言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできること、役割を探っていくブログです

目標を持った障害児保育を!大人の言うことに従う子を作るのが支援ではないよね

大人の言うことを聞かせるのが障害児保育なの?

今回は、「大人の言うことを聞く子を作ることが良い支援なのか?」「“みんなで一緒に遊ぶ”ということは本当に良いことなのか?」を考えてみたいと思います。

特に、放課後等デイサービスの障害児保育では、間違えて覚えてしまいがちなことだと思います。教えてもらわないと気づけない。そのまま経験を重ねてしまうと、それを後輩スタッフに教えてしまうということも・・・。

 

 

放課後等デイサービスって?

放課後等デイサービスは、学校が終わってから過ごす場です。施設にもよりますが、学習よりも遊びがメインで、集団での活動が多い傾向があります。集まってくる子は、障害や年齢もバラバラです。

 

どうやって子どもをみているの?

ひとりの子どもの担当となり、一緒にその日の活動を行っていきます。日によっては、スタッフ1人で子ども2人をみる日もあります。事業所によっては、スタッフ1~2人で子ども10人くらいをみる所もあるようです。

 

集団で動くということ

集団で動くためには、ある程度、他児に合わせないといけない場面も出てきます。そのため、「フタッフ(大人)の指示をしっかり聞いて、その通りに行動できること」を支援の目標にしてしまう人もいます。 確かに、大人の言うことに応じられる力は、生きていくうえで大切なものです。

しかし、放課後等デイサービスという場面で、大人の指示通りに遊べる=成長した証、となってしまっては・・・ 障害を持った子は、たとえ同じ診断名だとしても、全く違っています。それぞれに、発達や障害特性や言語理解などの差があります。性格の違いもあります。

 

一緒に遊ぶということ

スタッフの数や集まった子供の数によっても、活動の内容は異なります。子どもたちの発達段階に大きな差があっても、一緒に遊んでもらうこともあります。内容は、予めスタッフが用意することもありますし、自由遊びにすることもあります。放課後等デイサービスでは、遊ぶことが多いので、保育目標を「みんなと一緒に遊ぶこと」にしていることがあります。 まだ、一人遊びの段階なのに?自分の居場所、安心して過ごせる場・姿勢などが固まっていない子なのに? はたして、大人の指示が聞けるようにする、みんなで一緒に遊ぶ、を保育目標の上位にもっていってもよいのでしょうか?

 

子どもは、大人の思い通りになんてならない

子どもの心をつかむのがうまい人がいます。そういう人の保育をみていると、大人からの指示で無理やり子どもを動かそうとはしていません。みんなで一緒に遊ぶ場面でも、無理やり同じ遊びをさせようとはしていません。子どもの発達や身体・運動、性格を踏まえたうえで、「どうすれば、目の前にいる子が楽しく過ごせるのか?」を考えて、自分の支援を決めています。 子どもの“原則”に合わせた保育活動の設定は欠かせません。

 

 

障害児保育で必要な2つのポイント

  障害を持った子への支援を考えたときに、どうしてもアプローチなどの「支援者側から」の働きかけにばかり頭がいってしまいがちです。では、その支援を受ける側の「子ども」は、どう感じているのでしょうか?今回は、子ども側から「支援」を考えてみたいと思います。 ポイントは2つです。
 
・認めてもらっている、と感じられる支援
・子どもの意欲をなくさないための支援
 

 

①子どもが「認めてもらっている」と感じる支援
 先日、勉強会に参加してきました。内容は、元講師の先生が、障害児保育について話してくれる、というものでした。そこでの講師の先生のことばが妙に私の頭に残っています。
 
「ことばを持たない子に話しかける」ということは「その子を認める」ことにつながる。そこから、安心や信頼が生まれる。  
 
その勉強会は、障害児保育の話しだったのですが、私たち専門職にも通ずる内容でした。
 
思い返してみると、このアプローチを日常的にやっている保育スタッフは、意外と多くいるように感じました。しかも、無意識的に。専門職(特に ST)も、このアプローチ・考え方が、全ての土台となります。
 
 
②子どもの「意欲」が成長を底上げする
 発話の明瞭度が低い(何を言っているのか聞き取りづらい)子の言っていることを「何とか分かってあげたい」という姿勢で子どもと関わること。このスタンスで支援を行っていくことで、子どもからの信頼を得ることができます。聞き流すスタッフには、子どもは「伝えたい」という思いが減っていきます。
 
 聞き返さないと理解できない、という場面もあると思います。そういうときには「はっきり言ってよ」とイライラするのではなく、「言ってくれたのに理解できなくて、ごめんね」くらいの姿勢で接します。そうすると、子どもは気持ちよく、もう一度言い直してくれることがあります。言うのを諦めることが減るように感じます。
 
障害を持っていても、子どもであっても、相手は人間です。「伝えたい」という気持ちがなくなると、コミュニケーションも育たないのです。
 
 
 

最近子どもをほめていますか?

褒められていない子どもたち

 

障害を持った子の中には、認められたり、褒められたりする経験が、極端に少ない子がいます。「静かにして」 「やめて」 「ちゃんとして」 と何回も言われ続けている子がいます。

わざと大人が嫌がることをしているわけではなくても、褒められる経験は少なくなります。STをはじめとする専門職の支援や訓練でも、褒めるとこはあります。

他のアプローチに比べると、そこまで重きを置いていないことも多いです。褒められる経験は、自己肯定感の育ちにも、大いに貢献します。しかし、何でもかんでも褒めるのは、少し違う気がします。ここでの「褒められる」は「認められる」ということ。褒めるという行為は、支援者が意識していないと、なかなか出せないものです。

 

 

自尊心の低下

特に、グレーゾーンと呼ばれる子や、支援級に通っている子の場合、不登校などの「二次障害」として現れることもあります。

特に知的障害の軽い子で、自分を他の子と比べられるくらいの子であれば、自己評価が低くなることがあります。学習以外の面でも自尊心の低下がみらるようになります。
(『登校しぶりを示した軽度知的障害児における 自己の発達と他者の役割』心理科学第25巻第2号・2005・別府哲氏ら)

肢体不自由の子では身体障害=自尊心の低下とはなりません。しかし、社会からの評価によって自尊心が低下することがあります
(『肢体不自由者における障害受容と自尊感情および不安との関連について』心身障害学研究Bu1l,Spec.Educ.101985・松木ら)

 

 

ひとりの人間として認められる経験を

発達が初期の子の場合、褒めても反応が弱いことがあります。褒められたことに気づかない子もいます。子どもでからの反応が薄いと、自然と褒めなくなっていきます。褒められたという経験は大切で、自己像が育っていない子にも、支援者からのプラスのイメージとして伝わります。そこから、関係性の育ちにつながることもあります。

 

 

子どもの良いところを見つける

「褒められる・認められる」という視点は、私たち専門職にとって、忘れがちなところです。どちらかといえば、保育の方が意識的に使っています。 次に、いつもの子どもたちに会ったら、目の前にいる子の良いところを見つけてみてください。そして、ぜひ、褒めて、認めてください。

 

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