言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

感覚遊びと発達支援。放デイでの遊び&活動って何をやってるの?【例あり】

放課後等デイサービスの活動の中身

 

放課後等デイサービスでは、毎日、様々な活動や遊びを行っています。一見、ただ遊んでいるだけのように思われがちです。しかし、活動や遊びにも目的もあるのです。

「感覚を育てる」「身体を動かす」「人と関わる」といった発達の土台づくりも大切にしています。子どもの発達段階や興味に合わせて、さまざまな遊びや活動が取り入れられています。

今回は、放課後等デイサービスで行っている、「感じる」「楽しむ」「つながる」ための遊びの例を紹介します。

 

 

 

 

感覚遊びが重症心身障害児に向いている理由

赤ちゃんは、自分の指を口に入れたり、ゴロゴロと身体を動かすことで、これからの発達の準備を行っています。
ex.
・運動発達を促したり
・周囲にある様々なものを理解したり

肢体不自由や重症心身障害の子どもたちは、身体の動きが制限されていて、思い通り動けなかったり、興味が外の世界に向きにくかったりするケースが多いのです。

感覚遊びを行うことで、自分の身体や周囲のものや人に注意が向きやすくなっていきます。だから、発達が初期段階の子が多い重症心身障害児にとって、感覚遊びは大切だと言われているのです。

 

「感覚遊び」が「認知発達」の育ちに貢献する

、私たちの脳が“感覚の情報”を土台にして、物事を理解したり考えたりする仕組みになっているからです。

 

 感覚は「脳の栄養」になる

人は、生まれてからまず「見る・聞く・さわる・におう・味わう・動く」など、五感や身体を通じて世界を感じ取ります。これらの感覚情報が、脳にどんどん送られて、脳の中で「これはあったかい」「これは動く」「これは音が鳴る」などの経験として積み重なっていきます。

つまり、感覚の経験=脳へのインプット。
このインプットが多ければ多いほど、脳のネットワークが発達し、「見る力」「聞く力」「注意を向ける力」「記憶する力」「理解する力」など、認知の土台が育っていきます。

 

感覚遊びで育つ認知の力

感覚遊びでは、次のような認知的な力が自然と育ちます:

 

感覚遊びの体験 育つ認知の力
ぐにゃぐにゃのスライムをさわる 「形」「状態」の理解、探究心
音が鳴るおもちゃを鳴らす 因果関係の理解(=押すと音が鳴る)
光を目で追う 注意を向ける力、視覚認知
トランポリンで跳ねる 空間認知、バランス感覚
色水遊びで色を混ぜる 色の識別、予測する力

遊びの目的は、子どもによって異なります。「どんな力を伸ばしていけるか?」それが大切。

 

 

感覚遊びは「自分と世界のつながり」をつくる

繰り返しになりますが、感覚遊びのメリットは、遊びを通して「自分の身体」や「まわりの世界」との関係に気づけるようになることです。たとえば――

 

ex.

・「手でさわると、冷たいと感じる」
・「ジャンプすると、身体がふわっと浮く」
・「音に合わせて、みんなと一緒に動ける」

こうした体験は、自分の存在に気づき、「他者」や「環境」とのやりとりを理解する力につながっていきます。
これが、人との関係性=社会性やコミュニケーションの土台を育てます。

 

 

感覚遊びは、認知発達の“はじまりの一歩”

・感覚遊びは、脳にとっての「栄養」であり、考える力の土台をつくります。
・感覚を通して、「わかる」「伝わる」「楽しい」が育まれます。
・感覚を使った体験が豊かだと、ことば・学び・社会性にもよい影響を与えます。

「ことば」や「学び」がなかなか伸びにくい子にとっても、感覚遊びは無理のない自然な入り口になります。だからこそ、放課後等デイサービスでは感覚遊びが大切にされているのです。

 

 

活動・遊びのアイデア

「見る」「さわる」「聞く」「動く」など、五感をたっぷり使った遊びは、子どもたちの世界を広げ、ことばやコミュニケーションの芽を育てるきっかけにもなります。

 

感触あそび

手でさわって「気持ちいい」「冷たい」「ぐにゃぐにゃ」など、感触を楽しむ遊びです。
粘土やスライムなど、素材の違いによって感じ方もさまざまです。

・スライム、小麦粉粘土、片栗粉粘土
・春雨、マカロニ遊び
・泥遊び、センサリーマット

 

光あそび

視線を向ける、目で追う、見上げるなど「見る力」を引き出す遊びです。静かに見つめるだけでも、子どもにとっては豊かな体験になります。

・イルミネーション、映像あそび
・懐中電灯で光を追う・探す
・床に映像を映して触る
・おうち遊園地

※「おうち遊園地」とは、室内で映像を見ながらジェットコースターに乗った感じを味わう遊びです。人工的に風邪を浴びると効果的です。

 

風あそび

風を「感じる」「動かす」体験も、身体と感覚をつなぐ大切な遊びです。

・扇風機やうちわの風を浴びる
・風船バレー
・風船をつなげて回す
・水面に風を送って変化を楽しむ

 

水あそび

水は五感を刺激する万能アイテム。冷たさや重さ、動きを感じることで、感覚の広がりにつながります。

・足湯・手湯
・氷であそぶ(形や音も楽しめます)
・色水あそび、水を容器に移す
・水を使った楽器づくり

※空き缶を上下に重ねて、中に入れた水を移動させて音を鳴らす楽器など

 

揺れあそび

身体がふわっと浮く、くるっと回る――そんな動きは、平衡感覚や身体の軸づくりに役立ちます。

・シーツブランコ、トランポリン
ソリあそび(滑る・回る)
・ビリボ(不安定な乗り物)
・抱っこで揺れる、「バスにのって♪」

 

楽器あそび

音の変化に気づく・真似する・聞き分ける。音あそびは、注意や模倣力、感情の共有にもつながります。

・音を鳴らす、真似て出す
・音の有無・方向・種類に気づく
・音に合わせて身体を動かす(リトミック)

 

身体接触あそび

手や足、顔まわりへのやさしい刺激は、安心感や身体認識を高めます。

・マッサージ(脱感作の目的にも)
・くすぐり遊び
・温かいお湯を袋に入れて身体にのせる

 

楽しむあそび

「できた」「楽しい」と感じる経験は、子どもの自信を育てます。ルールがシンプルで、わかりやすいことがポイントです。

 

ゲームあそび

ルールのある遊びです。できるだけシンプルなものを選びたいです。

・ボーリング
・巨大ジェンガ 

→シンプルな動作で「倒す」「積む」など結果が見えるものが人気です。

ジェンガ ジャンボジェンガ

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知育おもちゃ

いろんな知育玩具がたくさん出ています。使い方次第です!ポイントは大人が「遊ばせ方」を欲張らないこと、です。

・ビーズコースター
・くるくるチャイム 

⇒「ここまで行ったら終わり」がわかるおもちゃが安心です。
※見た目がオシャレでも、操作が難しいおもちゃは避けたほうがよいこともあります。

 

電子玩具

電気で動く玩具もたくさん出ています。光って、音が出て、震えて・・・と、複雑なものは避けたいです。

音や光に反応するスイッチ

→「声を出すと光る」「押すと音が鳴る」など、因果関係を感じる遊びは人気です。
→ コミュニケーション支援にもつながります。

 

外あそび・自然とのふれあい

外に出ると、部屋のなかとは違った遊び方ができます。

 

公園での活動

みんな大好き、公園&広場。「遊んでおいで」ではなく、様々な遊びをフォローしてあげましょう。

・散歩、遊具あそび
・石や木の実ひろい、押し花づくり
・パラバルーン、段ボールすべり台

 

ベランダあそび

庭やベランダがあれば、ちょっとした時間で楽しむことができるはず。

・シャボン玉
・足湯

 

園芸活動

庭や土地があれば園芸活動だってできます。都心の施設にはない、田舎の施設のメリット。

・種まき、収穫、柵づくり

→ 土にふれたり、季節を感じたり、五感に働きかける活動です。

 

 

活動を決めるときのポイント

子どもの発達段階に合わせて選ぶことが大切
→ 同じ活動でも、目的やレベルを変えることで、一人ひとりにフィットさせることができます。

完成よりも「経験」や「やりとり」を大切に
→ 工作も、完成を目指さなくて大丈夫。子どもが関わろうとした時点で、十分な活動になります。

複雑なルールよりも、シンプルで「わかりやすい」ものを選ぼう
→ 遊びを通して、「できた」「伝わった」「たのしい」が感じられるように工夫しています。

 

 

まとめとして

すべての発達の土台は「感じる」「楽しむ」ことが大前提となります。楽しいから期待したり、覚えていたり、興味が拡がったりするんです。感覚遊びは、それらのお手伝いをしてくれる、優秀な活動となりうるのです。

ことば だって同じです。言語聴覚士は、そんな感覚あそびや遊びの中から、ことばの芽を探し、そっと育てるお手伝いをしています。日々の活動の中で、「あ、伝わった」「通じた」という経験が、子どもたちの大きな一歩につながります。

発語があってもなくても、その子なりの「伝えたい」が引き出せるように――。放課後等デイサービスでは、そんな想いを込めて、遊びや活動が工夫されています。

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