスの職種は支援員が中心だから
・PT、OT、STは支援員と「一緒に考える」ことが大切
・リハビリを行うには医師の指導や指示が必要だから

リハビリ職は様々な知識や手技を持っています。稀に、自分の方が賢いと思っているPT、OT、STもいます。それは絶対に違います。支援員との間には上下関係はありません。共闘というか共存の関係があるのです。基本的にリハビリ職は出しゃばらず、縁の下の力持ちになった方が上手くいきます。

 

今回は、いち言語聴覚士として、私の考えを記事にしてみました。すべての言語聴覚士の意見ではないはずです。いろんな言語聴覚士がいます。うまく「共存」の道を探ってみてください。

よかったら参考にしてみてくださいね。

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