言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

重心の放課後等デイサービスの活動とは?現場STが語る本当のところ

重症心身障害児(重心)の放デイはどんな場所なのか?

「重心(じゅうしん)」という言葉を聞いたことはありますか?

重症心身障害児とは、
重度の肢体不自由と重度の知的障害をあわせ持つ子どもたちのことを指します。

 

・歩くことが難しい
・ことばでのやりとりが難しい
・医療的ケアが必要なこともある

 

放課後等デイサービス(放デイ)の中でも、重心を対象にしている施設は決して多くありません。

わたしは言語聴覚士として、10年以上重心の放デイで働いてきました。今回は、その現場で感じてきたことを書きます。

 

ポイント!

・どのような活動をするのか?
・一般の放デイとの違いは?
・実際に働いて思うことは?


これから重心施設で働きたい人、興味がある人、現在、勤務しているけれど振り返ってみたい人に読んでいただければ嬉しいです。

その前に・・・実際に言語聴覚士が重症心身障害児と、どのように関わるのかについては、こちらの記事も参考になります。

 

 

重心の放デイは「ゆっくり」進む

一般の放デイと、重心の放デイ。一番の違いは何か?それは「時間の流れ」です。

重心の現場では、

・車いす移動に時間がかかる
・オムツ交換に時間がかかる
・送迎準備にも時間がかかる

外出ひとつとっても、大仕事です。気づけば「もうこんな時間?」という日も珍しくありません。だからこそ、活動の質が問われます。

 

 

派手な活動=良い支援、ではない

ホームページやSNSでは、
「イベント開催!」
「にぎやかなレク!」
といった謳い文句(うたいもんく)が並びます。しかし、重心の子どもたちにとって本当に大事なのは、

 

✔ 分かること
✔ 安心できること
✔ 繰り返せること

なのです。

 

テンションの高さで場を回しても、子どもが理解していなければ、それは「参加」ではありません。
支援は、パフォーマンスではありません。スタッフがどんなに派手な活動を用意したとしても、それを受ける重心の子はたちが“理解”しなければが意味がないのです。これはとても大切なこと。

 

 

重心の活動で大切にしていること

重症心身障害児の施設で行う活動は、発達に合ったものを提供することが大切です。発達に「合った」というのは、「理解できる」ことを活動に組み込もう、ということです。
ポイントをまとめてみました。

 

① 感覚を丁寧に届ける

重心の子どもたちは、刺激が届きにくいことがあります。

 

ex.

・声をかけても反応が薄い
・周囲に注意が向きにくい
・自己刺激行為が続く

 

だからこそ、「光」「音」「触覚」―――ひとつずつ、ゆっくり届けます。「分かったかどうか」を探しながら。

発達が初期段階の子のなかには、同時に複数の感覚刺激を受け取ることができないこともあります。

 

◆ 音がすれば動きが止まる
⇒ 耳を使うことに集中している

◆ ものを取ろうとして視線が逸れる
⇒ 手と目を一緒に使うことは難しいこと! 


なぜ、こういうやり方をするのかな?と考えながら観察をしてみてください

 

 

② 「できるはず」と思い込みすぎない

支援者あるあるです。
「この子、分かってるよね?」
「もうできるよね?」
その思い込みが、混乱を生むことがあります。

 

ex.

楽器遊びのときに、「あそこにある太鼓のバチを掴んでごらん」「ほら、もっと強く叩いてごらん」と声かけだけで指示を出した。しかし、子どもは起こり出して自分の頭を叩いてしまった。

 

ことばの理解が難しい子に、矢継ぎ早に指示を出してしまう。結果、混乱して泣いたり、自己刺激が強くなったりする。

“できるはず”よりも、“今、分かっていることは何か”。

ここを冷静に見ることが、支援の土台です。

 

 

③ 繰り返すことを怖がらない

同じ遊び。
同じ音。
同じ流れ。

「またこれ?」と思うかもしれません。しかし、繰り返すことで「次はこうなる」という予測が生まれます。

予測は安心になります。安心があるから、参加できる。重心の支援では、この積み重ねが何より大事です。

 

ex. 球落とし

スタッフと一緒に持ったボールを缶に入れる遊び。ボールが落ちると「ガン」という音がする。何度も繰り返すうちに、ボールを持つのを嫌がらなくなったり、ボールが落ちたときの音を待ったりするようになってきた。

 

 

 

活動内容の例

では、重心施設では、どのような活動をやっているのでしょうか?

 

感覚遊び

自分以外のものに気づくための遊びとして、一番やりやすいのが「感覚遊び」です。次のような遊びがあります。

・光あそび
・風あそび
・水あそび
・土遊び
・揺れあそび
・楽器あそび
・身体接触あそび
・感触遊び

 

 

その他の遊び

感覚を刺激することを目的とした遊び以外にも、次のようなものがあります。

 

ex.

・スイッチあそび
・散歩
・石や木の実ひろい、押し花づくり
・パラバルーン、段ボールすべり台
・シャボン玉
・足湯
・園芸活動
・種まき、収穫、柵づくり


詳しくはこちらの記事もご覧ください
https://www.hana-mode.com/entry/asbex

 

 

重心の放デイは楽な仕事か?

よく聞かれます。
答えは、楽ではありません。

体力も使います。
神経も使います。
そして何より、目に見える成果が分かりにくい。

しかし、普段から子どものことを見ているうちに・・・

 

・小さな視線の変化
・わずかな筋緊張の変化
・ほんの一瞬の笑顔


それを見逃さない目が育ちます。支援者としての「観察力」は、確実に磨かれるのです。

 

www.hana-mode.com

 

 

良い重心施設の見分け方

これから働きたい人へ。

見るべきポイントはシンプルです。

✔ 子どもをよく見ているか
✔ 同じ活動を大事にしているか
✔ 「盛り上がった」ではなく「気づいた」が話題に出るか


活動は、上司へのアピールの場ではありません。
子どもが「次」に気づくための時間です。

 


私が大切にしていること

わたしは「できることを増やす」だけを目標にはしていません。
それよりも、子どもが「楽しい」と気づく瞬間を増やしたいと考えています。

重心の子どもたちは、医療的なリスクも抱えています。
長い未来を保証できるわけではありません。

訓練だけやっておけばよいのではありません。放デイは訓練だけを目的にする場所ではないのです。

 

だからこそ、
今、この時間をどう過ごすか。
そこに本気で向き合いたいと思っています。ひとつでも多く「楽しい」と感じてもらえる瞬間をつくりたいのです。 

 


難しく考えすぎないで

重症心身障害児の放課後等デイサービスで大切なのは、

・発達を知ること
・子どもに合った刺激を届けること
・繰り返しを大切にすること



派手さではなく、誠実さ。重心の現場は、支援者の姿勢がそのまま子どもに返ってくる場所です。

これから働く人も、今、働いている人も。
一度立ち止まって、「この活動は、子どもに届いているか?」
じゃあ、わたしたち支援者はどうすればいいのでしょうか?

 

・・・・少しだけ“本音”を。

・焦らなくていい
・派手でなくていい
・あなたが静かに観察していること、それ自体が支援

難しく考えなくてよいのです。それだけで、あなたの支援は変わってきます。

 

 

 

まとめとして

今回は、重症心身障害児が通う放課後等デイサービスで何ができるのか?長年、発達をみてきた言語聴覚士のわたしの現時点での考えをお話ししました。

・子どもの発達を知ろうとすること
・気づきを促すことの大切さ
・派手な活動だけがよい活動ではない


これらを頭の片隅に置いていただければ、支援中の、ふとした瞬間に「こうしてみようかな?」という考えがよぎるかもしれません。
活動は、上司へのアピールの場ではありません。子どもが楽しみながら「次」に気づくための大切な場所なのではないでしょうか?
よかったら参考にしてみてくださいね。