障害児支援における「見る力(視覚)」の発達をどう捉えるか
子どもの発達は一つの流れだけではありません。知的・運動・食事・ことばなど様々な種類や側面があります。
そのなかでも、放課後等デイサービスの現場で特に分かりにくいのが「見る力(視覚)」の発達を紹介します。
なぜ「見る力」は分かりにくいのでしょうか?それは「見えているかどうか」は、外からは判断しにくいからです。
• 本当に見て理解しているのか
• なんとなく視界に入っているだけなのか
この違いは、支援をしていると悩む場面が多いのではないでしょうか。今回は「見る力(視覚)」の発達を説明します。
- 障害児支援における「見る力(視覚)」の発達をどう捉えるか
- 障害のある子の場合
- 見る力にも発達の順序がある
- 「見る力」は「選択する力」につながる
- 空間を理解する力
- 発達障害のある子の「見え方」の特徴
- 発達の順序
- まとめとして
「見る」と「見えている」は同じではない
「見る力」を考えるうえで、大切な視点があります。それが 「見る」と「見えている」の違い です。英語でいうと、
• look:意識して見る
• see:視界に入る、見える
に近いイメージです。支援の現場でいう「見る」には、実は2つの側面があります。
• 見えている:視力・目そのものの問題
• 見て分かる:視知覚(見て理解する力)の問題
放課後等デイサービスで課題になりやすいのは、後者の「見て分かる力」です。
「見ること」の問題は目の病気だけではない
「見ることが苦手」と聞くと、視力低下や目の病気を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、実際には、目で見た情報をどう理解しているか も重要です。私たちは普段、無意識のうちに
• 形や大きさを把握する
• 物の意味を理解する
• 状況を予測する
といったことを、視覚から得ています。たとえば、保護者が「お菓子の箱」を持ってきた場面。
• 箱の中にお菓子が入っている
• これから食べられるかもしれない
こうした意味と行動のつながりも、「見る力」の一部です。
障害のある子の場合
障害のある子どもの場合、この「見る力」が十分に育っていないことがあります。一言で「見るのが苦手」といっても、背景はさまざまです。
よく見られる要因の例
• 注意の問題
→ 気が散りやすく、対象に注目し続けられない
• 記憶の問題
→ 見た情報を保持できず、行動につながらない
• 情緒の問題
→ 状況が理解できず、不安や混乱につながる
• 感覚の問題
→ まぶしさなどで対象そのものを見られない
「目は向いているけれど、分かっていない気がする」そう感じるときには、こうした要因が隠れている可能性があります。
見る力にも発達の順序がある
「好きなものにはすぐ反応するから、見る力はある」
そう評価してしまいそうになる場面もあります。しかし、見る力にも発達の順序があります。見る力の大まかな流れは、次の通りです。
① ものの存在に気づく
• 注視する
• 2つのものを見比べる
• 輪郭や端をたどる
• 全体を把握する
② 位置・方向・順序に気づく
• 1つとその他を区別する
• 左右・上下を順に見る
③ 質感・役割・意味が分かる
• 素材の違いが分かる
• 使い方が分かる
• 状況の意味が分かる
「見た」=「選べた」と評価する前に、どの段階にいるのかを丁寧に見ることが大切です。
「見る力」は「選択する力」につながる
見る力は、将来的に「選ぶ力」「意思表示」につながっていきます。選択する力が身につくまでに、獲得していく力というものがあります。それは次の1から5の流れです。
1. 始点・終点が分かる
2. 目と手が連動する
3. 見分ける力が育つ
4. 模倣やイメージが豊かになる
5. 見比べて選べるようになる
という積み重ねがあります。
放課後等デイサービスでの遊びや活動は、この土台づくりにとても重要な役割を持っています。
空間を理解する力
私たちは「奥行き」を理解する(知覚する)ために見ることを「手がかり」として活用しています。
それは、空間を把握するということです。空間とは奥行きのこと。それを助けるのが下記の2つです。
① 生理的な手がかり
私たちの目には「片目だけでできること」と「両目を使わないとできないこと」があります。
◆片目でもOK(単眼性)
◆両目をつかえばOK(両眼性)
② 心理的な手がかり
心的な手がかりは錯覚に利用されます。
発達障害のある子の「見え方」の特徴
発達障害のある子どもでは、見え方に偏りがあることも少なくありません。
例① 注意を向けられる範囲が狭い
物理的に見えないのではなく、注意を向けられる範囲が極端に狭い状態です。物理的に見える範囲が狭い」のではなく、「注意を向けられる範囲が狭い」ということです。「ペットボトルの底から覗いたくらいの狭さ」と表現されることがあります。
たとえば、下の画像が・・・

特定の箇所に注意を向けると、他の箇所に目がいかないくなることがあります。
その範囲が極端に狭いのです。
↑ 画像中央「出口」に注意を向けたとき
例② 文字や模様がとらえにくい
文字が歪んで見えたり、背景と混ざってしまうこともあります。文字の読みにくさを抱えている子がいます。
たとえば・・・

例③ まぶしさを強く感じる
少しの光でも強烈に感じ、見続けることが難しい子もいます。少しの光を過剰に眩しく感じてしまう子もいます。たとえば・・・
発達の順序
では、最後に、見る力の発達の順番を生後から見ていきましょう。
生まれてすぐ
・光と闇を認識。まぶしいと反射的に目を閉じる
・20-30cm程度のものに焦点を合わせられる
生後2ヶ月
・人や手の動きの追視ができる
・絵や物よりもフチや境界線に注視する
生後3ヶ月
・小さめのものでも目で追えるようになる
・頭を動かして物を見られる
・目を寄せてみる(輻輳/ふくそう)
・視力:0.02-0.03
生後4ヶ月
・すべての色を見分けられる
・見て手を伸ばす等、視覚と運動が協応し始める
・それにより、硬い、重い、丸い等の概念が分かる
生後5~7ヶ月
・奥行きや位置関係を理解する力が育つ
生後6ヶ月
・両眼を使うのがうまくなり平面よりも立体を好む
・視力:0.04-0.08
生後1歳
・立位をとるので遠くを見る機会が増える
・視覚的記憶も伸びるので模倣も増える
・視力:0.1-0.2
1歳半
・1.2~3m先を見分けられる(奥行)
2歳
・視力:0.5-0.8
3歳
・3~4.8m先を見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの67%)
4歳
・4.8~6m先を見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの71%)
5歳
・広範囲にあるものを意識できる
(周辺視野が広がる)
・6m以上先も見分けられる(奥行)
・視力:1.0(子どもの83%)
6歳
・大人と同じくらいみえるようになる
・視力:1.0-1.2
まとめとして

近年、発達障害児の感覚(見え方の偏りなど)を体験できる場所や動画が増えてきました。
私たちはそういったものを使って体験することができます。しかし、感覚の偏りを持った子どもたちはずっと生きづらさを抱えたまま生活をしていかなければなりません。
私たち支援者は「この子には世界がこのように見えているのかな?」と丁寧に仮説を立てていくことが大切です。
その積み重ねが子ども理解につながっていくのではないでしょうか?
「この子は見ているから分かっているはず!」
「こっちを見ない。自閉症だ!」
決めつけずに「なぜ見られないのか?」と背景を考える視点を大切にしていきたいです。
よかったら参考にしてみてくださいね。
「見ること」の入門書です。薄いですが分かりやすい内容です。
あわせて読みたい
参考資料
発達障害の子どもの視知覚認知問題への対処法
親と専門家のためのガイド
リサ・A・カーツ
視覚発達支援センター
http://www.ikushisya.com/hattatsu.html
eye vision project
http://www.eyevision-pro.jp/data/data-1
日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/02.html
広島県医師会
http://www.hiroshima.med.or.jp/kodomo/ophthalmology/012474.html



