言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできることを模索しています

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「見る力(視覚)」の発達【言語聴覚士が知っておきたいこと①】

言語聴覚士が知っておきたい「見る力(視覚)」の発達

 

 

今回は、「見る力(視覚)」の発達についてです。発達をみるうえで欠かすことのできない領域です。

「見る」とは「見えている」という視力の問題と「見て分かる」という視知覚の問題があります。「聞く」と同じです。しかし視覚の問題は言語聴覚士(ST)の弱い部分でもあります。

今回は視覚を発達の面からみていきましょう。

 

 

 

1)見る

私たちは、普段から無意識的にものを「見て」います。これまでの経験や学習と照らし合わせて、その内容を理解しています。そして、手を伸ばせばいいのか、避ければいいのか等の自分の行動を決める手がかりにすることができます。

障害を持っている子の場合、この一連の流れが難しいケースがあります。私たちが意識せずに行っていることなので、注意していかないと見過ごしてしまいます。

「見ること」の問題といっても、様々なことが考えられます。

●注意の問題

・注意が逸れてしまうから対象をうまく見ることができない

●記憶の問題

・見たものを覚えておくことができないから行動にうつせない

●情緒の問題

・物や状況を見て理解できないから気持ちが崩れる

●感覚の問題
・まぶしすぎて対象物を見ることができない


この子は目を向けているけれど、これって本当に「分かって」見てる?

それを知るためには、様々な視点から考えていく必要がありそうです。

 

 

2)目の発達

 

 「目の発達段階」といっても様々な側面があります。見る力というと「視力」の発達だと思われがちですが、他にも「見分ける力」「空間把握」など様々な側面があります。

 

a)視力の発達

 

 生まれてすぐ

・光と闇を認識。まぶしいと反射的に目を閉じる

・20-30cm程度のものに焦点を合わせられる

生後2ヶ月

・人や手の動きの追視ができる

・絵や物よりもフチや境界線に注視する

生後3ヶ月
・小さめのものでも目で追えるようになる

・頭を動かして物を見られる

・目を寄せてみる(輻輳/ふくそう)

・視力:0.02-0.03

生後4ヶ月

・すべての色を見分けられる

・見て手を伸ばす等、視覚と運動が協応し始める

・それにより、硬い、重い、丸い等の概念が分かる

生後5~7ヶ月

・奥行きや位置関係を理解する力が育つ

生後6ヶ月

・両眼を使うのがうまくなり平面よりも立体を好む

・視力:0.04-0.08

生後1歳

・立位をとるので遠くを見る機会が増える

・視覚的記憶も伸びるので模倣も増える

・視力:0.1-0.2


1歳半
・1.2~3m先を見分けられる(奥行)

2歳

・視力:0.5-0.8

3歳
・3~4.8m先を見分けられる(奥行)

・視力:1.0(子どもの67%)

4歳
・4.8~6m先を見分けられる(奥行)

・視力:1.0(子どもの71%)

5歳
・広範囲にあるものを意識できる

(周辺視野が広がる)

・6m以上先も見分けられる(奥行)

・視力:1.0(子どもの83%)

6歳
・大人と同じくらいみえるようになる

・視力:1.0-1.2

 

 

b)奥行きの知覚

私たちは「奥行き」を理解する(知覚する)ために手がかりを使っています。それが下記の2つです。

 

① 生理的な手がかり

私たちの目には「片目だけでできること」と「両目を使わないとできないこと」があります。

◆片目でもOK(単眼性)

運動視差

→スピード感など、動きの違い

電車の中から外を見たとき、遠くはゆっくりに見えるが、近くは早くみえるということ。身体を動かしたときの網膜像の時間的な見え方の差(視差)。

目のレンズ調節

→ピントを合わせること


◆両目をつかえばOK(両眼性)

両眼視差

→私たちの目は、左右で見えるものに差があります。この差があるために奥行きを感じることができる。また、立体感を得るために必要なこと。両目で立体などを見た時に生じる両眼間の網膜間のズレ。

輻輳(ふくそう)

対象物が近くにあると両目は内側に寄ります。逆に遠くにあると両目は外側に寄ります。これらの動きにより、距離感を感じることができるのです。

 

② 心理的な手がかり

心的な手がかりは錯覚に利用されます。

 

大きさ

対象物が網膜に映るのが近ければ大きく、遠ければ小さく映る

重なり

2つの対象が重なっているとき、遮断されている方が遠くにあるようにみえる

陰影

陰影があると奥行きのある立体に光が当てられているように見える

きめの勾配

大きく粗くみえるものは近くに、小さく細かくみえるものは遠くにあるように見える

相対的位置

上にあれば遠くに、下にあれば近くにあるように見える

 

 

 

c)見ることの発達(順序)

知的障害の重い子でも、好きなものはすぐに気づく子がいます。それって「見る力がある」と評価してよいの?

下の発達の順序をみても分かるように、ひとつのものを見ることは比較的すぐにできます。しかし、その後の、「見比べる」「輪郭を意識する」「全体を捉える」ことは難しいのです。そのため、1つのものを見たからといっても「選べた」と評価するのは早合点なのです。

 

①ものの存在に気づく

・1カ所に注目する(見つける、注視する)

・2つのものを見比べる

・物の端や輪郭をたどる

・全体を見渡して形を把握する

② 位置や方向、順序があることに気づく

③ 質感などに気づく

 


d)選択までの道のり

① 始点・終点の理解

② 目と手の協応の発達

③ 見分ける力(分類)の発達

④ 模倣やイメージが豊かになる

⑤ 見分ける力から(分類)見比べる力(選択)へ

 

 

3)発達障害の見え方

① 視野が狭い

「物理的に見える範囲が狭い」のではなく、「注意を向けられる範囲が狭い」ということです。「ペットボトルの底から覗いたくらいの狭さ」と表現されることがあります。

たとえば、下の画像が・・・

 

 
特定の箇所に注意を向けると、他の箇所に目がいかないくなることがあります。その範囲が極端に狭いのです。

↑ 画像中央「出口」に注意を向けたとき 

 

② 文字がとらえにくい

 文字の読みにくさを抱えている子がいます。たとえば・・・

 

 

 

③ 眩し過ぎる

少しの光を過剰に眩しく感じてしまう子もいます。たとえば・・・

 

 

4)まとめとして

 近年、発達障害児の感覚(見え方の偏りなど)を体験できる場所や動画が増えてきました。私たちはそういったものを使って体験することができます。しかし、そういった感覚の偏りを持った子どもたちは生きづらさを抱えたまま生活をしていかなければなりません。私たちは、どうやってその子の実像に迫っていけばよいのか?

 

 

「この子は見ているから分かっているはず!」

「こっちを見ない。自閉症だ!」

 

と安易に考えるのではなく「なぜ見られないのか?」を丁寧に探っていくことが大切です。その積み重ねが「子どもの理解」につながっていくのではないでしょうか。

 

 

 

 「見ること」の入門書です。薄いですが分かりやすい内容です。

発達障害の子どもの視知覚認識問題への対処法

発達障害の子どもの視知覚認識問題への対処法

  • 作者:リサ A カーツ
  • 発売日: 2010/05/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

あわせて読みたい

www.hana-mode.com


 

参考資料

発達障害の子どもの視知覚認知問題への対処法
親と専門家のためのガイド
リサ・A・カーツ

視覚発達支援センター
http://www.ikushisya.com/hattatsu.html

eye vision project
http://www.eyevision-pro.jp/data/data-1

日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/02.html

広島県医師会
http://www.hiroshima.med.or.jp/kodomo/ophthalmology/012474.html