毎日の記録ってどうやって書けばいいの?
障害児施設では障害を持つ子への支援が行われています。
ただ支援を行うだけではなくて、それを記録として残しています。
わたしも長い間、いろんな施設で毎日の記録を書いてきました。
しかし、この日々の記録、意外と難しいのです。
・何を書けばよいのか?
・どうやって書けばよいのか?
・どんな風に書けばよいのか?
障害児施設で働く皆さん、「何となく」書いていませんか?
わたしは10年以上、様々な福祉施設で働いてきました。
現在では言語聴覚士として障害児施設に勤務しています。
今回はみんなはどんなふうに書いているのか?を説明します。
障害児施設の記録とは?
そもそも障害児施設でスタッフが書く記録とはどのようなものなのでしょうか?
施設では毎日様々な活動を行っています。
・外遊び(公園、散歩など)
・室内遊び(感覚遊び、工作など)
・イベント(お祭り、音楽会など)
日々の活動の際、子どもがどのように過ごしたか?を記録しておく必要があるのです。
理由はいくつかあります。
この「記録」ですが、書き方は決まっていません。
施設によってバラバラです。
書き方も、書く内容も異なるのです。
そのため、施設ごとに質の差が大きいのです。
では、どのような違いがあるのか見ていきましょう。
客観的に書くかどうか?
書き方の違いで目立つのが「客観的に書いているかどうか?」です。
客観的に書けく方がいいんじゃないの?
そう思われるかもしれません。
しかし、ただ事実だけを書くのではなくて、実際にその場にいたスタッフの考えを入れた方がよいという考え方もあるのです。
その違いが下記の2つです。
A 客観的に書くタイプ
B 考察を入れて書くタイプ
A 客観的に書くタイプ
あくまで「客観的」に書くことがルールです。
客観とは実際に会ったことのみを、自分の考えを入れずに書くということです。
事実だけを書いた記録は、その子のありのままの姿を残しておくことができるのです。
○○さんに楽器を見せると無反応でした。
音を出してみるとすぐに楽器の方に目を向けました。
実際に起こったことだけを記録していくタイプの書き方です。
自分が思ったことや仮設は入れません。
B 考察を入れて書くタイプ
こちらは実際の子どもの様子を見て仮説を立てる書き方です。
自分の考えを書き入れていくのです。
仮説を立てて、実行するまで書いてもOKです。
もちろん、考え方はその人によって異なります。
経験の有無や職種によっても変わってきます。
考察を入れて書くタイプの記録は「他者はこんな風に子どものことを捉えているんだ」ということが分かります。
○○さんに楽器を見せると無反応でした。
音を出してみるとすぐに楽器の方に目を向けました。
注意点があります。
「実際の様子」と「考え、想像」は必ず分けて書きましょう。
どれが事実で、どれが仮説か分からないような書き方は何の価値もない記録になってしまいます。
文体の違い「です・ます」「だ・である」
客観的に書くかどうか?以外にも書き方の違いはあります。
どのような文体で書くか?です。
いろいろな文体が混ざったものは、読みにくくて不安定な印象を与えてしまいます。
注意が必要です。
○○さんに楽器を見せると無反応でした。
音を出してみるとすぐに楽器の方に目を向けた。
とても集中しているようだった。
ここでは「です・ます」「だ・である」を例に説明していきます。
「です・ます」調
作文でよく見かける文体です。
読み手に柔らかい印象を与えます。
しかし、ただ丁寧に書けばいいというものではありません。
本来の目的は「日々の子どもの様子を記録して支援につなげる」ことです。
施設でも丁寧さばかり気にしているスタッフが時々います。
行き過ぎるとよく分からない文章になります。
ご利用者様に楽器を持っていただきましたが反応なさいませんでした。
スタッフが楽器の音を出してみたところ、すぐに気づかれてこちらを見ていました。
称賛されると笑顔で返してくれました。
こんな風に書く人に限って丁寧語と謙譲語がゴチャゴチャなことが多いです。
しっかりとおさえておきましょう。
「だ・である」調
論文でよく見かける文体です。
読み手に少し硬い印象を与えます。
悪いことばかりではありません。
「です・ます」調の場合、回りくどくなってしまうことがあります。
そのため「○○だ」と言い切って書いてしまった方がスッキリした見た目になることが多いのです。
「です・ます」調の方が文字数が増えます。
長期的に考えてみると、紙でもデータでも量は増えるはずです。
本児に楽器を持ってもらったが反応はなかった。
スタッフが楽器の音を出してみると、すぐに気づいてこちらを見た。
スタッフから褒められると笑顔がみられた。
記録を書くときに陥りやすいこと
記録の書き方は施設によって大きく異なります。
「客観的」「文体」以外の違いもあります。
しかし、どんな施設であっても記録を書くときに陥りやすいことがあります。
・やたらと専門用語を使いたがる
・妙な丁寧語を使う
「よく見られたい」と間違った方向に進んでいくと、こんな風になることがあります。
専門用語を入れようと必死になる
障害児分野をはじめとする福祉分野には多くの「専門用語」が存在します。
職場には支援員、保育職以外の職種の人たちもいます。
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・看護師
特定の職業だけが使っている用語もあります。
それを真似る必要はありません。
たとえば、言語聴覚士(ST)であれば
・嚥下(えんげ)
・咀嚼(そしゃく)
のような用語を使います。
言語聴覚士は日常的にそれらを使っています。
なので、保育や指導員用の記録で専門用語を使ってしまうことがあります。
特に手書きの記録であれば
「咀嚼」ではなくて「咀しゃく」と書くことも多いです。
「噛む」と書くことの方が多いかもしれません。
※咀嚼:噛むこと
自分の職種のものでも他の職種のものでも専門用語で書かなくてよいのです。
むしろ専門用語を入れ過ぎると逆に読みにくくなるので注意する必要があります。
おかしなくらい丁寧語を入れて書く
施設でも文章の「丁寧さ」ばかり気にしているスタッフが時々います。
「丁寧に書くこと」=「すばらしい記録」
そんなわけない。
丁寧さが行き過ぎるとよく分からない文章になります。
ご利用者様に楽器を持っていただきましたが反応なさいませんでした。
スタッフが楽器の音を出してみたところ、すぐに気づかれてこちらを見ていました。
称賛されると笑顔で返してくれました。
自分の支援に自信がない人、子どものどこを見たらよいのか分からない人に多く見られます。
とりあえず丁寧に書こう。
相手は「子ども」だけどいいか。
へりくだった表現で書けばいいか。
こりゃいい記録だ。
それで満足してしまう。
支援の中身は二の次に。
本末転倒です。
こんな風に書く人に限って丁寧語と謙譲語がゴチャゴチャなことが多いです。
しっかりとおさえておきましょう。
まとめとして
今回は、障害児施設での日々の記録の書き方について説明しました。
どのように書いているのか?
基準はあるのか?
間違えやすいことは?
施設によって異なるだけに、なかなか他施設の記録について知る機会は少ないです。
記録はスタッフ全員の大切な財産となるはずです。
よかったら参考にしてみてくださいね。