偏食があるのは障害児だけなのか?
最終更新:2021.01.14
限られたものしか食べられない子がいます。それ以外はすべて拒否。これでは栄養も偏ってしまいます。一般的に子どものわがままと捉えられがちです。しかし、原因を考えていくとそうでないことが分かります。障害があってもなくても起こりうる問題です。今回は偏食のはなしです。
偏食ってなに?
偏食(へんしょく)とは好き嫌いのことです。
広義では、特定のものしか食べられない状態をさします。
原因も様々です。大きく分けると下記のようなものがあります。
① 感覚特性によるもの
⇒ 触感、匂い、味など
② 認知特性によるもの
⇒ 食べ物と認識できない
いつもと同じものと認識できない
③ 経験によるもの
⇒ 過去に食べて嫌な思いをしたもの
食べたことがないもの
④ 不適切な食事
⇒ 離乳食の頃、食べる力に合わない硬さや大きさのものを出されたことによるもの
好きなものした食べない(食べられない)=わがまま、と捉えられがちです。しかし、実際には生理的に食べられない状態であることが多いのです。
どんなものが苦手なの?
苦手なものは子どもによって様々です。発達障害だから全員、白飯が苦手とも言い切れません。子どもの感覚や認知によってバラバラです。
上の表を見ても分かるように、特定の食材が嫌われているわけではなさそうです。
・感覚の過敏さ
⇒ サクサクした触感が嫌
⇒ 匂いがダメ
・見た目
⇒ 白いものが食べられないなど
・大きさ
⇒ 大きすぎてダメ
・温度
⇒ 熱すぎてダメ
・認識できるか
⇒形が変わると同じものと認識できない
ex.好きな肉を切ったら怒って食べなくなった
対応はどうするの?
まずは本人が「食べたい」と思えるものを確実に食べられるようにすることから始めていきます。
偏食が極端すぎて食べられるものが少ない子もいます。そういう場合は、お菓子だったとしても構いません。食事が嫌いな子でも、お菓子が好きな子は多いです。それは、お菓子の味がとても分かりやすく、はっきりとしていて、しかも味は濃いからだと思います。
小食傾向が強くて、一度に多くの量を食べない場合は、食事の回数を増やしても構いませんが、いつも(だいたい)決まった時間になるようにして、それ以外の時間には子どもが暴れようが怒ろうが与えないようにします。そうして、食べることが「美味しい」「嬉しい」「満腹で満足」という感覚が得られる経験を積んでいきます。
その他には、タイマーを使って「時間を決めて食べる支援」や「環境を整えてあげる支援」が考えられます。周囲がうるさ過ぎないか、人の出入りが多くないか等「しっかり食事が出来る環境か」を考えて場所・場面を設定することも大切です。
子どもが「食べられない」原因を探って、その子に合った対応が求められます。
宿泊のときの支援は?
先日、子どもたちと一緒に宿泊へ行ってきました。宿泊では、食事は大きな割合を占めます。しかも、時間に追われることが多くなると思います。偏食の強い子に対しての支援は、「頑張って!」という声かけのみか、「じゃあ、食べなくていい!」と(支援者が)怒っておしまい、という状態におちいりがちです。 これでは、その場限りの、感情にまかせた対処法(?)になってしまいます。では、支援としてどのようなものが考えられるのでしょうか?
① 頑張って食べるように促す
② 確実に食べられるものを用意する
③ 半分くらい確実に食べられるものを用意する
私は、宿泊に関しては、②か③でよいのではないかと考えています。
そこで、いつもとは違う雰囲気の中、普段は食べられないものを一口でも食べる経験ができればよいのではないでしょうか。
支援者が促さなくても、意外と普段食べられないものをたべてしまうこともあります。 いつもと違う場所で過ごすことも、かなり大きなストレスになる子もいます。食事で「嫌な思い」をしてしまうと、他で頑張って乗り越えられたことも台無しにしてしまう可能性もあります。
施設によって考え方も様々です。
日々、頑張っている子どもに、宿泊ではどこまでやってもらうのか?
宿泊とういう行事では、イベントの進行や問題行動への対応にばかり目が向きがちです。食事の支援にも「準備」は必要です。支援を統一してから、宿泊に臨んでいきたいです。
参考資料
◆自閉症児の食嗜好の実態と偏食への対応に関する調査研究
立山清美・宮嶋愛弓・清水寿代
https://www.urakamizaidan.or.jp/research/jisseki/2010/vol20urakamif-16tateyama.pdf