障害のある子どもをどう理解するか?
支援を行う上で、「障害をもつ子どもをどう捉えるのか?」という悩みは、多くの支援者が一度はぶつかる問題です。
現場では、先輩スタッフがさまざまなことを教えてくれます。でも、人によって言うことが違ったりする…。特に、仕事を始めたばかりの人や、経験の浅い人にとっては、混乱のもとになります。
「何を基準に子どもを評価すればいいの?」
「そもそも“評価”なんて、そんな偉そうなことしていいの?」
そう悩むこともあるでしょう。
「発達」を知ることで、子どもが見えてくるのです。
子どもを理解するための方法は、実はたくさんあります。
・発達テスト
・検査
・療法
・理論
……などなど。
これらに共通して関係しているのが「発達」です。
でもこの「発達」、目には見えないものなので、どうしても曖昧で分かりづらく感じられます。
「発達が大事なのはわかる」
「身体や対人関係、食べる力など、いろんな発達があることもなんとなくわかる」
――でも、「認知発達」って何?
今回はこの「認知発達」について、やさしく解説していきます。
子どもを知るための「発達」というものさし
子どもは日々、育っていきます。障害のある・なしにかかわらず、それは変わりません。
だからこそ、子どもの育ちを知るための「ものさし」が必要です。
それが「発達の段階」です。
発達の段階を知ることで、その子が「今どんな状態にいるのか」が見えてきます。
今の状態がわかれば、「次に目指す発達の段階」も見えてきます。
そして、「今、どんな関わりが必要か」も考えやすくなるのです。
「認知発達」とは何か?
「認知発達」とは、簡単に言えば、
周囲のことを見たり聞いたりして「わかる力」
考える・覚える・伝えるといった力が、段階的に育っていく過程
のことをいいます。例えば、こんな力です。
目の前にあるものを見てわかる
音や声を聞いて反応する
何かが起こるのを予想する
「ありがとう」などのことばの意味がわかる
自分の考えや気持ちを伝える
「なぜそうなるのか?」を考える
「もし〜だったら」と想像する
こういった力は、少しずつ順番に、時間をかけて育っていきます。
認知発達の順序と年齢の目安
認知発達は、「外からの情報を受け取り、理解し、考え、行動につなげる」力の成長です。つまり、「世界が楽しく感じられる」ことが増えていく過程でもあります。
以下は、獲得の大まかなステップです。
①感覚刺激を感じる
②感覚刺激に気づく
③変化に気づく
④ 刺激が来るのを待つ・予測する
⑤言葉を理解する
⑥相手に伝える
①感覚刺激を感じる(0〜3ヶ月頃)
わたしたちの周りには、様々な感覚刺激であふれています。音(聴覚)や光(視覚)、触られる(触覚)など、五感を通じて周囲の刺激を感じて、そこから「寒い」「まぶしい」等の情報を手に入れるのです。
障害がある場合、この段階が育ちにくいことがあります。
感覚刺激を感じることができず、声かけやボディタッチ等、周囲の刺激の意味に気づかないことがあるのです。
音が聞こえる、まぶしい、触れたら冷たい
※ 刺激を感じにくい子には、反応しやすい感覚(光、音、風など)から関わることが大切!
②感覚刺激に気づく(生後3~6ヶ月頃)
感じた刺激が「何か意味のあるものだ」とわかってくる段階です。刺激に「気づく」ことで注意が向き、脳で処理が始まります。
刺激を身体でキャッチすることができたら、今度は「何らかの感覚刺激だ!」と気がつくようになります。受け取ることができてから、「あ、来たね」と気がつく。
刺激に気づいたら、その刺激によって起こった「変化」に注意が向くようになります。それを頭で整理する力が育っていくのです。
・パパが僕をくすぐった。笑ったら、もう一回くすぐってくれた
・ママから呼ばれた。そちらに目を向けたら、ママが笑った
③変化に気づく(6ヶ月〜1歳頃)
刺激を受け取るようになってくると、今度は「変化」に気づくようになります。自分の手や声、人の動きなど、「変わったこと」に気づけるようになるのです。
★障害がない子の場合、生後6ヶ月~1歳くらいで獲得します。母親と他の人の声を聞き分けるようになるのもこの時期です。
・静かな部屋に、突如、ママの声が聞こえた
・目の前にいる人の手が動き、僕の頭を撫でたんだ
※変化に気づく、ということは、自分と外の世界を分けて考える力がようやく芽生えた、ということです。
④ 刺激が来るのを待つ・予測する(9ヶ月~1歳半頃)
「こうすると、こうなるかも」と先の展開を期待できるようになります。パターンを覚えることで、楽しみが増えます
・スイッチを押すと音が鳴ることに気づいた
・「ちょうだい」のサインを出すと何かをくれたんだ
⑤言葉を理解する
「ことば」に意味があることに気づきます。要求を出す際、声を一緒に出せば相手が要求の内容を理解してくれやすい。「ことば」って便利!これに気がつくと、どんどん ことばを使うようになってきます。
ちなみに、ことばを獲得するには、喋ること(表出)よりも、分かること(理解)が先です!単語やことばの理解が拡がってから喋り始めるのです。
★障害がない子の場合、1歳前後で喋り始めることが多いです。ただし、これは個人差が大きいです。
・「ちょうだい」のサインと音声を一緒に出す
⇒はじめは「動き」と「ことば」を同時に出すことが多いです
※ 声のトーンや表情などもヒントになります。
⑥相手に伝える(1歳半〜3歳)
指さしや身ぶりで気持ちを伝える段階です。サインや ことば の便利さに気づくと、相手に伝えるようになってきます。
まずは、目の前の物を選ぶなどの方法で「伝える」ことからスタートします。
・指さしや身ぶりで「これがほしい」などを伝える
・ことばで「ママ」「まんま」と言えるようになる
絵カードやYes/Noで気持ちを伝えることも可能
⇒「わたしの気持ちを伝えたい!」という意欲が出てくる
食べたいお菓子の写真を指さす →「はい/いいえ」で答える → 絵カード → ことば へと拡がる
⑦思考の発達(3歳~)
「自分の思いをわかってほしい!」という意欲が芽生えます。考える力(思考の力)もどんどん発達していきます。思考とは、目の前にないことも考えたり、理由を考えたり、想像したりできることです。
障害のない子の場合、3歳くらいから徐々に獲得してきます。「なんで?」「どうして?」と聞くようになりますよね。見えないこと(明日のこと、他人の気持ちなど)も考えられるようになってきます。
目に見えないものを使って考えられるようになると、「ごっこ遊び」や「簡単なルールのある遊び」もできるようになってくるのです。
ことばとイメージで考える力が伸びてくる。これで、発達もさらに加速していきます。
「もし○○だったら?」と想像する、「なぜそうなったか?」を説明する
まとめとして
子どもの発達は、以下のような流れで進んでいきます。
「感じる」→「気づく」→「集中する」→「期待する」→「言葉がわかる」→「伝える」→「考える」
理解が深まっていくと「これは何だろう?」「なぜ○○何だろう?」が分かるようになってきます。この土台がしっかりしてくると、
・心の安定
・環境の理解
・話すこと
様々な力が育ちやすくなります。
普段、「認知発達」の視点から子どもを見ていないかもしれませんが、一度この「土台」の存在を意識して子どもと関わってみてください。
意外と、土台が不安定な子は多いものです。
感覚遊びなどの基本的な遊びを、繰り返し楽しく行うことが、土台づくりの第一歩になります。
よかったら参考にしてみてくださいね。
■参考資料
≪公的機関・オンライン資料≫
福山特別支援学校. (n.d.). 研究・実践のページ. https://www.fukuyama-sh.hiroshima-c.ed.jp/kenkyuu.html
筑波大学附属大塚特別支援学校. (n.d.). 学校紹介・研究資料. https://www.tsukuba-o.tsukuba.ac.jp/
厚生労働省. (2021). 発達障害支援の手引き. https://www.mhlw.go.jp/
遠城寺宗徳. (1994). 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法. 田研出版.