読み書きの発達段階
日本語の読み書きは1歳ころから始まり、多くの子が就学前にはひらがなの読み書きができるようになります。しかし、これはあくまで一般的には、というはなしです。
文字の読み書きができるようになる時期は個人差が大きいのです。環境や本人の興味・関心などによっても左右されがちだからです。今回は、定型発達の子がどのように読み書きを獲得していくのか、発達年齢や前提となる力から考えていきます。
勘違いされやすいこと
文字や数字などの「お勉強」的な学習。通常の学校であれば、学年が上がるたびに難しくなっていきます。学校の勉強をしていれば ある程度は身についてきます。
しかし、障害を持っている子の場合、発達のどこかでつまづいているケースが多いのです。そのため、文字の見分けがつかなかったり、真似して言えるけれど どの文字のことだか分からない、なんてことが起こるのです。
大人がそれに気づかないと「繰り返し書き取りをすればいずれ覚えるはず!」と子どもに根拠のない練習をさせるようになるのです。文字の細かな個所の見分けができない子が書き取りだけを強制的にやらされても効果は薄いはずです。
文字を獲得するためには「現在の発達段階はどのあたりなのか?」を知ったうえで支援を行う必要があるのです。
根性論では身につかない。
障害児支援では大前提となる考え方です!
読みの発達
8-12ヶ月
絵本に興味を持ち始める
1歳過ぎ
文字に興味を持つようになる
まだ文字を記号として認識
1~2歳
絵本の中のものの中の名前を言う
2~3歳
文字に意味や目的があることを理解し始める
文字を読む方向性を理解する
自分の名前の文字など、特定の文字に興味を持ち始める
3~4歳
看板やパッケージなどの名前などに気づくようになる
4才くらい
自分の名前を読めるようになる
自分の名前に含まれる文字を探す
5歳
身近な単語を読む
絵本を読んでもらうときや、自分が書いた文字を読むときに、文字を目で追うことができる
自分や仲が良い友達の名前を書く
書き
1才くらい
書くことへの興味が生まれる
2歳過ぎ
文字らしき線を描く
2歳後半
書いた絵の下に名前と言って線を描く
4歳過ぎ
絵よりも平仮名や疑似文字を書く子が増える
6歳
自分の気持ちを文で表すようになる
※年齢は『特別支援教育における 言語・コミュニケーション・読み書きに困難がある子どもの理解と支援』P.186より
読み書きの前提となる力
平仮名読みの獲得
◆必要な力
・音韻意識
⇒ ひらがな一文字は一つの音と対応していることに気づく
・音韻抽出
⇒ 「さかな」の最初の文字は何かがわかる
※これらができて初めて「しりとり」を楽しむことができます。
・かな識字
⇒ 文字と絵や記号の違いが分かる
・数唱
⇒ 数を数えられる
・語彙
⇒ 単語自体を知っている
・視知覚技能
⇒ 目を使って各動きをサポートする
・記憶の問題
⇒ 覚えていられるか
書くことは上記の力外にも手先の器用さ(微細運動)の発達も関係しています。
どうやって読み書きを促すか?
前提となる力は上記のとおりです。では、家や施設ではどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
環境が大切
読みも書きも環境が大切です。文字に触れる機会がないと興味や関心を持ちようがないです。好き・嫌い以前の問題です。
一緒に絵本などを読む機会を設けるとよいです。たかが絵本読み。されど絵本読みです。
無理にお金を使う必要はない!
最近では、読み書きに限らず、様々な教材が売られています。広告を見ると、この商品を今すぐに買わないと一生文字を獲得できないのでは?と思いそうになります。
ちょっと待ってください。
払った金額=発達の促進とはなりえません。
100円ショップで売られている絵本も優秀です。図書館にもたくさん本があります。行政によっては定期健診のときに絵本をくれる所もあります。
安く済ませる=子どものことを考えていないわけではありません。
安心してください。それは断言できます。
・適切な時期に環境を整えてあげること
・この環境とは高いお金を払うということではないということ
これだけは頭の片隅に置いておいてください。
選び方
図書館などで絵本を選ぶときは、
・単純なものでOK
⇒絵本にも適応年齢があります。年齢が表記されていることもあります。それを見て選ぶとよいです。
話題になっている絵本だから、という理由では子どもに合わないことも多いのです。複雑なストーリーを理解するには少し年齢を重ねてからです。
・どのくらいの物事を理解できるのか?
・どんなものに注意や興味を向けるのか?
を気にしてあげられるとよいです。
まずはカタログ的な絵本から初めて、
↓
次に繰り返しのことばがある絵本
↓
そして単純なストーリーがある絵本
↓
それらを繰り返し読んでいったのちに
↓
ちょっと複雑な(大人でも楽しめるようなストーリー)絵本
を読んであげるとよいと思います。
優秀な100均の絵本
結構いろいろな種類の本が売られています。
例えばこれはCan Doの本。各100円です。
私も自分の子にはこの本を使いました。子どもも気に入ってくれて、すでにボロボロです。
子どもが本や文字を好きになるための「導入」になればいいかな?と思って買いました。しかし、子どもはこの本自体を楽しんでくれたようです。
オススメのグッズ
100均の本でオススメできるのは下記のようなものがあります。本やカードなど、楽しく学習ができるグッズもたくさん出ています。怪しいセミナーに参加するより安価に楽しむことができます。
まずは興味を持ってもらおう
読み書きの発達は意外と見落としがちです。
気づいたらできていた。
気づいたらできていなかった。
そんなケースも多くあります。
読むこと
まずは文字や記号に興味を持つこと。それらに意味があることに気づくことが大前提です。
50音を順番に言うことができていても理解しているとは言入れません。急に「な」は何て読む?と聞かれると答えられない子もいます。
書くこと
大人にとっては簡単でも、子どもにとっては複雑な記号だということを忘れてはいけません。
「文字を書く」という力にも前提となる力があります。
・線を書ける
・目の動き
・動きの方向を理解する
・一文字が一つの音に対応していることを知る
など、様々な土台となる力が必要となります。
まずは子どもに文字に触れる機会を用意してあげる。興味を持ってくれれば自分から学んでいくはずです。
まとめとして
今回は、文字の読み書きはどのような発達の順番をたどるのか?というはなしをしました。障害がある子もない子も、文字はコミュニケーション手段のひとつとなる大切なツールです。
発達の順番を無視した指導や訓練は、子どもに過大な負担を与えてしまいます。文字も数字も同じですが、歌を歌ったり動画を見たりするだけでは獲得できません。
遊びや活動を通して、少しずつ楽しく学んでいければと思います。
良かったら参考にしてみてくださいね。
参考文献
◆特別支援教育における 言語・コミュニケーション・読み書きに困難がある子どもの理解と支援
言語・コミュニケーション・読み書きに困難がある子どもの理解と支援 大伴潔/大井学 学苑社 2011年08月 売り上げランキング :
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◆読み書きの発達における研究動向と今後の課題
読み書きの発達における研究動向と今後の課題 - 愛知県立大学 東俣淳子
https://aichi-pu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3923&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1