象徴機能の発達ってどういう意味?表象と違いは?
「ごっこ遊びが育つこと」と「ことばが育つこと」は、実は深くつながっています。その鍵になるのが「象徴機能」です。
発達や障害を学ぶと、必ずと言っていいほど出てくる象徴機能。よく見かける用語ですが、いまいちピンときませんよね。
象徴機能とは発達にとってどんなメリットがあるのでしょうか?また、どのように発達が進んでいくのでしょうか?今回は、
・用語の違い
・象徴機能の発達
について説明していきます。
「象徴」「表象」「記号」とは、何かを表すこと
| 概念 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 表象 | 頭の中で思い浮かべる | 犬を思い出す |
| 象徴 | 別のもので表す | 積み木を車に見立てる |
| 記号 | 社会的な符号 | 文字・言葉 |
用語の整理
象徴化では似た用語がいくつかあります。まずは用語の整理です。
象徴
何かを別の何かで表現するもの。
象徴は必然的に選ばれたもの。他のものでは替えがきかないものが多い。それを見たときに思い起こさせるもの。シンボル。
記号や象徴よりも曖昧。
ex.
「ハト」は平和の象徴
旧約聖書のノアの方舟。洪水の終わりをハトが知らせたことから、ハトが平和の象徴と言われるようになった。
ex.
象徴あそび:つもり遊び・見立て遊びのような、あるものを別のもので表すといった遊び。
表象
何かを思い浮かべること。
それを見たときにより一般的な状況や性質を思い起こさせるもの。何かを使って特定のものを表すこと。
記号や象徴の中間的な意味合いで使われることが多い。
ex.
イメージや絵など
記号
何かを表すことで意味を発生させるもの。ことばや文字、サインなど。別にそれでなくても問題がなく、他のものに替えることも可能。
ex.
「リンゴ」という名前。
これは赤くて甘くて噛むとサクサクした果物。この「リンゴ」という3文字と実際のリンゴは誰かが意図的に名づけたもの。
象徴機能が必要なわけ
他者とのやり取りのときに、ことばや身振り、文字などを使って、相手に自分の意図を伝えます。このとき、ことばや身振り、文字に意味がある必要があります。
当たり前なのでは?そう思うかもしれません。しかし、障害を持った子や、発達が初期の子のなかには、ことばや身振りなどに意味を持たせることが難しい場合があります。
自閉症子でテレビから流れてくるCMのセリフを繰り返す場合
ことばで何かを伝えることがコミュニケーションです。無意味に声を出しただけでは、相手に意図は伝わりません。
自分が言ったことに意味を持たせることが象徴機能。他者と関わるために象徴機能は欠かせない力なのです。
象徴の力が弱いとどうなるのか?
象徴の力が弱いと、
・言葉の理解が広がらない
・読み書き・内言語の発達につながらない
・ごっこ遊びが広がらない
・やり取りが続きにくい
といった困りが見られることがあります。
▶ 内言語について知りたい方はこちらの記事もご覧ください
⇒ 内言語とは?子どもの「考える力」を育てる発達の仕組み【言語聴覚士が解説】
象徴機能が育ちにくい子どもには何が起きやすいか?
象徴機能は、単に「ごっこ遊びができるかどうか」の話ではなく、ことば・思考・対人理解にも関わる土台です。
そのため、象徴機能が育ちにくいと、次のような姿として現れることがあります。
1. 見立て遊び・ごっこ遊びが広がりにくい
・積み木を車に見立てる
・ブロックを食べ物にする
・人形遊びで役割を演じる
こうした「あるものを別のものとして扱う」遊びが広がりにくいことがあります。これは象徴化の弱さと関係することがあります。
2. ことばが広がりにくいことがある
ことば は「音」そのものではなく、意味を表す象徴でもあります。そのため象徴機能の育ちと、ことばの理解・使用は深く関わります。
・語の意味理解が育ちにくい
・抽象語(大きい・昨日・気持ちなど)が入りにくい
・イメージしながら話を理解することが難しい
といった姿につながることがあります。
3. イメージして考えることが難しいことがある
象徴機能は、目の前にないものを心の中で扱う力にも関わります。
そのため
・見通しをもつ
・想像する
・順序立てて考える
・頭の中で操作する
といった思考面にも影響することがあります。
4. やりとりで意図を読むことが難しい場合がある
象徴は対人理解とも無関係ではありません。
たとえば
・「ふり」の理解
・冗談や比喩
・ごっこ的なやりとり
・暗黙の意味の理解
が難しい場合もあります。
感覚と運動の高次化理論からみると
感覚と運動の高次化の視点では、象徴機能は突然生まれるものではなく、
・身体を通した経験
・対象操作
・イメージ化
・象徴化
という積み重ねの中で育っていくと考えられます。
そのため、象徴機能の育ちを考えるときには、ことばだけでなく、遊びや身体を通した経験も大切になります。
▶「感覚と運動の高次化理論」をもっと知りたい方はこちらをご覧ください
⇒ 発達が初期段階の子はどのように世界を捉えているのか?
象徴遊びの発達
それでは、象徴機能の発達をみていきましょう。分かりやすいように「遊び」の面からみていきます。
立命館大学新井らに研究よると象徴遊びの発達は(荒井庸子・荒木穂積2013)次のような段階となるといわれています。
1歳半~2 歳ころ
・表象機能が獲得される
→今までの遊びに比べて創造的なものになる
2歳ころ
人形を使った象徴遊びが積極的に行われるようになる
→「つもり遊び」「見立て遊び」を十分経験する時期。
3歳頃
目の前にないものでも、イメージや概念を使って代用することができるようになる。
ex.「ごっこ遊び」がはじまる。
→自分の経験を活用できる。
→友達とのイメージの共有はまだ難しい。
4歳前後
ごっこ遊びの場面で「ウソ」を使って遊ぶことができる。
ex.「ウソッコ遊び」
→他の子たちとイメージを共有して遊べるということ
これが役割遊びへと発展していく
5、6歳ころ
遊びに役割が生まれる。役割の分担や交代もスムーズになる。
7、8歳ころ
抽象的なルールでも遊ぶようになる
▶「象徴」を獲得した後の力「概念」に関してはこちらの記事もご覧ください。
⇒ 「象徴」「表象」「記号」違いを知れば発達が見えてくる!
まとめ
「象徴」「表象」「記号」の違いと象徴機能の発達について説明しました。
子どもは遊びから生きるために必要なスキルを身につけていくのです。目の前にいる子どもが、いまどの段階なのか?を知ることで発達を進めるお手伝いができるはずです。
参考資料
立命館人間科学研究,26,47-62,2013. 研究論文(Articles)
自閉症スペクトラム児における象徴機能と遊びの発達―ごっこ遊びから役割遊びへの発達過程の検討―
https://core.ac.uk/download/pdf/60540081.pdf

