言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

STは障害児福祉ではじめて働く人に何をしてあげられるか?

はじめて障害児福祉で働く人にSTは何をしてあげられるか?

わたしは言語聴覚士(ST)として長年、障害児支援で働いています。福祉分野のなかで障害児はマイナーな領域だといえます。しかし、徐々に「障害児分野で働いてみたい」という人が増えているように感じます。

はじめて障害児と関わる仕事をするとき、楽しいけれど緊張やプレッシャーも感じることが多いです。

子どもを見た目だけで判断すると失敗すますし、侮って(あなどって)いると見透かされます。

わたしも新人の頃にたくさん失敗してきました。

・上手く遊べなくて立ってるだけの人になっている
・どうやって評価すればいいのか まったく分からない
・無理やりやらせようとして子どもから嫌われる

 

障害児分野で中心となっているのは保育職や支援職です。STはリハビリ職です。それでも新しく入ってきた人に「こうしたらいいよ」と助言することならできるはずです。

今回は、STのような専門職が新人スタッフに何をしてあげられるか?というはなしです。

 

 

放課後等デイサービスで働く人のタイプ

近年、放課後等デイサービスの事業所数が増えています。まだまだ右肩上がりです。


厚生労働省HP 社会福祉施設等調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/23-22.html

 

施設数が増えれば、求人の数も増えます。はじめて放課後等デイサービスで働く人も増えていきます。

「はじめて」といっても、いろんなタイプの人がいます。

・他の障害児福祉でなら働いたことがある
・高齢者福祉でなら働いたことがある
・福祉業界自体やったことがない人

 

 

放課後等デイサービスの種類

放課後等デイサービスとは 障害や疾患を持つ子が学校が終わってから(放課後に)通う施設です。略して「放デイ」と呼ばれることが多いです。

塾のような習い事ではなくて、気楽に過ごすための場所です。障害や疾患といっても種類は様々です。そのため、通う子によって施設のタイプが分かれます。大きく分けると2つの種類があります。

・重心の放課後等デイサービス
・一般の放課後等デイサービス

それぞれを見ていきましょう。

 

一般の放課後等デイサービス

「一般」とうのは「重症心身障害児」以外が通う施設という意味です。障害がないという意味ではありません。「重心外」と呼ばれることも。「一般」の施設に多いのが、発達障害やダウン症などの子たちです。

 

重心の放課後等デイサービス

「重心(じゅうしん)」というのは「重症心身障害児(じゅうしょうしんしんしょうがいじ)」のことです。ざっくりいうと、障害が重くて「歩けない」「喋れない」子。医師から認定をもらう必要があります。

 

 

施設の種類で違うこと

放課後等デイサービスに通っている「重症心身障害児」と「重心外(一般)」の子。2つの間に違いはあるのでしょうか?いくつくかあげると次のような点があります。

 

ex.   

◆ 重心の子は車椅子に乗っていることが多い。そのため、外出の準備やトイレなど準備に時間がかかることが多い。

◆ 食事時間も大きく異なる。「重心外」の子たちは あっという間に食べ終わる子が多い。重心の子は食事に時間がかかる子(必要な子)が多い。

◆ 重心外の子は喋れる子も多い。重心の子は会話ができる子は ほぼいない。コミュニケーションの取り方も異なる。

◆ 重心外の子は ひとりで遊べる子も多い。重心の子は遊ぶ手伝いが必要な子も。

 

 

新人が戸惑うこと

「重心」と「重心外」の施設の違いを簡単に説明しました。はじめて障害児と関わるという人が重心の施設に来たときに戸惑うことがあります。

それは「何をしていいか分からない」ということです。

 

重心の施設

重心の子の施設では、こちらからの声かけなどに反応がない子もいます。手を振り続けて周囲には意識が向かない子もいます。子どもによって特徴は異なりますが、自分から何かをやっている子は少ないです。

そのため、どうやってコミュニケーションと取ればいいのか?どうやって遊べばいいのか?などが本当に分かりづらい

はじめて障害児と関わる人や経験の浅い人は「何をすればいいのか分からない」と感じ、固まってしまうことがあるのです。

 

重心外の施設

重心外の施設の子たちは、一人で玩具や公園で遊んだり、話しかけてくる子も多くいます。お喋りしている子もたくさんいます。

しかし、自閉症などの発達障害の子たちには「うまく他者と関われない」等の障害特性があります。一方的に質問しまくる子や、自分の指示通りの文字を大人に書かせたがる子など、いろんなタイプの子がいます。

信頼関係を築いてからでないと心を開いてくれない子もたくさんいます。

それぞれ性格やタイプが異なります。初めて会ったこと完璧に うまくかかわることができる大人なんて ほとんどいません。それが分からず「自分はこの仕事に向いていないんじゃないか・・・」と落ち込む新人スタッフは多いです。

 

助言は必要

専門職や経験が長い支援者から新人への助言は、支援の方向付けと自信につながります。はじめて働く人に必要なのは「こういうふうにすればいいんだ!」という安心材料です。

たまにいるのですが・・・「自分ってすごいだろ」と技術や知識をアピールする専門職や先輩。そんなアピールは必要ありません!みんなが不快な思いをするだけですから。

 

 

助言のときに気をつけたいポイント

助言にも、やり方はたくさんあります。専門職や経験者も「新人スタッフのために」と思って頑張っているはず。しかし、先輩方がやってしまいがちなこともあります。

 

① 説明している「つもり」になっている
② 専門用語や略語ばかり使っている
③ 自分ができるからといって、他の人にもやらせようとする

 

 

① 説明している「つもり」になっている

専門職や経験の長い人がやってしまいがちなこと。ひとつ目がこれ。

説明している「つもり」になっている、ということです。

 

ex.  気持ちが崩れて荒れている子への対応 

「あの子が泣き終わるまで隣で待って。あ、他の子が叩かれないように見ておいてね」

 

余計な声かけはせずに「待つ」こと。これも立派な支援だと思います。しかし、これだけでは経験の浅い支援者は混乱してしまいます。

 

・ただ隣にいるだけでいいのかな?
・他の子を叩こうをしたとき、羽交い絞めにしてもいいのかな?
・待っている間「大丈夫だよ」と声をかけてもいいのかな?

 

その他にも状況が変われば悩むことはたくさんあるはずです。このような助言をするときには、子どもの特性や性格、周囲の子との関係性なども伝えるべきです。

 

あの子は自分の考えていたことと「違うこと」が起きると混乱して泣いてしまうの。泣くといっても、少し時間がたてば自分で立ち直ることもできる。だから、あなたは隣で あの子が立ち直るまで待っていてほしい。「大丈夫だよ」くらいの声かけならOK。でも話しかけすぎると逆に混乱して暴れることもあるから。そういうときは先輩スタッフを呼んでね。

 

言いたいことは意外と伝わっていない。察してね、は無理です。

 

 

② 専門用語や略語ばかり使っている

専門職や経験の長いスタッフは経験上、様々なことを知っています。例えば「専門用語」。福祉の業界では様々な専門用語や略語が飛び交っています。

 

ex.  専門用語をかっこいいと思っている先輩 

「この子はCPでМRもあるから。食介のときはテンポよくいくといいよ。何かあったら児発管じゃなくてSTに聞いたほうがいいかも」

 

字で見れば何となく分かる人もいるかもしれません。しかし、聞いただけでは何を言っているのかよく分かりません。

専門用語なんて使わなくてOKです。よい専門家は「いかに専門用語を使わずに相手に説明できるか?」をちゃんと考えています。

 

・CP
⇒ 脳性麻痺(Cerebral palsy)

・MR
⇒ 精神遅滞( Mental Retardation)知的障害と同じ

・児発管
⇒ 児童発達支援管理責任者)

・ST
⇒ 言語聴覚士(Speech-Language–Hearing Therapist)

 

 

③ 自分ができること=他の人もできる、ではない

専門的な知識や経験を持っているからできることはたくさんあります。それを本人が気づいていないケースがあります。

 

ex.  頑張ればできると思っている先輩

「ちゃんと言われたとおりにやって!そうじゃなくて、私のやってるのを見て!」

 

わたしは言語聴覚士(ST)です。「飲み込み(食べること)」の専門家です。

経験が長いSTは、食事介助の際に「過去に会ったあの子と似ているな」「ここまでなら やっても大丈夫」という経験値で介助をしていることがあります。それは経験があるからこそできることなのです。

初めて障害児と関わる人に「自分と同じ」レベルの介助を求めるのは変な話しなのです。

 

 

放課後等デイサービスで長く働いてもらうために

障害児と関わる仕事は、楽しいことや興味深いことが多くあります。せっかくこの分野に足を突っ込んでくれた人が、その魅力を感じられるかどうかは「先輩たち」のやり方にかかっているのではないでしょうか?

 

子どもを「みる」視点を伝える

言語聴覚士(ST)はリハビリ職と呼ばれています。

・ことば(喋ること)

・きこえ(聞くこと)

・のみこみ(食べること)

 

専門は この3つ。わたしたちの生活に当たり前のようにある力ばかりです。

STなら「知っていて当然」ということでも、他の職種は まったく知らない、なんてこともたくさんあります。

 

ex.

・手話を使うと言語獲得が遅れる、はウソ

・耳に水が入ると中耳炎になる、はウソ

・食べるとき口が上下に動いているから咀嚼(噛むこと)できているとは言えない

 

「その支援よりも こっちの方がいいですよ」

「こうすると もっと楽しく遊べますよ」

「この介助方法が安全ですよ」

というような より専門的な視点を支援者に伝えるのが専門家の仕事です。

 

www.hana-mode.com

 

障害児支援の「楽しさ」を知ってもらう

やり方が分からなかったり、失敗ばかりし続けたりしていると「わたしには障害児支援は向いていないかも・・・」と悩んで辞めてしまう人がたくさんいます。

これを止めるのも専門職や経験が長い支援者たちの仕事なのではないでしょうか?

わたしたちは障害児支援の「魅力」を知っているからこそ、長年、働き続けてきたはずです。だったら、新人スタッフにも それを知ってもらうお手伝いをしましょう。

 

・働いているうちに障害への偏見がなくなっていくこと

・子どものことを深く知ることができる

・子どもと心が通じた瞬間が嬉しい

魅力は人によって異なります。

それを知るためには何が必要か?
どういうふうに子どもをみればいいのか?
そのためには何をすればいいのか?

自分の経験を活かして新人スタッフに伝えてみてください。

もちろん、威張ったり無理やりやらせたりするのはNG。新人にも子どもにも嫌われるだけですから・・・。

 

 

まとめとして

今回は、言語聴覚士(ST)障害児福祉ではじめて働く人に何をしてあげられるか?

その職種だけが知っている「当たり前」は少なくないはずです。長く働いていると「当たり前」が見えにくくなってきます。

どうすれば障害児支援の魅力に気づいてもらえるか?

教え込むのではなくて、子どもとの関りを通して身につけていくのが理想です。

STに限らず、経験の長い支援職にも人にも言えることだと思います。

 

よかったら参考にしてみてくださいね。