言語聴覚士は放課後等デイサービスで何ができる?

放課後等デイサービスで言語聴覚士(ST)としてできることを探っていくブログです

障害児保育でアセスメントツールが必要な理由とは?

障害児保育とアセスメント

 

障害児保育で支援を決めるとき、子どもを評価することがあります。

その際に検査やチェックリストといった「アセスメントツール」を使います。

しかし、実際に保育に入って感じたことを支援に活かせばよいのでは?

正直言ってそう感じている人も少なくありません。

わざわざ検査とかしなくても・・・。

こんなモヤモヤした感じを解決するためにも「アセスメント」と「経験」の違いを説明していきます。

今回は、障害を持つ子への支援でアセスメントを使う理由についてです。

 

 

今回長文になってしまいました。まずはポイントです。 

ポイント!

・アセスメントとは検査やチェックリストのこと

・アセスメントは客観的に数値で結果が出る

・支援を決めるうえで指標となる

・子どもの発達の凸凹(得意・不得意)がわかる

 

 

アセスメントとは?

 

「アセスメント」とは、決められたやり方で評価することです。

評価する人の感情や感覚は含めずに客観的な視点で数値化して表すものを指します。

障害児分野では「検査」や「チェックリスト」などがアセスメントの仲間です。

 

 

アセスメントツールの種類


「アセスメントツール」と聞いて思い浮かぶのは「知能指数(IQ)」だと思います。

それ以外にも

・発達指数(DQ)
・社会適応度/社会生活年齢(SA)、社会生活指数(SQ)

などがあります。

 

アセスメントの統計

 

厚生労働省の「障害者総合福祉推進事業」(平成24年度)によると、アセスメントの実施状況は下記の通りとなっています(全国の医療機関・福祉機関を対象に調査を実施したもの)。

「一般ツール」というのが、一般的に普及している検査やチェックリストのことです。

ちょっと見ずらいのですが、一番左が「児童発達支援」。未就学児の施設です。

「放課後等デイサービス」は含まれていないのですが、アセスメントツールを使っている施設は少ないと思われます。

 

・水色
⇒ 一般的なアセスメントツール

・ピンク
⇒ 独自のアセスメントツール

・黄緑
⇒ 使っていない

 

『福祉機関における心理アセスメントの活用の実態
医療・福祉機関におけるアセスメントツールの利用実態に関する調査』
浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター 伊藤大幸・松本かおり より

 

 

アセスメントが行き渡らない理由

海外では発達障害児に対するアセスメントツールがたくさんあります。

それらはスタンダードなテストとして広く使われています。

しかし、日本ではあまり使われていない。

ようやく日本語訳が増えてきたかな、というのが現状です。

その理由として、

・福祉系の大学や専門学校などで詳しく習わなかった(ex.社会福祉士、介護福祉士)
・検査の名前は知っていても実際に検査を取る機会がほとんどない
・そもそもアセスメントツールを学ぶ機会がない

 

アセスメントができる人が少ない

発達検査や知能検査をとるのは心理職や言語聴覚士など専門職が多いと思われます。

しかも、すべての心理職や言語聴覚士の人が検査をとれる人だとは限りません。

そのため、アセスメントがどのくらい使われているのか?はアセスメントを取れる人がいるか?によって決まるということになります。

施設の方針もありますが、実施している検査やチェックリストに差が生まれるのです。

 

 

支援の方向性を定めるもの

 

では、本当にアセスメントって必要なのでしょうか?

アセスメントのメリットには

・一貫した支援につなげられる
・就学前後や引っ越しなどの引継ぎがスムーズ

というものがあります。

 

支援者同士で一貫した支援を行うためには、何らかのアセスメントを使って客観的に情報を活用することが大切なのです。

もちろん、アセスメントは万能ではありません。

一回のアセスメントの情報だけではなく、普段の様子を併せて支援の内容を検討することが子ども像を把握するうえで欠かせません。

 

数値をうまく活用する

アセスメントツールでは結果が数値で表されます。

これがアセスメントを嫌われる理由のひとつです。

 

・数値を出すと偏見が生まれるだけではないのか?

 

たしかに、何も考えずに検査を行えば

「発達年齢は3歳か。へー。思ったよりも低いね」

で終わってしまいます。

 

ここで大切なことが数値を活用するということです。

検査を行って発達年齢(数値)を出すだけでは何も分かりません。

それでは、せっかくのアセスメントが子どもと検査者の無駄な労力になってしまいます。

  

数値を使うことで様々なことが分かります。

たとえば、生活年齢(実年齢)で 6  歳の子が発達年齢 3 歳と出たとします。

これによって

・3歳だったら喋る内容に自分の願望が混ざってしまうな
・過去や未来に関することは理解しにくいかもしれない

ということが推測できます。

その子に話しかけるときには、それらを気をつけて少し優しいことばかけができるはずです。

その年齢で障害がなかったらどんなことができるのか?という基準ができるのです。

 

アセスメントツールを使う理由を考える

アセスメントツールを使うとなんだかよいことがありそう。

だからといって、何も考えずにアセスメントをしても意味がありません。

 

・なぜこのアセスメントツールを使うのか?

⇒ 何を調べたいのか?
(発達の凸凹具合?ことばの理解面?)

 

・どんなアセスメントツールを組み合わせるのか?

⇒ 1つの検査だけでは不十分なケースも多いです。そのため「発達検査」+「言語検査」というように検査や尺度を組み合わせることが多いです。

「一般的な発達検査」+「施設独自のアセスメントツール」というやり方がうまくいくケースもあります。

 

 

アセスメントを通して子どもと向き合える

 

ただアセスメントをするのではなく

・どのアセスメントツールを使うのか?
・どんな組み合わせにするのか?

も考えるとうまく活用できそうだと分かりました。

では、もう少し細かく考えてみましょう。

 

 

1)何をアセスメントするか?

まずは何を知りたいのか?ということです。

子どもの「知能」なのか「ことば」なのか「認知」なのか


・知能検査や発達検査をアセスメントする
⇒現時点での子どもの力が分かる。それを把握することで支援内容がより具体的になる。

・環境をアセスメントする
家族(養育環境や兄弟姉妹の有無など)
ことば(日本語か?それ以外の言語か?)

 

何を知りたいのか?が決まっていないままアセスメントを行っても、ぼんやりした結果にしかなりません。

 

2)検査の過程はどうったのか?

検査では数値として結果が出されます。しかし検査結果はそれだけではありません。

・どうやってできたのか?
・どうやってできなかったのか?

というような過程もチェックしています。さらに

・どんな順番で取り組んだのか?
・どのように教具を触っていたか?(操作したのか?)
・しっかり目を使っているのか?
・指示に従って動いたのか?

なども子どもを把握するための材料となります。

 

・誰がアセスメントするのか?
・どこでアセスメントするのか?
・どういうアセスメントツールを用いるのか?
・何のため誰のためのアセスメントなのか?

 

検査は子どもの"現時点"の力をはかるもの

検査結果は数値だけじゃないんだ、ということが分かりました。

意外と知られていないことは他にもあります。

・1つの検査だけでは子どものすべては分からない
・検査結果はやる度に変わる

ということです。


アセスメントだけで子どものすべては分かりません。

・発達全般を「浅く・広く」チェックしているもの
・「ことば」や「知能」「認知」などに特化しているもの

もあります。残念ながら「この検査をすればすべてが分かる!」的なツールは存在しないのです。

 


「アセスメント」と「経験」は視点が異なる

 

・実際に子どもと接して得てきた経験を活かす方が大切なのでは?

検査なんかよりも実際に子どもと関わって感じた経験が重要だと。

そんなふうに言われる人もいます。

たしかにそれも大切です。

 

 

 

2つの視点の違い

だったら、子どもの日々の様子を観察して、それを支援に活かせばよい のではないか?

そう思われるのではないでしょうか?

 

◆子どもの様子を見て理解を深めていく

・検査は限定された場で、子どもの一瞬しか捉えることができない。
観察の場合、関わる大人や場所、子どもの気分によってどのような違いがあるのか?をみることができる。

 

◆アセスメントツール

・検査をして、この数値だったらこんな状態なのかもしれない
・発達の凸凹があるから、こんなことに困っているのではないか?

(ex.「理解」は高いけれど「言語表出」は低い。自分の気持ちを言葉で表せずに苦しいだろう。)

※「理解」面は観察よりもアセスメントツールを使った方が検査結果として分かりやすく出てくることが多い。

 

2つの視点から子どもを捉える

 
経験で裏打ちされた考え方や子どもの見方は、支援を行ううえで欠かすことができません。

すべてのスタッフが経験やそれに基づいた考え方や実行力を持っていれば検査なんていらないのかもしれません。

・先輩スタッフの経験をしっかりと後輩に伝えられるシステムができている
・それが施設独自のアセスメントツールとして活用できているのであれば

 

「アセスメント」と「経験」は見方が異なるだけです。

この2つの面から子どもをみていくことで、多角的に、より深く子どもをみていくことがでます。

どちらが欠けても物足りない感じになってしまうのです。

 

 

発達の凸凹を捉えよう

 

障害がある子は発達に凸凹ができます。

凸凹とは、「表出(ことばなど)」が3歳レベルでも「理解」は1歳台というように、発達の領域に年齢の差ができることです。

○○は得意(凸)だけれど、△△は苦手(凹)という状態。

障害がない子であれば発達の領域に大きな差はできません。


苦手な部分は発達段階でつまづいている場所ということができます。

発達は階段のように一歩一歩登って行くものです。しかし当の本人はどこでストップしているのか気づいていないケースが多いのです。

ex.
道具をうまく使えない
⇒不器用なケースもあるが、そもそも手元をみていないケースもある。道具の扱い方=手だけなく目なども使っている!

ex.
過敏がひどい
⇒本当に生理的な過敏があって物に触れられないケースもある。しかし、物を触る経験が少な過ぎるので過敏のような反応を示している、というケースも!
どこでつまづいているのか?が分かれば支援者が助けを出しやすくなるのです。

 

この発達の凸凹が分かれば、
・得意(凸)を伸ばすのか?
・苦手(凹)を底上げするのか?
ということ支援の方向性を決めることもできます。

 

 

子どもの「得意」「不得意」を知る

 

アセスメントツールを使うことのメリットとして結果(数値)が目で見て分かるという点があります。

では検査などで出された数値はどのように活用するとよいのでしょうか?

たとえばIQや偏差値などは、その集団(生活年齢が同じ子)のなかで対象となる子はどのあたりに位置するのか?ということが分かります。

障害がない子と比べるとどのくらいの差があるのか?

これを偏見ではなく

・なぜそのような結果なのか?
・苦手もしくは得意な箇所はある?

という見方をしていくのです。。

 

 

 

まとめとして

 今回は障害児保育でアセスメントツールが必要な理由を説明しました。

アセスメントツール何と必要ないわ!

何て言わずに、経験とアセスメントの両方を使って、よりよい支援につなげていければよいのではないでしょうか?

 

ポイント!

① 支援者が同じ方向を見て支援を行う

② 子どもの発達の凸凹がわかる

③ 客観的な情報は指標となる

 

参考資料

厚生労働省
平成 24 年度障害者総合福祉推進事業
発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン
特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会(平成 25 年 3 月)

 

www.hana-mode.com