言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできることを模索しています

吸引・排痰の基礎!医療職以外のスタッフが知っておいたほうがよい知識

吸引・排痰の超基礎知識

最終更新:2020.12.31

 

排痰ってなに?用語がややこしいんですけど・・・

 

今回は、排痰(はいたん)についてです。
排痰の用語はたくさんあります。
吸引、吸入、スクイージング、ドレナージ・・・

頭が痛くなってしまいますよね。

これらの用語は覚えなくてよいです。今回は排痰のイメージを持ってもらえればOKです。
 

 


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【質問】
そもそも吸引って何?

チューブを口や鼻に入れる範囲やチューブのサイズが決まっているんですよね?

その理由や効果が分かりにくいので教えください。

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痰ってなに?

痰というのは、肺に入ってきた異物をからめとって外に出されたものです。

この働きがあるので、肺はきれいな状態を保つことができ、病気を防ぐことができます。

乾燥すると、痰が硬くなってしまいます、また、生成されにくくなります。

硬くなると、肺の壁にへばりつくので、出しづらくなります。

 

 

吸引ってなに?

 

吸引とは

私たちは無意識に呼吸をしています。

空気は気道を使って、口から肺へ出入りしています。

この空気の通り道である気道。ここに痰がこびりついていると、空気の通りが悪くなり、苦しくなってしまいます。

そういうときには、チューブを鼻や口から気道内に入れて分泌物を除去します。

それが「吸引」です。吸引器を使います。



吸“引”とは気道内の邪魔なものを“引く”(取り除く)ことです。

邪魔なものは、痰だけではなく、鼻水や唾液、逆流した胃液や栄養剤など、様々です。

吸引は医療的ケアです。

そのため、放課後等デイサービスで医療的ケアを実施するためには医師からの指示書が必要です。

私たちの施設では、半年に一度、主治医からの指示書をもらっています。

親御さんが病院まで取りに行きます。指示書を出してもらうにも、いくらかお金はかかります。


放課後等デイサービスで医療的ケアが行えるのは看護師だけです。

その指示書では、チューブの太さや入れる長さが決められています。

ときどき、指示書に具体的な長さや太さが書かれていないケースがあります。

そういうとき現場は混乱します。

なんのための指示書だ、と。

 

 

チューブの太さは?

小児の施設でよく見かけるのは「8Fr」「10Fr」というサイズです。

太さの単位はFr(フレ)。

どのくらいの太さなのかというと・・・

Fr=mm×3 mm=Fr÷3

8Fr = 8÷3  →2.7mm
10Fr = 10÷3  →3.33mm


2~3mmの管が鼻や口から入ります。

年齢(体重、身長)、その他状況などから太さが決まります。

 

以前、私も吸引の講習会に参加しました。

その際、参加者同士、お互いにチューブを入れ合いました。

鼻から入れた時、10Frだと痛かったので8Frにしてもらいました。この1mm弱の差は大きいのです。

(一緒に参加した同僚のSTは鼻血を出して、そばにいた女の子に心配されていました。彼は鼻血を出しながらニヤニヤしていました。)

 

 

窒息時に吸引器は有効?

もしも、窒息した場合でも、日常使用している吸引チューブでは内径が狭い(細すぎる)ため、食塊を吸引することはできません。

しかし、施設には「8Fr」「10Fr」しかありません。

そういうケースも多いかと思います。

うちには吸引器があるから窒息をしても大丈夫!

ではなく、常日頃から窒息時に何ができるのか?という確認をして対策を練っておくことが大切です。

重心の子であっても、その他障害の子であっても、です。


ex.
背部叩打法(はいぶこうだほう):
⇒ 肩甲骨の間をトントンと強く早く叩く方法

 

掃除機を使ってのどに詰まったものを取ればいいじゃない?

そう思うかもしれません。

しかし、掃除機の吸引力は強力過ぎます。

掃除機を喉に突っ込んだら、大人でさえ肺の中の空気がなくなってしまいます。

子どもならなおさらです。

掃除機に取り付けて、吸引力を調節する「吸引ノズル」は市販されています。

 

 

チューブを入れる場所

チューブを入れる場所は

・「鼻」

・「口」

・「気管切開をした場所(気管カニューレ)」

の3カ所です。

どこまでいれるか?

本来は、異物がある場所まで入れられればよいですが、実際には、指示書に書かれている箇所までの挿入です。

 

 

吸引のリスク

・粘膜が傷つけば血が出ます

・嘔吐反射の誘発部位に触れれば「オエッ」となります

・強すぎる吸引力では肺にダメージを与えます

 

子どもの症状にもよりますが、本来、吸引は、毎日ルーティーンで行うものではありません。

本来、少し頑張ばれば自力で痰を出せる、というのが理想だと思います。

体位を変えるだけでも出せるケースもあります。

しかし、体調や状況にも左右されることも多いのです。

 

 

放デイの問題

「何を基準に吸引を実施するのか?」

この判断が放課後等デイサービスでは難しいのだと感じています。

看護師に判断をお願いする

とはなっているはずですが、いろんなところで大人の意地の張り合いになっています。

・どの段階から看護師が介入してよいのか?
・どこまで子どもに自力で痰を出してもらうのか?

ドレナージ等の手技をやらせてもらっている私の反省でもあるのですが・・・。

子どもの利益を最優先にやっていきたいです。

 

 

吸入

吸“入”は煙を“入”れる方です。「ネブライザー」と呼ばれる機器をつかう方法です。

 

 

耳鼻科でも診察後に吸入を勧められますよね?あれです。

小児耳鼻科に行くと、ネブライザーの霧に甘い香りを付けてあるところもあったりします。

一般的にはネブライザーに薬を入れて使います。

例えば、気管支喘息などがある人は、ネブライザーを使って、ステロイド剤や気管拡張剤などを霧状にして取り込みます。そのほうが、効率的に患部に効くからです。

薬を入れない場合があります。それが加湿を目的としているときです。

保育中に使っているネブライザーには、薬剤は入っていません。水道水+精製水or生理食塩水です。

のどを潤すだけではなく、ネバネバした痰を加湿することでサラサラにすることで、出しやすくします。

薬剤を使わなければ、医師や看護師でなくても使うことができます。

 

 

吸引以外の排痰

保育中に理学療法士の先生が、子どもの身体をゴロゴロ転がしたり、触ったりしているを見たことがある方もいるかもしれません。

あれが「吸引以外の排痰」です。

その中の「スクイージング」と「体位ドレナージ」と呼ばれるものです。

①「スクイージング」

⇒ 呼吸に合わせて胸郭に手を当てて、圧迫させることで、溜まった分泌物(痰)を気道へ移動させる手技。

②「体位ドレナージ」
⇒ 重力を利用して溜まった分泌物(痰)を移動・排出させる方法。


これらは、本来は、理学療法士(PT)の分野で、排痰理学療法と呼ばれています。まれに言語聴覚士(ST)でもやっている人はいます。

この2つを併用して使います。ただマッサージをしているわけではありません。

子どもの呼吸を補助しながら、肺の内側の壁にこびりついた痰を、重力で落とそうとしているのです。

手技の途中で聴診器を使っているのは、「肺のどの部分に痰がくっついているかな?」と確かめているのです。

肺から痰を追い出すのが役目です。

しかし、追い出した時点では、肺の少し上、首辺りに潜んでいます。


気道から出てきた痰を排出する方法は2つあります。

・咳で口から出す
・飲み込む

のどちらかです。


これが自力でできない子は、

・重力を使って口から出す
・吸引をする

などの方法で対応します。

 

 

言語聴覚士と呼吸・肺痰

 

医療職のひとつである言語聴覚士(ST)。STと吸引・排痰はかかわりがあるのでしょうか?

 

 

言語聴覚士の現状

 

STは、養成校で排痰の技術を学びません。排痰の手技を使えるSTは、卒業後に自分から学んだ人です。重症心身障害児がいる施設で働いていると「呼吸」の問題にぶつかります。

排痰は、痰絡みのひどい子や自力で痰を出すことの出来ない子に対して、痰を出すアプローチの総称です。主に、理学療法士(PT)が呼吸リハとして行うものです。

言語聴覚士は「PTにお願いすればいいんじゃない?」と考えがちです。しかし、常にPTがそばにいるとは限りません。

自力で痰を出せない子に対して「どうすることも出来ない」と感じている言語聴覚士は多いのではないでしょうか?

 

 

自分から学ばないと誰も教えてくれない

 

先日、排痰、吸引の研修を受けてきました。

意外と忘れられがちですが、言語聴覚士も吸引を実施することができます。研修では、参加者同士で実際に、口腔内吸引と鼻腔吸引をやることができました。感想は

・体験してみて→苦しかった
・実施してみて→難しかった

 

日常的に痰吸引を行なっている子がいます。一回体験しただけでも苦しいと感じたものを、ほぼ365日やらないといけないのです。

講師の先生は、何度も「(吸引を受ける側の)親身になって、愛情をもって」とおっしゃっていました。吸引もそうだと思います。それ以外の支援もそうだと思います。初心に帰ることが出来た研修でした。

 

 

言語聴覚士と法律

 

「言語聴覚士の吸引の条件等」は下記の通りです。

言語聴覚士は、嚥下訓練等を実施する際などに吸引を行うことが出来ます。 言語聴覚士法(平成9年法律第132号)第2条の「言語訓練その他の訓練」に含まれるものと解し、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)が実施することができる行為として取り扱う
『医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について』
(平成22年4月30日/厚生労働省医政局長)

  

今回の研修で排痰の手技を習ってから、少しずつ慎重に試しています。聴診して、排痰を促して・・・ 偶然なのかもしれませんが、やらなかった時よりも、ずっとたくさんの痰が出てきました。これまで、自力喀痰が出来ない子には吸引することが当たり前でした。吸引をすれば痰がなくなって呼吸が楽になります。しかし、つらい。

体位を整えたり、手技を使ったりして排痰を促すことで、痰を出すことが出来れば、即、吸引ということは減ります。(もちろん、吸引を出来るのは、Dr.の指示書がある子だけですが)

 

 

何でもかんでも、とにかくやってみる!というのは何か違う

しかし、内容によっては、私たち言語聴覚士が、知識や技術をつけることで、ちょっとだけ楽になる子がいるのは確かです。

実際のところ、吸引以外の排痰はエビデンスが少ないと言われています。 研修で講師の先生が

「エビデンスが低いのは、報告の数が少ないのも原因のひとつ」

「吸引は最終手段」

とおっしゃっていました。

しかし、自分が今持っている知識や技術に幅を持たせるために、何かをプラスしてみる、という考え方は大切です。そのへんが、STは、卒業してからの勉強が大切と言われるゆえん。

 

 

詳しくはこちらの記事をどうぞ!

障害児施設での医療行為。看護師に何をお願いすればよいのか?

  

 

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参考文献

人工呼吸 第 27 巻 第 1 号 50 〜 56 頁(2010 年)小児の気管チューブ管理
http://square.umin.ac.jp/jrcm/pdf/27-1/kikanshi27_1_pdf01.pdf