療育っぽさを障害児との“関わり”を考える――活動よりも大切なこと」
「この活動、意味あるのかな?」「子どもたちは理解しているのかな?」そう思ったことはありませんか?
放課後等デイサービス(以下、放デイ)では、毎日のように“療育”と呼ばれる活動が行われています。
療育を行うためには、専門的な知識が必要です。この「知識」は研修や勉強会などを通して誰でも学ぶことができます。
この療育的な知識、障害児支援の分野では崇高的な、「すごいもの」として扱われる傾向にあります。そのため、支援者たちは、こぞって療育っぽいことをし始めるのです。そして、それを自分のところの施設の特色として全面に出していきます。
わたしは、これまで言語聴覚士として放デイに携わってきました。
しかし、10年以上この現場に関わってきた今、思うことがあります。
――「療育がすべて」ではない、ということを。
この記事では、障害児支援において、療育や活動以外にも大切なことがあるんだよ、という話しをします。
放デイの活動とは?
放デイは、障害を持つ子たちが、学校が終わってから家に帰るまで過ごす場所です。毎日、子どもたちと一緒に様々な活動を行っています。
・散歩
・工作
・調理
その他に、夏祭りやクリスマス会など季節ごとのイベントもあります。最近では活動の様子をSNSにあげる施設も増えています。支援中もスタッフが写真を撮る機会も増えてきました・・・。
「よい療育」を求めるあまり見失うもの
多くの放デイでは、「質の良い療育をしたい」という思いがあります。
それ自体は素晴らしいことです。けれど、ときどきその思いが「形だけ」の活動に変わってしまうことがあります。たとえば、こんな場面を見たことはないでしょうか。
・子どもの理解度に合っていない本を、雰囲気だけで読み聞かせる。
・「リハ職なんだから体操を作って」と、無理にプログラムを押しつける。
・黒ひげ危機一髪を「活動」として、一人一回やって終わり。理解していない子も、ただ手を持たれて参加しているだけ。
・「すうじのうた」を流せば、数字が理解できると信じている。
・活動が始まるまで、子どもの横で黙って座り続けるスタッフ。話しかけもせず、「始まるのを待つだけ」。
こうした場面はどれも、「良かれと思ってやっている」のが共通点です。だからこそ、「なぜやるのか」を立ち止まって考える時間が必要なのです。
どれも「よいことをしているつもり」で起こる光景です。しかし、そこには「なぜやるのか」という目的が抜け落ちてしまっています。
「活動がすべて」ではない理由
放デイは、学校が終わって、家に帰るまでの数時間を過ごす場所です。塾のように明確なカリキュラムがあるわけでも、病院のように治療を行う場所でもありません。
もちろん、活動を行うこと自体は大切です。けれども、わたしは、活動以外の場面こそが、支援の土台になると感じています。
たとえば――
・気軽に声をかけてもらう経験
・みんなで輪になって他愛もない話をする時間
・買い物の途中でアイスを一緒に食べる、そんな経験
どれも、一見「療育っぽくない」かもしれません。しかし、子どもたちはそうした日常の中で、人との関わり方、空気の読み方、安心感を学んでいくのです。
「感じ取れる支援」を大切にしたい
重症心身障害児や肢体不自由児の中には、ことばの理解が難しい子もいます。しかし、雰囲気やトーン、空気感を感じ取る力を持っている場合もあります。
「ことばが分かるか どうか?」よりも「心地よいと感じるかどうか?」
支援の原点はそこにあるのではないでしょうか。
「話しかけられる」「笑いかけてもらえる」「一緒に過ごしてもらえる」。その一つひとつが、子どもたちにとっての「社会との接点」です。
「近所のお兄さん・お姉さん」であるという姿勢
放デイで働くスタッフの年齢はさまざまです。20代の若い人もいれば、60代を超えるベテランもいます。しかし、どの年代のスタッフであっても、子どもたちにとっては
「学校帰りに遊んでくれるお兄さん・お姉さん」のような存在であってほしいと思います。
「先生」や「専門職」として接することも大切ですが、それだけでは距離ができてしまうこともあります。
ときには一緒に笑い、ふざけて、子どもたちの世界に混ざってみる。その柔らかい関わりが、実は最も深い“支援”になることがあるのです。
「雑談」こそ最高のコミュニケーション練習
わたしはスタッフたちに、こう伝えることがあります。
「子どもがいる時間に、少しお喋りをしてもいいですよ」と。
ただし、愚痴や悪口ではなく、その場を楽しくする話題で。
「昨日の夜ごはん何食べた?」「今日寒いね」――
そんな他愛のない会話が、子どもにとっては「ことばの水やり」になります。
大人同士のやり取りを見て、子どもは学びます。「人とコミュニケーションをとるってこういうことなんだ」と、少しずつ吸収していくのです。
こんな地味なことでも、毎回、丁寧に行っていくことが、子どもたちの血となり骨となるはずです。信頼だってしてもらえるかもしれません。
子どもが好きなのは「自分のことを理解してくれようとする」大人です。
STとしての役割
言語聴覚士(ST)は、“ことば”の専門職です。しかし、「ことばを教えること」だけが仕事ではありません。放デイという現場では、
・会話を生み出す“空気”を作ること
・子ども同士やスタッフ同士のやり取りを観察し、気づきをチームに伝えること
・ことば以外の“感じる力”を支援すること
STが現場にいることで、チームは「子どもを多角的に見る目」に意識が行くようになってきます。ことばの背後にある感情や、伝え方の工夫を共有することで、スタッフ全員の支援がより穏やかになります。
こうした関わりがSTの重要な役割だと、わたしは感じています。
まとめとして
今回は、障害児施設では療育や活動ばかりもてはやされるが、本当に大切なのは「それ以外」に隠されているのかもしれない、という話しをしました。
放デイの支援は、活動の“プログラム”だけでは語れません。その外側にある、何気ない時間こそが、子どもの成長を支えています。
「よい療育」を目指すことは大切。しかし、それ以上に「よい関わり」があるかどうか。
「今日、この子と笑い合えたかな?」
「この子に安心してもらえたかな?」
そんな問いかけを、日々の終わりにそっとしてみる。それが、放課後等デイサービスの「本当の支援」なのかもしれません。
障害児支援が初めてでも、壁にぶつかっている経験者でも、難しく考える必要はありません。まずは、目の前にいる子に話しかけてみてください。質問攻めにするのではなく、友だちに話しかけるように。きっと笑顔になるはずです。
よかったら参考にしてみてくださいね。
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