目の前にいる人へ意識が向いているか?
発達が初期段階の子は、人へ意識を向けることが苦手です。
「目の前にいる支援者が好きではないから」意識を向けない、という理由もあるのかもしれません。しかし「意識を向けない」という要因には、それ以上に、もっと大切な考え方があります。
今回は、発達と運動の高次化理論からみた「気持ち(情動)」の発達についてみていきたいと思います。
人に対して
この段階の子は「心地良いから笑う」「気持ち悪いから泣く」というように、物事を「快・不快」で理解しています(「感覚と運動の高次化理論」Ⅰ~Ⅱ水準)。
人に気づくときも、「なんだか、(外側から)コチョコチョされたな」というように、「快・不快」を通して、はじめて気づく感じです。
そのため、単なる声かけには反応しづらい。
人とのやり取り場面では、こちらからの声かけに反応が少ない子が多いのです。
この発達段階の子は、表出手段が圧倒的に少ない。こういう子には、支援者が子どもの様子や前後関係から気持ちを読み取る必要があります(聞き手効果段階)。
支援者は子どもの表出に対してと分かりやすく返してあげる必要があります。
せっかく子どもが声を出したり、笑ったりといった反応を出しても、目の前にいる支援者が無反応であっては、子どもも返したくなくなります。子どもからのことばや表情にして対してしっかりと返してあげたいです。
発達がもう少し進んでいくと、くすぐる‐くすぐられる等の「受動‐能動」に気付き始めます(「感覚と運動の高次化理論」Ⅲ水準)。
また、「欲しい物を取るために(目的)自分で歩いて取りに行く(行動)」「抱っこして欲しいから(目的)そばにいる大人に手を伸ばす(行動)」など「目的と行動の分化」がみられるようになります。
情動
情緒?情動?なんだ?と思う方もいると思います。両方とも「気持ち」のことです。
・「情動」は自分の心から発生するもの
・「情緒」は逆で、自分以外のものからもらうもの
発達初期の子は、外界から受け取るものも多くないため、「情動」がメインになります。情動の安定は、発達初期の子にとって重要なテーマになります。楽しくなり過ぎて感情が高まり混乱する。良くみられるケースです。
「子どもが喜んでいるから」といって、次から次に子どもを楽しませてしまう「過剰な盛り上げ」の支援をする人もいます。
ちょうどいい「楽しい」をオーバーしてしまうと、訳が分からなくなり泣いてしまう。
これが混乱です。これでは、せっかく楽しんだのに、支援者も子どもも報われません。
適度な「楽しい」で遊んでもらう。障害児保育の重要な視点です。
情動の発達
感覚と運動の高次化理論のⅠ~Ⅲ水準では「情動」はどのように育っていくとされているのでしょうか?
Ⅰ水準
意識が自分の内側に向いていることが多いです。常に1人で感覚遊びに夢中になっている子です。
Ⅱ水準
子どもの様子が”分かりやすく”なってくるので、声や表情、動きから子どもの様子をとらえやすくなってきます。
Ⅲ水準
快・不快の表現も明確になり、笑いや泣きの理由が推測しやすくなります。
Ⅰ~Ⅲ水準の子の支援では、大人が子どもの原則に合わせることが大切です。子どもの原則とは、その子が今できる情報の受け取り方や理解の仕方、程度などです。支援の際どこかで大人が子どもに合わせていかないと「合わさせる」ことになってしまいます。
**********
あわせて読みたい
<参考文献>
2017年12月3日 投稿
2020年 5月5日 更新