言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

障害児支援のスタッフが直面するハラスメントとは?

放課後等デイサービスとハラスメント

障害児たちが学校が終わってから通う施設である放課後等デイサービス。

ニュースになるのは「暴力事件」「死亡事故」「不正受給」などなど。

スタッフが利用者(児)に対して不利益を与えてしまったという事件がほとんどです。

しかし、実際に放課後等デイサービスで働いていると、別のものが見えてきます。

働いているスタッフが不利益を受けてしまうことです。

 

・上司から部下に与えるハラスメントがある

・保護者からスタッフに対するモラハラ・パワハラがある

 

 

ハラスメントの種類

ハラスメントとは 優位に立っている側の人間が、業務の適正な範囲を超えて、相手に身体的・精神的な苦痛を与えることです。

ハラスメントにはいくつかの種類があります。

 

・身体的暴力

・性的暴力

・精神的暴力

 

身体に危害を加える「身体的暴力」、性的に危害を加える「性的暴力」。

そして精神的に危害を加える「精神的暴力」です。

精神的暴力は分かりにくいので詳しく説明します。

 

厚生労働省は『障害者総合福祉推進事業(令和3年度)』で精神的暴力の定義および例を次のように示しています。

 

精神的暴力

精神的暴力とは

個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為。

例)
■攻撃的な態度で大声を出された
■他者を引き合いに出し、過大なサービスなどを繰り返し要求された
■契約や制度上、提供できないサービスを繰り返し要求された
■人格や能力を否定する発言をされた
■脅迫する発言を受けた

 

◆引用
厚生労働省 令和3年度障害者総合福祉推進事業
MS&ADインターリスク総研株式会社
障害福祉の現場におけるハラスメントに関する調査研究
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000937622.pdf

 

 

誰からのハラスメントか?

放課後等デイサービスでは、誰が誰に対してハラスメントを行っているのでしょうか?

ニュースになりやすいのはスタッフが利用者に対してハラスメントを行うことです。

 

ex.
・利用者を叩くなどの暴力行為があった

・部屋から出さないようにして閉じ込めた

 

 

上司や先輩スタッフからのハラスメント

しかし、見落とされがちなハラスメントがあります。

上司や先輩スタッフからの施設内のハラスメントです。

 

ex.
・大声で怒鳴られる

・人格を否定される

・無理な仕事を押しつけられる

 

利用者・家族からのハラスメント

一見、利用者や家族は弱い立場だと思われがちですが、そうではないケースもあります。

それが、家族や利用者から支援者に対するハラスメントです。

 

ex.

・利用者から身体を触られる

・家族から怒鳴られた

・契約外のサービスを強要された

 

以前、福祉業界では、家族や利用者からハラスメントを受けても「受け流せ」と言われていました。

しかし、現在は違います。

利用者であろうと家族であろうとハラスメントは立派な違法行為です。

 

 

弱い立場で働く福祉業界のスタッフたち

周囲の人には気づかれにくいハラスメントが存在します。

それがスタッフ間のハラスメントです。

福祉業界は外から見えにくい「閉ざされた場所」で支援が進んでいきます。

不正の隠そうと思えばいくらでも隠すことができてしまいます。

福祉業界のハラスメントは、閉鎖的な空間だからこそ起きやすいということができます。

 

働いていて感じる「つらさ」とは?

福祉業界は「つらい」仕事だと言われることが多いです。

過去に「福祉業界は低い賃金で重労働」というイメージがあったからでしょうか?

高収入とは言えませんが以前と比べると賃金は確実に増えてきています。

「つらい」といわれるのは次のような点です。

・人間関係の問題

・質の低い施設がある

・賃金の問題

 

 

人間関係のつまづき

放課後等デイサービスのような福祉業界では「人のために」とまじめに働いている人がたくさんいます。

わたしも長年、福祉業界にいますが、基本的には優しい人が多いと感じています。

しかし、逆に、この業界でしか雇ってもらえない人というのが一定数います。

そのようなタイプの人の中には、他者に迷惑をかけるタイプが存在します。

・威張り散らす

・仕事をしない

・仲間の足を引っ張る

圧をかけてくる、いわゆる「モラハラ」「パワハラ」をしてくる人。

ときどき見かけますよね。

このタイプが同僚なら関わらないでやり過ごせばいいだけです。

しかし、上司だとそうもいきません。

とくに、それがトップに人間だったら・・・。

仲間内だけでは対象者を守り切れない場合もあります。

 

 

施設の質の低さ

近年、放課後等デイサービスの在り方が変化しています。

一昔前は、施設は福祉畑の人が立ち上げることがほとんどでした。

しかし、「放課後等デイサービスは儲かる」というデマに惑わされて「そうなんだ!」と畑違いした人たちが次々に新規施設を立ち上げ始めました。

もちろん、畑違いの代表者であっても、子どもたちのことを考えて、すばらしい支援や施設をつくっている立派な人もたくさんいます。

しかし、実際は「金儲け第一」の施設が数多く存在するのです。

 

このような支援の低下を国はよく思っていません。

これまでは、申請すればどんな最低な施設でも助成金・加算等のお金を簡単にもらえていました。

現状に気づいた国は、どうしようもない施設をふるいにかけてなくそうとしています。

・障害が軽い子ばかり集めて適当な支援を行う施設

・スタッフの人数が足りないのに支援を行う施設

・有資格者がほとんどいない施設

 

他にもありますが、金儲け主義の施設にお金が回っていかない仕組みをつくろうとしています。

 

どうしようもない施設だからといっても、そこで働くスタッフ全員が悪い人とも限りません。

施設を良くしようと頑張っている人もいます。

しかし、施設側が頑張ろうとしていないのだから、頑張っている人は「面倒くさいやつ」という烙印を押されて潰されてしまうのです。

 

 

慢性的な人手不足

スタッフの人数が足りなければ、子どもに充分な支援をしてあげることなんてできません。

勘違いする人も多いのですが、次のようなものは違います。

・自分の仕事を増やしたくないから「人が足りない」と言う

・活動の様子をカメラで撮る人がいないから「人を増やしたい」と言う

・自分の要領が悪いだけのに「人が足りない」と言う

自分の仕事っぷりを棚に上げて「人が足りない」というのは違います。

また、現場に入っていない上司が「このくらい、この人数でできるだろ!」と頭ごなしに言ってくるのも間違っています。

金儲け主義の施設では、スタッフたちがこの問題で苦しみがちです。

 

 

無自覚なハラスメントから逃れるために

モラハラ・パワハラというのは「優位な立場の人」が「弱い立場の人」に対して行うものです。

たとえ上司であったとしても、部下が仕事を失敗したり、上手に進められないからといって人格否定していい権利なんてありません。

 

自分の身を守ろう

モラハラ・パワハラのように、自分よりも弱い立場の人を怒鳴って、圧をかけて、自分の言いなりにさせようとする人はいます。

これが上司だとやっかいです。

こんな人がいると、毎日ビクビクしながら仕事をしなければなりません。

しかも、圧をかけてくる当人は、他人に迷惑をかけている自覚なんて まるでありません。

むしろ「こいつらの根性を叩き直してやろう」と思っています。

 

こんな人と向き合っても よいことなんてありません。

自分のメンタルが潰れてしまいます。

話し合いができる状態ならば、話し合って解決できるのが平和的です。

しかし、そんな状況などほとんどないはずです。

だったら辞めるのも手です。

これは逃げではありません。

戦うだけが立派なのではありません。

そんな上司がいる会社で頑張る必要はないですよ。

 

 

モラハラ・パワハラに対する対抗策【訴えよう!】

仲間との団結力を高めることが大切です。

仲間同士で話しをできれば少しは気が楽になるはずです。

もしも、可能ならば他の団体に助けを求めるという手もあります。

 

◆第三者委員会
⇒ 社員で構成された団体。福祉業界ではないところも多い。

◆労働局
⇒ 労働局に助けを求めるのも有効です。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省

◆労働審判
⇒ 労働局でもうまくいかないときには、法的措置を考えるとよいです。
労働審判手続 | 裁判所

 

その際、パワハラの証拠を確保しておくことが重要です。

音声データ

メールなどのデータ

被害記録

 

 

退職が決まってから

うまく退職ができることになった。

しかし、あと少し勤務日が残っている。

そんなとき、何に気をつければよいのでしょうか?

気を付けてほしいのは下記の点です。

・やる気がないからといって仕事をさぼらない

・施設の悪口を言いまくる

・ひとりで上機嫌

あなたは辞めるかもしれません。

しかし、まだその職場で頑張って働こうとしている人たちがいるのを忘れてはいけません。

 

施設の閉鎖が決まっている場合も同様です。

最後まで頑張ってください。

あなたは辞めるかもしれませんが、行き場のない、移籍なんて望んでいない利用者(児)たちがいるのです。

いま自分がその子たちにできることは何か?を考えてみてください。

 

他のスタッフがつらい中、頑張っているのに、ひとりルンルンなのもダメです。

 

※ちなみに、施設側の都合で退職させるのに「自己都合」として辞めさせるのは違法です。

 

 

まとめとして

今回は、放課後等デイサービスと「モラハラ」「パワハラ」の関係を探ってみました。

ポイントは次の点です。

・ハラスメントは支援者→利用者だけでなく、上司→部下、家族→支援者でも起こりうる。

・上司がモラハラ&パワハラ人間だったら、我慢せずに辞めてしまおう

・自分が退職するときの態度にも気を付けよう

 

福祉職は、他人のために行う立派なお仕事です。

しかし、自分のメンタルを削ってまで続けることはありません。

自分や自分の家族を守ることのほうが、ずっと大切です。

よかったら参考にしてみてくださいね。

 

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参考資料

障害福祉の現場におけるハラスメント対策|厚生労働省

↑ わたしたちを守ってくれる方法が書かれた資料です!