言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

誤った情報に惑わされるな!正しい情報を知るためのポイントとは?【障害児支援】

誤った情報に惑わされるな!

正しいと言われている情報は日々変わっていきます。

障害児の分野でも同じことが言えます。

支援方法や新しい情報を保護者や他の職種に伝えるとき、あなたはちゃんと「正しい」ことを伝えていますか?

以前は「正しい」と思われてきた考え方でも、現在は単なる「間違った情報」になっていることがあるのです。

今回は、今は「間違った」「役に立たない」情報があるというはなしです。

 

ポイント!

やはり一番のポイントは自分の中の知識を見直すことです。

新しい情報を定期的に仕入れるようにする
いろんな人と普段から話しておく

 

 

 

「誤った」情報とは?

 

ここでの「誤った」とは古くなって今は使われていない考え方のことです。

障害児分野では100%正しい情報なんてほとんどありません。みんな手探りの状態で支援を頑張っているのです。

しかし、古い情報のまま、親御さんに伝えたり、後輩や新人に指導をしている人とを見かけます。知らない人は真に受けてしまいます。

あなたは大丈夫?ですか?

 

 

どんなことが誤った情報なのか?(例)

 

実際には謝りやすい発言・考え方とはどのようなものがあるのでしょうか?

障害児分野の世界で、わたしがよく見聞きするものは次のようものです。

 

 

「手話」を使うと ことばが遅れる

 

障害を持つこの中には「喋らない子」「喋ることができない子」がいます。

そういう子に対して「身振り」「サイン」「手話」を使って相手に自分の気持ちや意図を伝える練習をすることがあります。

わたしも言語聴覚士(ST)ですので、サインなどの提案をします。

提案に対して「サインは止めてください」と保護者や支援員から言われることがあります。

理由を尋ねると「サインを使うとサインに頼ってしまい、喋れなくなるからです」と答えてきます。

それは完全に間違った過去の情報です。

むしろ 現在ではサインを使うことが音声言語の練習になると言われています。

自分の気持ちを伝える手段を得ることで「相手に伝えたい」というコミュニケーション意欲の向上にもつながるのです。

 

 

音が嫌いな人は全員「聴覚過敏」

 

遊びや活動で楽器遊びをしたり、他児が大きな声を出したときに過度に驚く子がいます。そういう子は全員「聴覚過敏」か?というはなしです。

支援者としてはそういう評価をしたくなる気持ちは分かります。

しかし、ちょっと待ってください。他にも考えられることがあるのです。

・そういう音を聞いた経験が少ない場合
 ⇒ 未経験、経験不足

・出るときと出ないときがある場合
 ⇒ 心理的過敏

「過敏」というのは「いつ」「どこで」「誰と」でも同じ反応が出ることを指します。

 


食事場面だけ気をつければいい「誤嚥性肺炎」

 

誤嚥性肺炎とは何らかの原因によって肺に菌が入って炎症を起こした状態です。

たしかに食事のときに肺に異物が入ることもあります。しかし、それ以上に加齢や睡眠中に起きた可能性の方が高いのです。

食事中だけ食べ方を気をつけていても、口の中が汚くてバイ菌だらけ(口腔内環境の悪い)だったら肺炎のリスクは上がります。菌が入った唾液が寝ている間に肺に入っていくのですから。

 

 

熱が出たから「誤嚥性肺炎」

 

発熱=誤嚥性肺炎とは言い切れません。熱が出ることもあるのですが必ずではありません。なので、食事に問題がある子が原因不明の熱が出たとしても、誤嚥性肺炎だとは限りません。

 

 

自分の殻に閉じこもる心の病気「自閉症」

 

以前、とある支援者が「自閉症の人は殻(から)に閉じこもりやすい心の病。だから優しく接していくのがいい」と言っているのを聞いたことがあります。

どういう意図で言ったのか定かではありません。原因は分かっていませんが現在は何らかの遺伝子のトラブルだと考えられています。

実際の自閉症の子は、他人のことを気にすることは少ないですし、性格が根暗だから自分の内側にこもっているわけでもありません。自分の周りにある情報をうまくキャッチできないので、自分の中だけで処理して生活、遊び、学習などを行っていると考えられます。

自閉症の子と関わったことがない人に対して「自閉症は心を閉ざす病気」のような伝え方をするのはいかがなものかと思います・・・。

 

 

何回も伝えれば理解できるはず「知的障害」

 

心を込めて、何度も何度も言ってあげれば相手が理解できるはず。それは正しいと言い切れません。支援者の「優しさ」からくる考え方だと思います。

障害を持つ子と関わるときにはポイントがあります。

子どもの「理解度」を考えて接するということです。

 

ex.
「おやつだよ」と声をかけたけれど反応しない

聞こえなかった?

その子の目の前でもう一度声をかけてみた

反応はない

お菓子の実物を見せて「おやつだよ」と言ってみた

来てくれた。分かったみたい。

 

どういうやり方だったら「分かる(理解できる)」のか?を常に考えてやり方を変えていくことが大切です。

反応しなかったからと言って「この子はワガママだ」「わたしは嫌われている?」と考えるのはちょっと違います。

 

 

どんな人が固執しやすいのか?


同じ施設に長く勤務している人の中にはうっかり誤った情報を発信しているケースがあるようです。もちろんすべての人ではありません。あまり情報のアップデートをしない人が陥りやすい印象です。


同じ職場で働き続けることにはメリットとデメリットがあります。

メリット:長期的に子ども(患者さん)をみることができる。
デメリット:考えなくても仕事ができるようになる。「なぜ?」「どうして?」をおろそかにしてしまいがちになる。

 

 

情報は日々変わっていく

エビデンスということばをご存知ですか?様々な場所で聞くことばだと思います。

 

エビデンス

とある治療や支援方法が効果のあるものだと統計等で裏付けが取れていること。

特定の子だけではなくて、どんな子にも効果があると分かっていること

※この「エビデンス」は業界によって使われ方が微妙に異なるので注意が必要です。

 

情報はどんどん変化します。

言語聴覚士などの専門職も同様です。以前はエビデンスに基づいたやり方だったとしても、現在は「正しくなかった!」と分かり、もはや誰も信じていないものになっていることもあるのです。

 

ex.
・味を感じる場所
 ⇒ 以前:舌の部位ごとに感じる味覚が異なる
   現在:どの位置でも味覚を識別できる
 ※味覚地図と味蕾の働き

この科学的根拠もどんどん変わっていきます。支援者自身が自ら情報を仕入れていかないと、思い込みだけで子どもを判断することになってしまうのです。

 

 

まとめとして

今回は障害を持った子(人)に関する「誤った情報」について説明しました。うっかり誤った情報を言ってしまう人も、自分が間違ったことを言っていると思っていないことが多いのです。

子どもに対しても失礼ですし、支援者自身も恥をかいてしまいます。

そんなことのないように障害や教育分野では日々、新しい情報をチェックすることは大切です!

間違っていることを言っている人に教えてあげることも優しさです。

注意とか嫌味ではダメですけれど。

専門職から保育職へ助言という形なら言いやすいかもしれません。

ぜひ参考にしてみてくださいね。