「できる」「できない」で判断することは良いことなのか?
子どもが持っている力はどのように調べられているのでしょうか。
能力とは目には見えません。
そのため、言動や様子などをみて判断する必要があります。
そのとき使うのが発達検査やチェックリストなどです。
どうしても検査やチェックを行うときに「できる」「できない」で判断する場面が出てきます。
今回はこの「できる」「できない」って本当に良い評価の仕方なのか?というはなしです。
子どもを評価するということ
「子どもを評価する」と聞くと拒否反応を示す支援者はけっこういます。
評価をすることに抵抗がある人の意見としては
・目の前にいる子どものありのままを受け入れればいいじゃない。
というものが多いです。
子どもの力を知りたいときには、発達検査や知能検査を行います。そこで「○○ができるか?」を調べます。
・ 喋ることができるか?
・ ひとりで食事ができるか?
・ 片足立ちができるか?
これができれば「○歳と同等の能力がある」と判断されます。
子どもを評価するときには「できる」「できない」での評価がよく使われています。
この評価の仕方は二分評価(二分的評価)と呼ばれています。
二分評価が嫌われる理由
二分評価を嫌う支援者もいます。では、なぜ嫌われてしまうのでしょうか?
①「できない」と判断するのはかわいそう
二分評価とは「できる」「できない」で判断することです。
「できる」「できない」で判断するということは、「本当にできてるか?」と子どもの力を疑うことになります。
障害が重ければ重いほど「できない」が増えていきます。
なかには「できる」項目がほとんどない子もいます。
そんな子を評価しているとき大人は
・ この子のことを軽く見ているのではないだろうか?
・ 自分は冷たいんじゃないか?
と感じてしまいます。
↓
だったら「できる」「できない」で判断するのはやめよう。
↓
二分評価なんてやるもんじゃない。
これが二分評価が嫌われる原因のひとつです。
さらに、二分評価=発達検査という見方をされてしまい、発達検査なんてやってもムダというふうに発展してしまうケースもあります。
② 数値化は冷たい感じがする
基本的に検査やチェックリストの結果は「○点」「○歳」というように数値で出てきます。これも支援者から嫌われる要因となります。
しかし、検査を取る人やまとめる人は数値だけを支援者に見せて
この子は□歳△ヶ月レベルなんです
というような伝え方はしていません。
・ なぜ○歳△ヶ月レベルなのか?
・ どういうところで引っかかっているのか?
・ どのくらい理解しているのか?
という現状を伝えます。さらに今後に向けての助言(というか提案)を加えます。
・○○という力をつけるために、いまは□□をやるとよい
・こういうやり方ならば理解できるかもしれない
発達検査を行う意義
そもそも、なぜ発達検査を行う必要があるのでしょうか?
一番の理由は子どもの現状を客観的にとらえるためです。
客観的な判断ができる
経験豊富な支援者、もしくはそういうセンスのある人であれば、子どもの様子を見ただけで判断して支援へとつなげられることがあります。
・ 笑っているけど実は困っているんじゃないか?
・ できないけど目で探ってるな。ちょっと待ってみよう
逆に、経験の浅いスタッフは子どもの見た目に騙されやすいです。
・喋っている → ことばは理解しているだろう
・食事や着替えなどをひとりでできる → 知的に高いだろう
実はそうではないことが多いのです。
・喋っていてもオウム返しで中身のないものであったり
・日常生活動作をパターンとして身につけているだけだったり
検査ではそういった支援者の力量に関わらず客観的に子どもをとらえることができるのです。
検査では一定の判断基準に基づいて子どもをとらえます。そのため、保育や療育の経験による差が比較的生まれにくいのです(完全に客観的にはなりませんが・・・)。
発達検査をやらせてもらう
だからこそ、各種の検査やチェックリストを使ってより正しい子どもの現状を把握するのです。
しかし、多かれ少なかれ発達検査などは子どもの負担になるものです。
やらないで済むならやらない方がよいです。
検査をとるということは、支援者の経験に左右されずに子どもを把握できるようになるのでとらせてもらっているということです。
「検査を取って調べてあげるね」ではなくて、「ごめんね。検査で調べさせてね」という姿勢が大切だといわれるのです。
発達検査をとらせてもらう。そのかわりに、今よりもより良い支援を探っていくのです。
検査やチェックリストをまとめることで
・いま困っていることの原因は何だろう?
・次は何を求めたらよいのだろう?
ということが分かり、次の支援につなげることができるのです。
検査をまとめるときのポイント
ただ「できる」「できない」と判断するだけでは不十分です。
チェックしたものだけがみんなの目に触れてしまうと、
二分評価=嫌なやり方
というマイナスのイメージが強くなってしまいます。
繰り返しますが「できる」「できない」は子どもを把握するためのツールになるのです。
まとめとして
今回は「できる」「できない」を使った二分評価はどうなのだろう?というはなしをしました。ポイントは
・「できる」「できない」だけで終わらせない
・「なぜ」できた?できない?
・「どこまで」できた?できない?
今まで「できる」「できない」で評価を終わらせていた人も、ぜひ「なぜ?」で深めてみてください。きっと子ども理解も深まるはずです。