“それっぽい療育”が生まれる理由
「活動はしている。でも、これって本当に“療育”なのかな?」
放デイで働く人なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
放課後等デイサービス(放デイ)では、今日も様々な「療育」が行われています。様々な理論や療法があり、それぞれ魅力的です。しかし、「療育」をキッチリと行っている施設は意外と少ないのです。
そのかわりに多いのが「何となく」「それっぽい」療育的な活動です。この「それっぽい療育」は、スタッフの能力が低いから生まれるわけではありません。 現場の構造そのものが、そうさせてしまう仕組みになっているからです。」
先輩スタッフから言われた通りに「療育」や「活動」を行ってきたけれど、やっていてスッキリした感じがしない・・・。
それには理由があるのです。
この記事では、
①なぜ「それっぽい療育」が生まれるのか?
②そこにはどのような構造的な理由があるのか?
③では、どうすれば抜け出せるのか
を順に整理して説明していきます。
※ 誰かを批判する意図はありません。「そうなりやすい理由」を知ることで、支援の質を上げるヒントにつなげてもらえたら嬉しいです。
療育に関わる専門職の例
いわゆる「療育」に関わる職員は次のような職種のスタッフが多いです。
理学療法士(PT):身体の動作支援
作業療法士(OT):手の操作・感覚統合支援
言語聴覚士(ST):言語・コミュニケーション支援
心理士 :情緒・行動面の支援
保育士・支援員 :生活支援、関係づくり、日常の発達支援
放デイでは、必ずしも専門職だけが療育をするわけではなく、非専門職が支援を担う場面も多いのが特徴です。
「それっぽい療育」が生まれやすい3つの理由
そもそも「療育」とは、どのようなものなのでしょうか?
「療育」とは 医療(療)+教育(育) を合わせた言葉で、発達に課題のある子どもに対して、体系的(=筋道が通っている)な支援を行うことを指します。発達障害の子だけではなく、肢体不自由児、病弱児等にも使われています。
「それっぽい療育」が生まるのには理由があります。一番の理由は、そういう施設だから。・・・それでは、あんまりなので、もう少し詳しく説明していきます。
理由は大きく分けて、次の3つです。
① 研修が足りない
多くのスタッフは、入職後に体系的な研修を受けないまま現場に立ちます。
その結果——
・何を基準に子どもを見ればいいか分からない
・「活動=療育」と誤解しやすい
・とりあえず“やっている感”を作ろうとする
こうして 「なんとなくの療育」が量産される のです。
② 現場の忙しさ・評価の歪み
放デイはとにかく忙しい日が多いです。
そこへ加わるのが、保護者・行政・事業所からの「療育は?」「療育してますよね?」の圧力です。現場にも様々な問題があります。
・スタッフ間の知識差が大きい
・慢性的な人手不足
・“見える活動”だけ評価されやすい
・新人でもすぐに活動を任される
こうして、中身よりも“形を整えること”が優先される仕組みができあがってしまいます。
③ モチベーションが高い人ほど疲弊する理由
療育や支援、活動のことを誰からも教えてもらえない新人。自分で勉強するしかありません。真面目に勉強しているスタッフほど、こんな矛盾にぶつかります。
・危険予測が弱い子に、無理に「移動スキル」を求める
・状況判断が難しい子に、作業技術だけを鍛えようとする
土台が整っていないのに「できること」を増やしても、逆に事故やトラブルにつながることもあります。子どもの発達状況などの現状を把握しないで「できること」を求めても、どこかで問題が起こるのです。
支援はショーではありません。少しずつ土台を積み上げる地道な作業です。しかし、そこが現場とすれ違いやすいポイントでもあります。
新人がつまずきやすい“構造的な理由”
特に新人や経験の浅いスタッフがつまずきやすいのは次のようなときです。
① 職種ごとの前提の違い
放課後等デイサービスでは、障害を持つ子をみています。職種によって「見方」「考え方」が異なる部分があります。
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リハ職 |
・障害・発達・検査・訓練を体系的に学んでいる ・発達の順序をみるのが得意 |
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支援職 |
•実践重視で学んでいる •発達や障害の専門理論を学ぶ機会が少ない |
この“前提の違い”から、どうしても「形だけの活動」が起きやすくなります。
・光るおもちゃ → 「スヌーズレンです」
・カードを見せる → 「マッチングです」
・玩具遊び → 「療育です」
左がスヌーズレン。右が光る玩具。
光る=スヌーズレンではないのです。
これは怠慢ではありません。教わる仕組みがないから起きる、構造的な問題なのです。
② 活動=支援という誤解
工作・運動・ゲーム・音楽・・・。楽しそうなものはたくさんあります。これらは あくまで“手段” です。
しかし現場では、
・活動がたくさんある
・子どもが盛り上がる
・スタッフが忙しく動く
だけで “支援できている気がする現象” が起こりがちです。支援の中心は 活動ではなく、子どもそのもの。ここが大きなポイントです。
③視点の欠如による問題点
障害を持つ子をみるためには「視点」という「方法」や「尺度」があると便利です。視点とは“子どもを見る物差し”のことです。
「発達段階」「感覚の特性」「認知のプロセス」など、複数の“物差し”を持っているほど、子どもの姿が立体的に分かるようになります。代表的な「方法」や「尺度」は、「発達段階」「○○療法」「○○理論」などがあります。
では、この「視点」が欠けると何が起きるのでしょうか?
・この遊び、難しくなかった?
・おとなしい子が置いてけぼりになっていない?
・前回より理解が少しでも深まった?
こうした 小さな変化を捉える視点 が抜けると、どんな活動もただのイベントになってしまいます。
支援は、子どもの“今ここ”をフラットに見るところから始まります。
“活動ありき”から抜け出すために
考えて療育を行うために、気をつけたいポイントを紹介します。
① 子どもの「気づき」を促す支援を!
立派な目標より、小さな「気づき」を生むことが何より大事です。
・「前にやったやつだ!」と気づく
・「こうすると変わるんだ」と発見する
・「この動き、なんだか楽しい」と感じる
「気づく」ということは、楽しさを感じたり、次をやってみようと思ったり、発達の土台ともいえる、自分で「やってみよう」「感じてみよう」を促すことです。
この“気づきの種”こそが、発達を支えるのです。
② 中立に観察する
大人の主観は、子どもの姿を歪めます。
・「できるはず」→ 実際より高く見える
・「無理だよね」→ 実際より低く見える
大人の思い込みは偏見を生みます。正しい評価ができなくなってしまうのです。
支援者には、中立で、ていねいに、子どもを観察する姿勢 が求められます。
③小さな変化を見取る方法
支援に絶対の正解はありません。職種によって価値観が違うのも当然です。
だからこそ大切なのは、ちょっとした考え方。支援に入るときに、頭の片隅に置いておきたいのは次の3つ。
・批判ではなく「視点の共有」
・「こんな考え方もあるよ」と話せる関係
・子どもを中心にした協力体制
これらを築くためにエネルギーを使ってみるとよいです。
まとめとして
今回は「“それっぽい療育”が生まれる理由」について紹介しました。
ギスギスした雰囲気では、良い支援は育ちません。まずは「子どもの姿をそろって見ること」。他職種は敵ではありません。心強い味方です。みんなで一人の子どものことをしっかりとみていく。それだけで、現場の空気は大きく変わります。
今日の支援から、ぜひ意識してみてください。
よかったら参考にしてみてくださいね。
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