言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

食事(摂食嚥下)にも早期療育は必要か?

「食べづらさ」にも早期療育を 

何らかの障害や疾患が原因で食事をうまく取れない子たちがいます。

誤嚥してしまう摂食嚥下障害(せっしょく えんげ しょうがい)とまでいかなくても「うまく食べること」ができない子がたくさんいます。

一般的に子どもに障害が見つかったら療育を早くから始めることが推奨されています。

食事も同じように早くから訓練や練習をはじめたほうがよいのでしょうか?

今回は「食べづらさ」に対する早期療育について説明します。 

 

 

「食べづらさ」とは?

「食べづらさ」とはどのような状態でしょうか?

・うまく噛めない

・うまく飲み込めない

だけではありません。

・舌を使って食物を口の中でまとめづらい

・スプーンをうまくもてない

・おっぱいをうまく飲めない

障害や疾患によってうまく食べられない状態です。

本人が「食べにくいな」と感じている子もいます。

逆に自分の「食べづらさ」には気づいないケースもあります。

気づかないけれど日常的に誤嚥を繰り返している子もいます。

本当に子どもによって「食べづらさ」は様々なのです。

 

 

障害を持つ子の「食べづらさ」

「食べづらさ」は障害によって異なります。

なぜなら障害によって特徴や苦手なことが異なるからです。

では障害ごとの「食べづらさ」をみていきましょう。

 

 

① 脳性麻痺の子

 

よくある特徴

・ 身体を思い通りに動かすことが難しい
・ 口や舌、喉の筋肉や骨が協調的に動かない

ムセや誤嚥を繰り返してしまう

 

 

 


② ダウン症の子

 

よくある特徴

・ 低緊張のためにうまく母乳を吸えない
・ 舌をコントロールしづらい

食物を処理し切れずに丸飲みになってしまう

 

 

 

③ 自閉症スペクトラムの子

 

よくある特徴

・ 極端な偏食がある子もいる
・ 体幹を保つことが苦手
・ グッタリした姿勢になる
・ 丸飲みや反芻などの悪癖がつきやすい


※ 反芻(はんすう)

⇒ 一度飲み込んだものを逆流させて、そのまま口の中に入れること。

 

 

後回しにされがちな「食べること」

障害を持った子どもたちは様々な施設に通っています。

放課後等デイサービスや児童発達支援。

もちろん学校もあります。

もちろん、先生や支援者によっては「食べること」の支援に十分に向き合ってくれている人もたくさんいます。

しかし、重要度は低いことがおおいのです。

まずは「活動」や「勉強」。

その次に「食事」。

本来なら同等なはずなのです。

 

 

放課後等デイサービスでの対応

障害児が通う放課後等デイサービスを例に考えていきましょう。

放課後等デイサービスに通い始めるのは、早くても小学校(小学部)1年生からです。

就学までの時期に悪癖がついてしまっていることもあります。

癖ならまだしも、歯などの口の中が変形してしまっているケースも少なくありません。

こうなっては対応が狭まってしまいます。

だからこそ食事へのアプローチは、できれば、早いうちから病院や施設などで摂食指導を受けることが理想だと言われています。

ことばや認知面の苦手さに対して早期療育を受けている子は増えてきました。

しかし「食事」は「いまは食べられているから、とりあえず大丈夫」と問題が見過ごされていることが多いのです。

 

 

特別支援学校での対応

学校ではどうでしょうか?

就学すると給食が始まります。

特別支援学校では、子どもの食べる力に応じて食物の硬さや大きさが調整された「食形態」「形態食」が提供されます。

肢体不自由校は、「普通食」以外にも、

・食物の大きさが整えられた「練習食」や「一口大/カット食」

・バナナくらいの硬さにしてある「後期食」

・絹ごし豆腐くらいの硬さの「中期食」

・ヨーグルトくらいの「初期食」「ペースト食」

などなど。細やかに対応している学校が多いです。

しかし、知的校では「普通食」と「刻み食」しかないところや「普通食」しかない学校が多いです。

そういうところでは、学校の先生方がその場で潰したり、混ぜたりして対応しているのが現状です。

摂食に関して知識や技術を持っている頼もしい先生もいます。

しかし、そういう先生ばかりではありません。

新任で特別支援学校が初めての先生は、研修や他の先生から習ったり、独学するしか手がありません。

学校に歯科医師や言語聴覚士(ST)などの専門職が入っているところならば助言をもらえるのですが・・・。受けることもできます。

 

 

摂食指導はいつから始める?

摂食指導とは、食べることに何らかの問題を抱えている子に対する訓練指導、もしくは助言のことです。

はやくから訓練を開始すればよくなることも多いかもしれない。

では、摂食指導はいつから始めるのが理想なのでしょうか?

 

 

できるだけ早めに始めたい

先述しましたができるだけ早くから受けるのが望ましいです。

○歳までに、というのはありません。

しかし、就学前には子どもの「食べ方」を見てもらうことが大切です。

親御さんと歯科医師や言語聴覚士では「この子はこのくらい食べられている」というのが違っていることがあるのです。

 

早めに対応を取っていくということは、早い段階で安全に食べるための「土台」を築けるということです。

対応が遅くても、ある程度は力を伸ばすことは可能です。

しかし、早くから始めることに損はありません。

 

 

どこでみてもらえるの?

では、どのような施設でみてもらえるのでしょうか?

 

・療育センター

・病院

・各種小児施設(STがいるところ)

・学校

 

忘れがちなのが特別支援学校でも食事に関することをみてくれる人がいるということです。

・歯科医師

・言語聴覚士(ST)

この 2つの職種は食事をみてくれる専門家です。

 

食事の時の姿勢や車椅子の相談は

・理学療法士(PT)

・作業療法士(OT)

もみてくれます。

 

病院の摂食外来や未就学時の通所施設では、歯科医師や栄養士、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などが「食べづらさ」に対する取り組みを行っています。

市区町村ごとに体系が異なります。

気になるときは一度相談してみるとよいです。

 


「食べること」は「楽しみ」のひとつです

学校を卒業してからも毎日続いていきます。

「食べるための力」も「からだ」や「ことば」などの他の発達と同じくらい大切にしていきたいものなのです。

食べることは楽しみのひとつです。

仲間たちと一緒に安全に楽しく食べるために小さいうちから「食べること」にも目を向けてもらうとよいです。

 

 

まとめとして

今回は、食事の早期療育について説明しました。

障害や疾患を持っている子のなかには「食べること」に苦手さを持っている子がいる。

そういう子は、一度、専門機関に「食べる力」をみてもらうとよい。

はやくから専門の人にみてもらうことで悪い癖がつくのを予防することもできます。

完全に防げないものもありますが軽くすることはできます。

もう大きくなっている子もはやめに見てもらうとよいです。

よかったら参考にしてみてくださいね。