言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

障害児施設での医療行為。看護師に何をお願いすればよいのか?

医療ケア、医療行為と放課後等デイサービスのはなし

 

近年、医療的なケアが必要な子が増えてきています。そのため、生活を中心とした放課後等サービスでは、医療的ケアを行える人が必要になってきています。

「重心指定」という指定を国から受けている施設であれば、看護師が常駐しているはずです。そのため、少しでも医療的なことは看護師にお任せしている施設が多いはずです。今回は、保育スタッフやその他専門職ができる医療的な行為についてのはなしです。

 

 

 

医療行為ってなんだ?

医療行為、医行為とは、医師法で下記のように定義されています。

 

医行為とは

医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害 を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うこと

 「医行為」について
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/s0203-2g.html

 

医師や歯科医師、看護師しかやってはいけないことです。内容が曖昧なため、誰が何を行ってよいのかがはっきりとしていませんでした。そこで、厚生省(当時)が2005年(平成17年)に「医師ら以外も者がやってもよいこと」を明示しました。

 

 

医療行為ではないものは?

厚生省は下記のものが医療行為(医行為)ではないと通達しました。これらの行為は、医師、歯科医師、看護師でなくてもできるということです。

 

・体温計測定

・自動血圧測定(水銀除く)

・軽微な傷のガーゼ交換

・軟膏塗布

・湿布貼り付け

・点眼

・鼻腔噴霧

・一包薬、舌下錠の内服

・座薬挿入

 

下記のものも、制限はありますが医療行為とはみなされません。

 

爪切り(専門的な管理が必要でない場合)

口腔ケア(重度の歯周病等がない場合のみ)

耳かき(耳垢塞栓の除去を除く)

ストーマ装具の排泄物の処理(肌に接着したパウチの取り替えを除く)

自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと

浣腸すること(市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて)

 

など

医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)より 

 

これらが、放課後等デイサービスでも行うことのできる「医療行為」ではない行為です。

ただし、施設によっては、点眼はOKだけれど、塗り薬はNG、というところもあります。「感染症リスク低減のため」など様々な理由や基準があるからだと考えられます。投薬等は、何も聞かずに施設に丸投げではなく、相談しながら進めていくと問題は起こりにくくなると思います。

 

 

   

放課後等デイサービスと看護師

 

放課後等デイサービスには、看護師がいる施設もあります。子どもがちょっと怪我をしたときに処置をお願いすることがあり、助かります。放課後等デイサービスに限らずですが、看護師がいる施設で起こりやすい問題があります。

 

 

看護師になんでもお願いしていいの?


おそらく「医療的なこと」はなんでも看護師に質問したり、やってもらったりすることが多いと思います。

怪我の対応や処置をお願いするのは分かります。しかし、医師ではないので、診断はできません。自分が経験してきた科というものがあるので、分野によっては、得手不得手があります。

以前、看護師の同僚が、こんなことを言っていました。

わたしに目や耳のことを聞かれても困る。専門じゃないし・・・。

そりゃ、そうだ。

 

 

看護師に何をお願いするのか?


さらに、勘違いしやすいのが、看護師は医療的なことなら何でもやれる、ということです。看護師は、医師の指示により医療行為の補助を行っています。現に、医師の指示書があれば、放課後等デイサービスでも、吸引や薬剤吸入などの医療的ケアを行うことができます。

看護師は、医師の指示により医療行為の補助を行うはできますが、すべての医療行為を行えるわけではありません。

医療行為にも種類があります。それが


 a)絶対的医行為

   医師しかできないもの。

 b)相対的医行為

   医師以外でもできるもの。

 

があります。相対的医療行為であっても、だれでも自由に行ってよいわけではなく、

・看護師などの医療関連職種の資格保持者が行う方がよい行為

・資格を持っていない人でも行える行為

 があるのです。

 

放課後等デイサービスでの看護師は、

・医療的ケアの必要な子への処置

・予防、感染症対策

がメインとなることが多いです。それ以上に「看護師がいれば大丈夫だ」という心の支えという意味合いは非常に大きいのです。 

 

 

言語聴覚士と医療行為

 

ちなみに、言語聴覚士と医療行為は・・・

診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、 嚥えん下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる 

言語聴覚士法
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80998053&dataType=0&pageNo=1

 

つまり、医師や歯科医師のオーダーがあれば、食物を使った直接的な嚥下訓練などができますよ、ということです。

食べることに問題がある子がいる場合、保護者の方から医師へ「子どもが通っている施設には言語聴覚士がいます」と伝えてもらえると、何かオーダーがもらえることがあるのです。そのオーダーをもとに訓練を行うことができます。

また、吸引を行うことができます。養成校ではほとんど習っていないはずなので、外部講習を受けた方が確実です。

 

 

まとめ

医師、歯科医師、看護師以外でも放課後等デイサービスでやってよいこと


・体温計測定

・自動血圧測定(水銀除く)

・軽微な傷のガーゼ交換

・軟膏塗布

・湿布貼り付け

・点眼

・鼻腔噴霧

・一包薬、舌下錠の内服

・座薬挿入

・爪切り(専門的な管理が必要でない場合)

・口腔ケア(重度の歯周病等がない場合のみ)

・耳かき(耳垢塞栓の除去を除く)

・ストーマ装具の排泄物の処理(肌に接着したパウチの取り替えを除く)

・自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと

・浣腸すること(市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて)

 

※ただし、どんな状況でもすべてOKというわけではありません。条件を確認してから行うとよいです。

※看護師がいる場合には、やってもらった方がよいです。

 

・看護師も医師の指示で動いています。

・あまり無理を言って困らせないようにしましょう

 ・言語聴覚士にもできる医療的ケアがあります

 

 

 

※参考資料※

看護師の業務としての「診療の補助行為」についての考察
日本看護学校協議会共済会
https://www.e-kango.net/safetynet/law/page32.html

看護師の法的な業務範囲
日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3787


4章 介護施設における医療と問題点
看護師や介護職員の医療(補助)行為について
東京都医師会
https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/338-348.pdf

○医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2895&dataType=1&pageNo=1

医療スタッフの協働 ・連携によるチーム医療の推進について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000024320.pdf