なぜ早期療育・早期支援が大切なのか?
早いうちから養育や支援を開始した方がよいといわれています。障害がある子の「発達」は遅れがちです。それを後押ししてあげられる可能性があるからです。伸びるチャンスを潰さない。今回は「知的発達と食べる機能の発達は早くから支援ができるといいよね」というはなしです。
障害はどうやって見つかるの?
染色体の異常であれば、検査によって(ある程度の精度ですが)生まれる前に分かります。では、発達障害はどうでしょうか?
例えば、自閉症。この障害は遺伝子や血液の検査で診断することができません。そのため、
・発達検査や知能検査
⇒ 発達的な偏りを調べる
・関係者からの聞き取り
⇒ 子どもの普段の様子など
などを行って医師が総合的に判断していきます。
その他には
・定期的な検診
⇒ 1歳半検診や3歳児検診など
・保育園の先生
⇒ 園での子どもの様子を見て
などで発見につながるケースもあります。
療育や支援へのつなげ方
染色体の異常などで身体的な疾患があれば、病院で医療とつながることができます。その後の療育や支援についても病院で相談できます。
検診で障害の傾向がみられた場合には、発達相談などを受けることができます。この検診も100%の精度はありません。そのため「要観察」であったとしても結果的に障害はなかったというケースはあります。たとえ障害がない子が療育を受けたとしてもそれ自体が害になることはありません。
早期ってどのくらいから始めるの?
超長期療育 0歳
早期療育 3歳
施設にもよりますが3歳前後から通えるところが多いです。一般的に子どもは3歳くらいから社会性が育ってきます。その頃に診断されることが多いからです。
なかには0歳から対応してもらえるところもあります。医師と相談しながら進めていくケースが多いです。
・先天性の障害
⇒ 脳性麻痺やダウン症のように生まれたときには障害が分かっている子。医療とつなげたり発達を促したりするため
・難聴がある子
⇒ 言語獲得を視野に入れるため
は超早期療育を行うケースもあります。最近では2歳前から自閉症の子も早期に始めるケースが出てきているようです。
早期療育・早期支援を受けるメリット
・子どものことをより理解できる
⇒ 確かに子どものことは親御さんが一番よく分かっていると思います。しかし、子どもが「今がどんな状態なのか?」を知るためには、医師や専門家などの医療や障害のプロに力を借りてもよいのです。
・仲間ができる
⇒ 療育や支援の場に行くと、同じ障害を持つ子やその家族がいます。家族だけでどうにかしようとすると孤立無援の状態になりやすいです。先輩や仲間ができるというのは心強いはずです。
障害者支援法でも、障害の早期発見、早期支援の重要性を強調しています。
発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うとともに、切れ目なく発達障害者の支援を行うことが特に重要である
発達障害者支援法 第1条
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa6591&dataType=0&pageNo=1
療育や支援の種類
療育や支援と言っても、何に対して行うかが大切です。ここでは「知的発達」と「食べる力の発達」についておはなしします。
発達面
発達が進めば「分かること」が増えていきます。
「分かること」が増えれば、自分の周りで何が起こっているのかを把握できるようになります。
・目の前にあるものが何なのか分かる
・道具を見ただけで使い方が分かる
・他者の行動の意図が分かる
「分かること」が増えると安心して過ごすことができます。安心できれば、情緒も安定します。この状態は気持ちに余裕があるということです。発達が進んでいくために欠せない状態です。
知的な遅れや様々な疾患があることで
・視力には問題ないが見ても理解できない
・人から何かやらされるのが難しい
・過敏が強すぎて外からの情報を遮断してしまう
というなんだか分からないという状態になってしまいます。
周囲からの情報がうまく入ってこないと「いま何をすればいいのか」が分かりません。自分がするべきことが分からないと、
・一か所にじっとしていられない
・1日中、自傷を繰り返す
・混乱して暴れる
などの問題行動と呼ばれるような症状が強く出てしまうこともあります。
食事面
見落とされがちなのが食事の早期支援です。
明らかに母乳を飲むのが苦手なケースは医療とつながることがあるかと思います。しかし、家で食事をしている子の中には“食べられている子”というのが存在します。
食べられているとは?
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家での食事では、栄養を取ることに重きが置かれると思います。そのため、食べ方が上手くなくても食物が喉の奥へ入っていくのであれば「問題なし」とされるケースがあります。
確かに、その食べ方でも今は問題がないかもしれません。しかし、明らかにおかしな食べ方を続けていくと
・悪癖となる
・いずれ上手く食べられなくなる
可能性が出てきます。
・成長して身体が大きくなったとき
・筋力が衰えたとき
・機能が低下したとき
などのときに上手く食べられなくなります。
全員ではありませんが、一度、喉の詰まらせるとその後食べる力が落ちてしまう子もいます。
そうならないためにも、前もって準備をしていくことが必要なのです。この準備というのは子ども自身のためであり、支援者のためのものでもあります。
この「前もった準備」が食事の早期支援なのです。
早期療育・早期支援を受けないとどうなるの?
現に、就学や思春期までに療育を受けてこなかった子は、
・発達には伸びる時期がある
⇒発達段階に合った働きかけができないので子どもが伸びるチャンスを潰すことがある
・二次障害
⇒「出来ない自分」をせめて鬱などの2次障害を引き起こす危険性がある
まとめとして
早期療育・早期支援とは障害を治すものではありません。子どもが抱えている、もしくは今後抱えるであろう生きづらさを少しでも軽くしていこう、というものなのです。療育を学ぶことで、子ども自身が生きていくための武器を手に入れる。というイメージです。
療育とは丁寧な子育てです。障害のない子と同じ育て方だけでは充分とは言えない場合があります。
すぐに効果が出ないと焦るかもしれません。しかし、どんな子どもであっても育つ力を持っています。例えそれがゆっくりだとしても信じてあげることが大切なのだと思います。
参考資料
◆発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システムに関する研究
独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-67/c-67_all.pdf
◆日本の特別支援教育の状況について
文部科学省
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/09/__icsFiles/afieldfile/2019/09/24/1421554_3_1.pdf
◆諸外国における発達障害等の早期発見・早期支援の取り組み
-米国、英国、フィンランドを中心に-
棟方哲弥・海津亜希子・玉木宗久・齊藤由美子https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-37/a-37_01_2.pdf
◆障害者支援法
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa6591&dataType=0&pageNo=1
◆ダウン症候群児における早期通園療育の効果(その2)
発達検査結果からみた超早期療育効果について
岸千代子,鈴木宏子,岸本美紀,峯島紀子
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2008/006705/010/0773-0779.pdf