食事介助ってなに?
「食事介助」と聞いてどんな風景を思い浮かべますか?
老人ホームなどで対象者の隣に座ってスプーンを口に運んであげる
そんなイメージではないでしょうか?
食事介助が必要な人というのは、うまく食べることができず困っている状態であることが多いです。
困った感じは人によって異なります。
特に子どもは個人差が大きいです。
わたしも言語聴覚士(ST)として長年、障害児施設で働いています。
そこで様々な子たちと関わってきました。
今回、「食事介助」とはどのようなものなのか?
「食べる」とはどんなことなのか?
を改めて説明しつつ、ポイントをまとめてみました。
食事介助が必要な子とは
どんな子が食事介助を必要とするのでしょうか?
基本的に障害が重いほど食事介助が必要となるケースが多くなります。
・肢体不自由で手や口がうまく動かせない子
・手は動かせるけれど自分では食べようとしない子
・食べる練習中の子
などが介助を受けて食事をとっています。
食べるって何?
私たちは、毎日、あたりまえのように食事をしています。
自分が食事をするときは、無意識的に食べています。
「食べる」ってなに?
そう聞かれても困ってしまうのではないでしょうか?
「食べる」とは食物が口から入って胃まで行く一連の流れを指します。
「摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)」とよばれることもあります。
上手く食べられないとは?
「うまく」食べられないというのは
・ムセやすい
・口から食物がこぼれる
・食べない
などの問題を指します。
「食事介助」と言われてもピンとこない
わたしたちは普段から無意識的に食事をしています。
そのため「食事介助」といわれてもピンとこないのです。
だから介助をするときでも
子どもへの食事介助をするときでも支援者自身が食べる時と同じスピードや量などで介助を行ってしまいがちです。
「私(支援者)も食べられているし、この子も大体のものは食べられるのではないか」と思いながら食事介助をする。
↓
子どもがムセる。
↓
もう一度、食べてもらう。
↓
またムセる。
↓
食事介助をすることに苦手意識が出てきて嫌になる。
↓
でも、やらないわけにはいかないから緊張しながら食事介助を行う。
↓
子どもにも緊張が伝わり、またムセる・・・。
といった悪循環になることもあります。
嫌にならないまでも、食事介助中に子どもが食べ物を喉にひっかけたり、ムセ込んだりしてしまう。
そこで「危ないな」と感じた経験はないでしょうか?
「食べる」メカニズム
「食べること」を細かくみていくと・・・ ・
目の前にある食べ物を認知して、それをスプーンですくって口まで運びます。
口を閉じて、舌で食物を歯の上に運んで、噛んだり潰したりして食塊をつくります。
それを飲み込むという流れが「食べること」です。
その流れを次の7つで表すことができます。
① 口を閉じる
まずは口を閉じる(口唇閉鎖)。
そうすることで食物がこぼれないようにします。
口をしっかりと閉じると、圧の関係で嚥下しやすくなるのです。
(口腔内が陰圧になるため、喉の奥へ送りやすくなります)
だから、口を閉じて食べることは食事の大原則!
② 舌で食物を喉の奥へ送る
口に入れた食物を舌を使って潰したり、歯の上まで運んだりします。
食物をかたまりにしてから喉の奥へと送り込みます。
そうすることでムセたり詰まったりすることを防いでいるのです。
(舌による咽頭への送り込み)
③ 鼻に入らないようにする
口と鼻はつながっていますから、食物が逆流しないように口と鼻の間を閉じます。
(鼻咽腔閉鎖)
牛乳やウドンが鼻から出てきた、そんな経験がある人もいるのではいでしょうか?
あれは苦しいですよね。
④ 気管の入り口に蓋をする
喉の奥から管が「気道」と「食道」に分かれます。
食物が「気道」に入り込まないように蓋をします。(喉頭口閉鎖)
これは反射的に行われます。
力を入れれば閉じるわけではないのです。
この反射が起きずに蓋が閉まらず誤嚥をしてしまう、なんて子もいます。
⑤ 声門を閉じる
先程閉じた蓋のさらに奥に声門があります。
声門とは声を出すために震えている門のことです。
声門の先には肺があります。
声門を閉じることで誤嚥を防ぐのです(声門閉鎖)。
⑥ 食物が通りやすいようにする
食物が通りやすくするために食道を広げます。
これも意識的に広がるわけではありません。
食物をゴックンするときに喉頭(喉仏)が上に挙がります。
それに連動して喉の奥が広がるのです。
(喉頭挙上による下咽頭拡大)。
⑦ 食道の入りぶち部分が広がる
食物は胃に向かってドンドン下に進んで行きます。
普段は閉じている食道の入り口が開くことで食物が通りやすくなるのです。
(食道入口部開大)
これも意識的に入り口部分を広げることはできません。
以上の流れで食べ物は胃へと進んでいきます。
まとめとして
障害を持った子どもは、この流れのどこかに苦手な部分があります。
そのため、上手に食べられないことが多いのです。
苦手な部分は子どもや障害によってバラバラです。
生まれつき口の内外のかたちが、わたしたちと違っている子もいます。
食べる経験が不足しているために上手く食べられない子もいます。
間違った食べ方が身についてしまっている子もいます。
食事介助とはその子が持っている「苦手さ」をカバーしてあげることなのです。
何となく介助したり、どの子に対しても同じ介助をしたりするというのは危険なことなのです。
よかったら参考にしてみてくださいね。
次の記事を読む
⇒次は「ムセ」についてです。
2017年2月2日投稿