「見る力(視覚)」の発達を知るためのポイントとは?
子どもの発達は様々な種類があります。
知的、運動、食事、ことば・・・などなど。
なかでも分かりにくいのが「見る力」の発達です。
なぜ分かりにくいかというと、子どもがちゃんと見ているかどうかは外から見てもよく分からないからです。
ちゃんと見ているのか?
なんとなく見えているだけなのか?
そこでポイントとなるのが「見る」と「見えている」です。
「見る」と「見えている」の違いをご存知ですか?
ここでは「見る力(視覚)」の発達を説明します。
「視覚」を発達からみていきます。
「見る」と「見えている」の違い
英語では「look」「see」の違いに似ています。
・look(ルック)⇒ 意識的に見る
・see(シー) ⇒ 視界に入る、見える
「見る」には大きく分けて2つの意味があります。
・「見えている」⇒視力の問題
・「見て分かる」⇒視知覚の問題
見ることに起こりうる問題とは?
見ることの問題というと目の病気を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
・視力低下
・メガネやコンタクト
・緑内障や白内障
たしかに、目はものを見るための器官です。
しかし、それだけではありません。
目で見て「それが何なのか?」を理解することも「見る力」なのです。
目で見て理解すること
私たちは普段から無意識的に目を使っています。
・物の形を把握する
⇒ 大きさ、空間など
・物の意味を理解する
⇒ マーク、看板など
意味するとは「止まれ」の看板のような共通となる情報だけではありません。
たとえば、母親がお菓子の入った箱を持ってきたときにはお菓子を食べさせてくれる。
意味(箱の中にはお菓子がある)と行為(母が箱を持ってきた)は目で見ることができる情報です。
これらの意味や行為を理解できないと情報を正しく受け取ることができません。
だから、見る力は子どもにとって大切だと言われるのです。
様々なタイプの「見ること」の問題
障害を持っている子の場合、この「見る力」が充分に育っていないことがあるのです。
一概に「見ること」の問題といっても、様々なものが考えられます。
この子は目を向けているけれど見ているだけっぽい。
これって本当に「分かって」見てる?
周囲の大人がそのように感じるのには訳がありそうです。
原因を知るためには、様々な角度から調べる必要がありそうです。
目の発達
「目の発達段階」といっても様々な側面があります。
・視力の発達
・見る力というと「視力」の発達だと思われがちですが、他にも「見分ける力」「空間把握」など様々な側面があります。
発達の順序
生まれてすぐ
・光と闇を認識。まぶしいと反射的に目を閉じる
・20-30cm程度のものに焦点を合わせられる
生後2ヶ月
・人や手の動きの追視ができる
・絵や物よりもフチや境界線に注視する
生後3ヶ月
・小さめのものでも目で追えるようになる
・頭を動かして物を見られる
・目を寄せてみる(輻輳/ふくそう)
・視力:0.02-0.03
生後4ヶ月
・すべての色を見分けられる
・見て手を伸ばす等、視覚と運動が協応し始める
・それにより、硬い、重い、丸い等の概念が分かる
生後5~7ヶ月
・奥行きや位置関係を理解する力が育つ
生後6ヶ月
・両眼を使うのがうまくなり平面よりも立体を好む
・視力:0.04-0.08
生後1歳
・立位をとるので遠くを見る機会が増える
・視覚的記憶も伸びるので模倣も増える
・視力:0.1-0.2
1歳半
・1.2~3m先を見分けられる(奥行)
2歳
・視力:0.5-0.8
3歳
・3~4.8m先を見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの67%)
4歳
・4.8~6m先を見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの71%)
5歳
・広範囲にあるものを意識できる
(周辺視野が広がる)
・6m以上先も見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの83%)
6歳
・大人と同じくらいみえるようになる
・視力:1.0-1.2
空間を理解する力
私たちは「奥行き」を理解する(知覚する)ために手がかりを使っています。
空間を把握するということです。
空間とは奥行きのこと。
それを助けるのが下記の2つです。
① 生理的な手がかり
私たちの目には「片目だけでできること」と「両目を使わないとできないこと」があります。
② 心理的な手がかり
心的な手がかりは錯覚に利用されます。
見ることの発達(順序)
知的障害の重い子でも、好きなものはすぐに気づく子がいます。
それって「見る力がある」と評価してよいのでしょうか?
下の発達の順序をみても分かるように、ひとつのものを見ることは比較的すぐにできます。
しかし、その後の、「見比べる」「輪郭を意識する」「全体を捉える」ことは難しいのです。
そのため、1つのものを見たからといっても「選べた」と評価するのは早合点なのです。
①ものの存在に気づく
・1カ所に注目する(見つける、注視する)
・2つのものを見比べる
・物の端や輪郭をたどる
・全体を見渡して形を把握する
② 位置や方向、順序があることに気づく
・「1つ」が分かる
・対象とその他を見比べられる
・左右、上下にあるものを順番に見られる
③ 質感などに気づく
・素材などが分かる
・役割が分かる
・意味が分かる
選択までの道のり
「見ること」は後々「選択すること」を獲得するうえで欠かすことのできない大切な力です。
選択するために必要な力(発達)の流れは大きく分けると次のようになります。
発達障害の見え方
では発達障害を持つ子は見え方にどのような特徴があるのでしょうか?
発達障害は障害のタイプによっても、子どもによっても症状は様々です。
ここでは例として症状をいくつかあげていきます。
① 視野が狭い
「物理的に見える範囲が狭い」のではなく、「注意を向けられる範囲が狭い」ということです。
「ペットボトルの底から覗いたくらいの狭さ」と表現されることがあります。
たとえば、下の画像が・・・
特定の箇所に注意を向けると、他の箇所に目がいかないくなることがあります。
その範囲が極端に狭いのです。
↑ 画像中央「出口」に注意を向けたとき
② 文字がとらえにくい
文字の読みにくさを抱えている子がいます。
たとえば・・・
③ 眩し過ぎる
少しの光を過剰に眩しく感じてしまう子もいます。
たとえば・・・
まとめとして
近年、発達障害児の感覚(見え方の偏りなど)を体験できる場所や動画が増えてきました。
私たちはそういったものを使って体験することができます。
しかし、そういった感覚の偏りを持った子どもたちはずっとです。
生きづらさを抱えたまま生活をしていかなければなりません。
私たち支援者は「この子には世界がこのように見えているのかな?」と丁寧に仮説を立てていくことが大切です。
その積み重ねが子ども理解につながっていくのではないでしょうか?
「この子は見ているから分かっているはず!」
「こっちを見ない。自閉症だ!」
と安易に考えるのではなく「なぜ見られないのか?」を探っていくことが大切です。
よかったら参考にしてみてくださいね。
*****
「見ること」の入門書です。薄いですが分かりやすい内容です。
あわせて読みたい
参考資料
発達障害の子どもの視知覚認知問題への対処法
親と専門家のためのガイド
リサ・A・カーツ
視覚発達支援センター
http://www.ikushisya.com/hattatsu.html
eye vision project
http://www.eyevision-pro.jp/data/data-1
日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/02.html
広島県医師会
http://www.hiroshima.med.or.jp/kodomo/ophthalmology/012474.html