障害児支援の仕事でも「安請け合い」は失敗のもと!
「頼まれたら断れない」
——その善意が、あなたを苦しめることも。
放課後等デイサービスで働いていると、日々いろいろなお願いをされます。
「これ、ついでにやっておいてくれる?」
「〇〇ちゃんの記録、今日中にお願い!」
「保護者対応、少し代わってもらえる?」
どれも悪気のある依頼ではありません。むしろ「子どものために」「チームのために」と思えば、断る理由なんてないように感じます。
しかし、その“ちょっとした引き受け”が積み重なると、やがて自分を追い詰めてしまうことがあるのです。
今回は「安請け合い(やすうけあい)」についてです。障害児支援の仕事でも、なんでも頼まれたことをやっていては疲れてしまいますよ、というお話しです。
- 障害児支援の仕事でも「安請け合い」は失敗のもと!
- 安請け合いの悪影響3つ
- 「安請け合いしやすい人」の3タイプ
- 安請け合いしてしまったときの対応
- 「断れない」のはなぜ?
- チームで支える、福祉の現場
- まとめとして
「安請け合い」とは何か?
安請け合い(やすうけあい)
前後の考えもなく、軽々しく引き受けること
(広辞苑 第七版より)
この「安請け合い」、実は福祉現場でも“あるある”のひとつです。障害児支援に関わる人は、まじめで、優しくて、責任感が強い人が多い。だからこそ、気づかないうちに“やりすぎてしまう”のです。
安請け合いの悪影響3つ
安請け合いすることによって、おこる代表的な影響は次の3つです。
① 自分の負担が増えてしまう
最初は「少しなら大丈夫」と思って引き受けたことでも、やってみたら想像以上に時間がかかったり、他の業務と重なってしまったり・・・。結果として、自分がパンクしてしまうこともあります。
「頼まれたから」「断りづらいから」と無理を続けると、心身の疲労やモチベーションの低下につながります。
② 周囲からの信頼が下がることも
途中で手が回らなくなってしまうと、「あの人、最後までできない人」と思われてしまうこともあります。
一度ついた印象はなかなか消えません。本来の得意分野で信頼を築くチャンスを逃してしまうこともあります。
③ 子どもへの支援の質が下がる
業務が増えすぎると、どうしても一人ひとりの子どもと向き合う時間が減ります。
「支援の本質」が薄れてしまうのは、本末転倒。安請け合いが続くと、最も守りたい子どもの時間まで削られてしまうのです。
「安請け合いしやすい人」の3タイプ
自分を責める必要はありません。誰にでも「安請け合い」してしまう瞬間があります。しかし、自分の傾向を知っておくと対策ができます。
① 八方美人タイプ
「誰からも好かれたい」「頼られたい」という気持ちが強く、つい何でも「できます!」と答えてしまうタイプ。
② 見通しが甘いタイプ
「たぶん大丈夫」と軽く考えて引き受けるタイプ。思ったより時間や労力がかかって、後から後悔するパターン。
③ 何でも自分でやらないと気が済まないタイプ
「他の人に頼むより自分がやったほうが早い」と考えるタイプ。責任感は強いけれど、チームを信頼しきれていない場合もあります。
安請け合いしてしまったときの対応
安請け合いしてしまうのは、しかたがありません。疲れてしまうかもしれません。しかし、状況を立て直す方法はあります。
優先順位をつける
「今いちばん大事なのは何か?」を明確にしましょう。目の前のことを全部やろうとするのは無理があります。優先度を見直すことで、冷静に整理できます。
素直に助けを求める
「自分ひとりでは難しい」と感じたら、早めに相談を。チームで動くことが福祉の基本です。助けを求めることは、決して“弱さ”ではありません。
「できない」と言える勇気を持つ
断ることが苦手な人ほど、練習しておくのがおすすめです。
「私では対応が難しいので、〇〇さんに相談してもいいですか?」
「申し訳ありません、今は他の業務で手が回らないのですが・・・」
“やんわり断る”表現をいくつか持っておくと安心です。
「断れない」のはなぜ?
・役に立たない人と思われたくない
・相手の期待を裏切りたくない
・「断る=悪いこと」という思い込みがある
こうした背景があると、無意識のうちに「なんでも引き受ける自分」を作ってしまいます。しかし、本当に大切なのは“頼まれた仕事を全部こなすこと”ではなく「今の自分にできることを誠実にやること」です。
「できます」と言う前に3つ考えよう
・締め切りはいつ?
・どのくらい優先度が高い?
・他の業務との兼ね合いは?
この3つを確認してから「やります」と答えるだけで仕事のコントロール感がぐっと高まります。考えずに「できます」と答えるのは、自分を苦しめる第一歩です。
チームで支える、福祉の現場
障害児支援の仕事は、一人で完結するものではありません。情報共有・相談・助け合いがあってこそ、子どもの支援が成り立ちます。
・小さな変化を伝える
・家族からの情報を共有する
・支援方針をすり合わせる
「忙しそうだから」「今は言わなくていいか」ではなく、こまめなホウレンソウ(報告・連絡・相談)を心がけることで、結果的に自分もチームも楽になります。
小さな情報であったとしても、実際に支援に入るときには「心強い武器」になります。ひとりでやっているのではなく、味方がいることの安心感。障害児支援では意外と大切なのではないでしょうか。
まとめとして
まとめ:「断ること」は、誠実さの一つ
今回は、上司や同僚から仕事を頼まれて、どうしても断れなかったときの考え方を説明しました。
障害児支援の仕事は、人の生活・成長・命に関わる仕事です。だからこそ、「とりあえず引き受ける」ではなく、「本当に自分にできるかどうかを考えて答える」ことが大切です。
安請け合いによって確実に自分がすり減ってしまいます。そうすると、子どもへの支援も、チームの関係も揺らいでしまいます。
“断ること”は冷たいことではありません。むしろ、自分にも相手にも、そして子どもたちにも誠実であることです。
無理せず、丁寧に、でもきちんと。
そんな働き方ができる人を、わたしは心から尊敬しています。あなたのその誠実さが、現場を少しずつ良くしていくはずです。この文章を書きながら、わたし自身も“断る勇気”の大切さを思い出しました。
よかったら参考にしてみてくださいね。


