資格を取ってからの方が覚えることが多い?
小児通所施設では、意外と摂食嚥下の相談が多いです。 しかし、STが養成校で習うのは9割方「成人の摂食嚥下」についてです。
国家資格を取ってから、さらにセミナーに参加したり、自分で勉強していかないと何もできない人になってしまします。 施設のスタッフも独自のやり方で食事介助や食事の提供を行っています。
長年それでやってきているので、パッと出のSTとかいう人が口を出すのを快く思わない方もいます。こちらは相手を全面的に否定せずに、正しい情報を伝えていく必要があると思います。
もちろん1回ではすべてが伝わるはずもないので、少しずつ真摯な態度で伝えていくと必ず味方になってくれる人が現れます。味方を増やして、よりよいやり方を浸透させることが、子どもにとっても安全で楽しい食事につながるのではないかと感じています。
放課後等デイサービスでの食事作り
私の働いている小児通所施設では、子どもたちと一緒に食事を作る日が週に一度あります。
スタッフでメニューを考えて、子どもと一緒に調理をして、みんなで一緒に食べるという活動です。
スタッフから「子どもに合ったメニュー」の相談をされることがあります。食形態や姿勢等の観点から“食べやすいもの”と“食べにくいもの”を助言することはできるけれど、ピンポイントで食事のメニューを提示するのは・・・むずかしい。私自身の夕飯のメニューも適当なのに。
子どもの好きなメニューを決めて、食形態ごとに大まかに加工の仕方を考えて、それぞれの子どもごとに調整をしています。
同じものを食べさせてあげたいけれど
施設で食事を作る際、必ずと言っていいほど意見が分かれるものがあります。それが
・「子どもには、普通食に近いものを食べさせてあげたい」
・「子どもの食べる力に合った物を食べてもらいたい」
の2つの意見です。親御さんやスタッフは、普通に近い形態のものを食べさせてあげたい。実際に子どもの様子をみると中期食くらいが妥当だったり。気持ちは分かるのですが、安全面や今後のことを考えると、いまは食形態を整えないといけないケースもあります。
反感を買わないように提案する
そこで歯科医やSTが、現在の子どもの食べる力を明確にしていき、今後の発達も視野に入れて提供する際の食形態を提示していくことが大切です。
頭ごなしに「違うよ」「今のじゃダメだよ」と言っても、親やスタッフから反感を買ってしまいます。
まずは
・極刻みにしない
・一口量は子どもに合っているか
・食べる時の姿勢
・環境
から伝えていくとよいです。
子どもの現状に合わせた食事を
最近では、食形態は「細かさ」よりも「硬さ」に重点を置いて考えられるようになってきました。硬いものを刻んだだけでは食べやすくなりません。
また、食事介助の際、一口量を支援者が調整します。時間短縮のために大きなカレースプーンばかり使うのは支援として正しくはありません。姿勢も、子どもによって変わるのですが、のけ反ったり、ぐらぐらしたような姿勢だったりしないように支援者が調節します。
保育スタッフは、経験の中で「この子は今までこのくらいなら食べられる」「こういう状況・気持ちの時はよく食べる」ということが分かっている人もいます。子どもとの関係性をフル活用して上手に食事介助をしている人もいます。そのことも、忘れないように助言を行います。
食事も療育も、今までの「当たり前」が急に「間違い」になってしまう世界です。日々の情報収集、勉強は大切です。
STとして摂食嚥下分野で関わるのは、機能の評価や訓練、食形態の再考、環境調整がほとんどだと思います。しかし、実際に周りから求められるのは、メニューなど栄養士の分野や、直接訓練や診断等の歯科医師分野だったり・・・。もちろん自分の職域はわきまえているつもりですが。
今一番ほしい資格・・・歯科の医師免許。栄養士も。STの資格だけでは、ことばの重みが違ってきます。
2014年11月30日投稿
2019年12月12日改訂
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