感覚と運動の高次化理論 用語集③
誰の許可もなく、感覚と運動の高次化理論の用語集をつくってみました。 このページは「ま行」「や行」「ら行」「わ行」です。それ以外は下記のリンクへどうぞ。
ま行
ま
味覚や嗅覚の過敏性(みかくやしゅうかくのかびんせい):
過敏性は、目や耳だけではなく味覚や嗅覚にもみられることがある。この場合、食事において極端な偏食によって食事に関する生活習慣が身につきづらくなることがある。
み
未経験(みけいけん):
経験として自分に蓄えられていない状態。「応じられない・できない」ことの原因として、未経験、誤学習などがある。特に肢体不自由児の場合、経験していないために応じられなかったり、拒否が出たりすることがある。
見立て遊び(みたてあそび):
積木を代用して、車あそびをするなど、本物ではないものを使って、実物のように扱ったり遊んだりすること。
耳の受動性(みみのじゅどうせい):
耳からは、意識をしなくても音が入ってきてしまうために、それを拒むことが難しいということ。
cf.目の志向性
め
目と手のつながり(めとてのつながり):
目で対象物や手を見ながら、自分の動きを調節していくこと。発達初期の段階だと、目と手を一緒に使うことは難しいことが多い。 =目と手の協応
目の志向性(めのしこうせい):
視線を対象物へ向けること。目を使うということは、視線を対象へ向けて注意を向け続けることが必要。目を向ける意志も働き、嫌な場合には目をそらすこともできる。逆に、耳の場合は、音は勝手に耳に入ってくるため、それを拒むことが難しい。
cf.耳の受動性
面(めん):
物事のつながり、流れ。はじめは「点」が1つだけある。その「点」がいくつも重なりあって「線」となる。「線」が重なって「面」になる。運動や手段の連鎖。
ex.ボールを缶に入れる遊び:
ボールに触れる【点】→つまむ【点】→手を放す【点】→球が缶に落ちる【点】→缶の音がする【点】、といった「始まりと終わり(一連の流れ)」がつながると【線】となる。それら、運動や手段が連なった状態が【面】といえる。
cf.点
cf.線
も
目標設定(もくひょうせってい):
支援を行ううえで、どのようなアプローチがよいのか?という基準。子どもの全体像を考慮しつつ、本人や家庭、集団活動場面などのニーズを踏まえて、多面的に背景を捉えて目標を設定する。子どもに対する支援方法だけで目標設定するものではない。目標は「長期目標」「短期目標」に分類されるが、それぞれを、さらに細かくみていく必要がある。
cf.長期目標
cf.短期目標
文字概念形成(もじがいねんけいせい):
文字を習得するには「細部を見分ける力」「日本語は1音が1文字(「あ」という文字は「あ」という音を表す)」など、前提となる力が存在する。むやみに文字を教え込んでも般化しにくい。文字概念の形成は、発音の不明瞭さの改善や、文法理解などの言葉の育ちにも寄与する。
物の永続性(もののえいぞくせい):
ものが視界から消えてもそれがまだ存在し続けていると確信できること。
摸倣(もほう):
音声や動きを真似ること。模倣の発達段階は以下の通り。
①一方だし模倣(いっぽうだしもほう):
気が向いたときに、活動としてではなく、一人でやっている段階。
②パターン模倣(ぱたーんもほう):
活動として「模倣」が行える段階。何度も繰り返したものでないと難しい。
③即時対応模倣(そくじたいおうもほう):
③即時対応模倣(そくじたいおうもほう):
相手がその場で模倣を促しても、応じることができる段階。
他者と合わせることの面白さに気づいている。
④象徴的模倣(しょうちょうてきもほう):
見立て的な模倣を理解することができ、応じることもできる。
ex.両手をバタバタと横に振る=鳥のマネ
(『感覚と運動の高次化による発達臨床の実際』P.38-39より)
や行
や
役割交替(やくわりこうたい):
遊びやコミュニケーションの際には、動いたり喋ったりする側と、受けたり聞いたりする側の交代が必要不可欠。役割交代が出来ないと、交互に遊べなかったり、一方的に喋り続けるだけだったりとなる。 Ⅴ水準(対応知覚水準)の頃から、他者に合わせることがうまくなる、Ⅵ水準(象徴化水準)の頃には、役割や係りといったものも意識され始める。また、Ⅶ水準(概念化1水準)~Ⅷ水準(概念化2水準)になると、役割交替を意識するようになってくる。
ステップとしては「(前提)集団に安定して参加できる」→「順番を待つ活動」→「簡単な役割を取得する活動」→「役割を交替する活動」の順で獲得していく。
(『感覚と運動の高次化による発達臨床の実際(学苑社)宇佐川浩 P.89~』)
やわらかさ(やわらかさ):
(発達障害分野では)拒否やこだわりが強く出るのではなく、相手に応じやすい状態のこと。
ゆ
指さし(ゆびさし):
ことばやコミュニケーションの前段階で、自分の意図や気持ちを示したり共有したりする行為。もしくは、音声言語の代替えとなるもの。 指さしの発達は下記の順に育っていく
①指向の指差し(9・10 ヶ月~)
→「○○だよ」と言われて、指をさされた方を見る
②自発の指差し(11 ヶ月~)
→自分が見つけたものを「あ!」と言いながら指をさす
③要求の指差し(1 歳~)
→自分の欲しいものをしきりに指さす
④叙述の指差し(1 歳~1 歳6 ヶ月)
→何かを見つけたとき、「あ!」と言いながら指をさして母親の方を見る。三項関係の始まり
⑤応答の指差し(1 歳6 ヶ月~)
→「○○はどれ?」の質問に対して指をさして答える。三項関係の成立
指さし対応弁別(ゆびさしたいおうべんべつ):
弁別の種類の一つ。形が同じものを合わせること。支援者が型を示したものと、同じ形の穴を、子どもが指をさす。
【弁別(べんべつ)】の項目参照
指さし―指さし対応弁別(ゆびさし‐ゆびさしたいおうべんべつ):
弁別の種類の一つ。形が同じものを合わせること。支援者が複数の中から示した型、同じ形の穴を、子どもが指をさす。
【弁別(べんべつ)】の項目参照
ゆらし(ゆらし):
状況やアプローチの方法などをステップアップしたり、ステップダウンしたりしながら、子どもの“つまずき”を把握するやり方。「ゆらし」のアプローチ。難易度を上げ下げすることで、その子の“つまずき”が明確になる。
ex.提示する玩具を2個から3個に増やす。型はめでより難しい形にするもしくは簡単な形にする。
よ
ヨコの系(よこのけい):
今いる発達段階の幅を拡げること。出来る種類や場所、人などを拡げていく。
cf.ヨコの系
ら行
ら
螺旋的(らせんてき):
発達は、ただただ上にあがっていくのではなく、らせん階段のように「上がって→平坦になって」や「ゆっくりと上がって」と進んでいくもの。タテに伸びる時期とヨコに伸びる時期とがある(タテ:質的な発達、ヨコ:経験を重ねる・種類を増やすなど)。そのため、発達は螺旋的といわれることがある。子どもへのアプローチも、次から次に難易度を上げるのではなく、一歩戻って優しい課題にすることで達成感を得られるようにすることがある。
り
臨床(りんしょう):
患者(児)に接して診察や治療に当たること。一般的には、病院での勤務をさす。障害児分野では、実際の障害児保育の現場で、子どもと関わること全般を行うことをさすことが多い。
わ行
わ
わかりやすい活動(わかりやすいかつどう):
子どもの発達状況や環境によって“わかりやすさ”は異なる。支援の際に配慮する必要がある。特に発達初期段階の子は、構造化された場面のほうが理解しやすく、応じやすい。
①ことばの指示よりも道具(視覚的情報)で見通しがつきやすいこと
②結果を得るための手段が複雑化しないこと
③待ち時間を短くすることの配慮
④個々の発達支援目標とうまくつなげること
(『感覚と運動の高次化による発達臨床の実際(学苑社)宇佐川浩 P.92~93』)
感覚と運動の高次化理論 用語集
・【あ行】作成→2018.9.30
・【か行】作成→2018.10.2
・【さ行】作成→2018.10.8
・【た行】作成→2018.10.19
・【な行】作成→2018.10.23
・【は行】作成→2018.11.09
・【ま行】作成→2018.11.09
・【や行】作成→2019.1.10
・【ら行】作成→2019.5.09
・【わ行】作成→2019.5.10
最終更新:2021.01.02