言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

【放課後等デイサービス】専門的支援実施加算で現場はどうなったか?【2024年4月】

専門的支援実施加算でみえてきた今後の支援とは?

放課後等デイサービスや児童発達支援の施設などの「福祉分野」では、施設は国からお金をもらって運営を行っています。

逆に言ってしまえば国からお金をもらえないと成り立たないのです。

 

・資格を持った人が働いているならお金をあげましょう
・障害の重い子が通っているなら余計にお金をあげましょう

 

このように国が決めた細かい基準をクリアしていくことで施設はお金がもらえるのです。

 

今回、令和 6 年度(2024年)4 月の「報酬改定」でも様々な変更点がありました。その中のひとつに「専門的支援実施加算」というものがあります。

これは、資格を持った人(専門職)が しっかりとした支援を行っていれば加算がつく(お金をあげるよ)というものです。

 

文字にすると簡単そうに見えるかもしれません。しかし、実際に働いている専門職からすると、これまでとやり方を大きく変える必要が出てきます。大変。

ここでは、令和 6 年度の報酬改定でリハビリ職はどう変わったのか?現場はどうなっているか?という話しをします。

放課後等デイサービスや児童発達支援で働くリハビリ職以外の支援員や保育士の人も知っておくと働きやすくなるはずです。

 

 

報酬改定って?

先ほど、施設は国からお金をもらって運営をしていると説明しました。さらに、決められた条件をクリアすることで通常よりも多くの点数(お金)をもらうことができます。この制度は数年(4年)に一度、ルールを見直すのです。それが今回の【報酬改定(令和 6 年)】です。

 

なかには法律を逆手にとって「楽して」儲けようとする施設がいます。

 

・障害の軽い子しか受け入れない
・施設では動画を流しているだけ

 

そんなズルい施設が増えてしまうと、国はお金を出し渋るようになります。真面目に頑張っている施設にお金が回らなくなり、結果的に営業できなくなるのです。

そのため、数年に一度、お金に関する見直しが行われます。それが「報酬改定(ほうしゅうかいてい)」と呼ばれるものです。

 

 

専門的支援実施加算とは?

令和 6 年から新設された加算です。これは、放課後等デイサービスや児童発達支援で理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの「専門職」がちゃんと働いている施設を優遇しますよ、というものです。専門職は次のような職種を指します。

 

 

どんな内容なの?

これまでは専門職が在籍しているだけで国からお金をもらえていました。しかし、今回からいるだけでなくて しっかりと機能してることが求められるようになったのです。

簡単に説明すると下記のようになります。

 

・自分の職種の力が発揮されるような療育や支援をしてね(リハビリとは明記していない)

・基本的には個別でやってね。ただし5名くらいまでなら集団もOK
・子ども一人につき 30分以上の専門的な支援を行いなさい
・実施したら記録を書いてね

 

詳細は国から出されています↓

『児童発達支援ガイドライン等の概要』
こども家庭審議会障害児支援部会
第5回(R6.3.28) 資料2
こども家庭庁支援局障害児支援課

 

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定
子ども家庭庁

 

 

現場ではどうなっている?

これまで、放課後等デイサービスでリハビリ職が どのように働くか?は各施設に任されていました。

2024年4月から「専門的支援」の制度が始まりました。言語聴覚士(S T)などの専門職の働き方に変化はあったのでしょうか?

 

 

専門職の支援は良い?悪い?

【専門的支援実施加算】をとるためには、専門職がどんどん支援に入っていく必要が出てきます。今まで「放デイは支援職のものだから」と言われて肩身の狭かった専門職でも「もっとやりなさいよ」と言われるようになるはず。

専門職が支援に加わることにも、もちろん、メリットとデメリットがあります。

 

メリット

・放デイで必須でなかった「専門職の目標」が必要とされる
・自分たちの知識や技術を活かして、より専門的な支援を提供することができる

 

デメリット

・「とにかく やってよ」と無茶を言われる
・突然すぎて資料作りの時間が足りない
・支援職が意見を言いづらくなってしまう

 

 

メリット

メリットは次のようなものが考えられます。

 

・専門職の目標や訓練計画を求められる

これまで、放課後等デイサービスにいる言語聴覚士(ST)などの専門職には、訓練目標や計画は国から求められていませんでした。

もしも、これまでも目標や計画があったよ、という施設があったなら、そこの専門職はやる気のある素敵なセラピストなんだと思います。

今回【専門的支援実施加算】をもらうためには、訓練目標&計画の作成が義務付けられました。これは、訓練を受ける側(子ども)にとってはメリットです。

 

 

・自分が知らないことを教えてもらえる

 保育士や支援員が、自分の職種の専門でない部分を理学療法士(PT)などに頼ることができるのは大きなメリットです。いままで何となく行ってきた 遊びや活動、支援の意味を知れたなら

 

 ex. バランスボール

「イエーイ」と言いながら子どもをボールに乗せて揺らせるだけ。子どもが笑っているから良い支援のはず!

⇒ 感覚刺激を入れる等の「目的」を設定したほうがよい

ex. 楽器遊び

激しく鳴らしておけば子どもたちが笑う。じゃあ、振り続けておけばいいか。

⇒ 音に気づいているか?気持ちは昂り過ぎていない?楽器の持ち方は?など、見るべき箇所がたくさんある

何気ない遊びの中にも、より良い姿勢や声かけ、タイミングなどがあるのです。専門職はそれを知っているので教えてもらえるチャンスでもあります。

 

・子どもとの関わり方を学べる

⇒ 支援職が中心をなって活動を進めていた施設も多いはず。しかし、何が正解か?不安なまま支援を行っている人も多かったのではないでしょうか?

自分とは異なる職種の人が中心となって行う支援や訓練を見ることで、「こんなやり方もあるのか!」と気づくこともできるのです。

 

 

デメリット

メリットがあるのはわかりました。では、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

 

 

・仕事量が偏る

たとえば、言語聴覚士(ST)が普段の活動を仕切っている施設があるとします。活動の立案から準備まで。人手の関係で全て一人で行っている人もいるでしょう。

そこに【専門的支援実施加算】をもらうためには「記録」「目標設定」「資料作成」など、確実に仕事が増えます。

わたしも突然、仕事が増えました。

 

・支援員の立場

さらに、今回の【専門的支援】は条件を満たした人にしか実施することができません。そのため、「活動は【専門なんちゃら】の人がやるんでしょ。わたしたちは言われたことだけやればいいか」となる人も出てきます。

そういった人たちの時間を頂いて訓練を行うケースも出てくるはず。今まで持っていた仕事が減るというのは、モチベーションの低下につながっていきます。

活動の準備を一緒にお願いする、あらかじめ活動のねらいや流れを説明する等の「下準備」をお願いしておくことが求められます。

 

 

今後の課題

専門的支援実施加算は まだ始まったばかりです。問題やトラブルも起きるはず。今後、修正の可能性もあります。現在「課題」となっているのはどのような点なのでしょうか?

 

私が考える一番の課題は、放課後等デイサービスの意義が薄れてしまうことです。

・リハビリに重点を置く施設が増えるかもしれない

・リハビリ職を中心とした専門職の存在意義

 

 

放デイはリハビリ施設なのか?

一番勘違いされやすいのが「放課後等デイサービスはリハビリをする場所」という点。これは違いますよね。

確かに、親御さんは自分の子どもが「できること」が増えれば嬉しいはずです。しかし、支援者側が「あれも」「これも」と子どもをリハビリ漬けにしてしまうのは・・・。

認知面や情緒面の育ちをサポートするなど、放課後デイサービスだからこそ できることもあるはずです。

 

ex. 

危険予測がまるでできていない子に、認知訓練・支援は全く行わずに、独歩を目的とした歩行訓練ばかりに力を入れると、事故やトラブルが増えてしまうのは目に見えています。

ex.

食べる機能が十分についていない子に、ひとりで食べる(自食する)ことを目的とした食具を使う練習ばかりすれば、窒息などの事故のリスクは増えるはずです。

 

 

専門職以外の職種はどうなるのか?

リハビリ職や経験の長い保育士などが【専門的支援加算】の対象となることを説明しました。では、それ以外の職種に影響はあるのでしょうか?考えられるのは次のような点です。

 

◆支援職独自の活動の時間が減るかもしれない

⇒ 【専門的支援実施加算】を得るためには最低でも30分やる必要があります。そのため、これまで支援職が行っていた放デイの活動時間を削って【専門的支援】を行うケースが出てきます。

◆活動をチーム分けする必要があるかもしれない

⇒ 小集団でもOKなのですが5名程度とされています。障害や状態を加味したうえでのメンバー構成にする必要があるようです。

放デイには様々な子どもたちが通っています。同じ日に同じ発達段階の子が集まらない場合もあるはずです。

その場合には「専門的支援実施」チームと「その他の活動」チームにグループを分ける必要が出てきそうです。

 

 

まとめとして

今回は、令和6年度 報酬改定の【専門的支援実施加算】についてお話ししました。

書類づくりや記録など、専門職の仕事は確実に増えます。しかし、これまで施設側に専門職の「持ち味」を認めてもらえなかったセラピストにとってチャンスになるのではないでしょうか?

この制度は、楽をしようと思えばいくらでも手を抜くことのできるものだと思われます。だからこそ、一生懸命にやる。

この際、味方を増やして支援を行っていくことが子どものためになりますし、セラピスト自身の成長にもつながるのではないでしょうか?

以上、令和6年4月時点の感想でした。よかったら参考にしてみてくださいね。

 

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