小児の言語聴覚士ってどうなの?
成人分野で働いてきたけど、もうつらい。せっかく国家資格を取ったからすぐにはやめられない。小児の言語聴覚士(ST)ってどうなの?
そう考えているSTは意外と多いです。
小児分野に鞍替えをしたいのだけれど・・・。経験がないけど大丈夫なの?
今回は職場を変えたいSTに向けたはなしです。
小児STって需要はあるの?
そもそも小児のSTはどのくらいいるのでしょうか?
正式な数値は出ていません。一般的に勤務しているSTの1割が小児で働いていると言われています。
日本言語聴覚士協会「会員動向
会員が対象としている障害(複数回答)」より引用
※分類方法
成人は「摂食・嚥下」「成人言語・認知」「発声・発語」
小児は「小児言語・認知」
聴覚は「聴覚」
令和2年3月で34,489人の資格保有者がいます。(資格を持っている人が全員働いていると仮定して)そのうちの1割、3,448名のSTが小児分野で働いている計算になります。ざっくりとした計算ですが。
一方、小児分野の対象者である、障害を持った子の人数は
障害児の人数
身体障害児
⇒ 7万1千人知的障害児
⇒ 22万1千人内閣府『障害者の状況・障害者数(推計)』よりhttps://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/siryo_02.html
ということは、STの数は圧倒的に足りていません。
どんな人が求められるの?
転職や就職の本やサイトには
「きめ細かさが求められる職業です。女性にピッタリです!」
とよく書かれているのを目にします。
おそらくこんなコメントを書いたのは、実際の小児分野で働いたことのない方なんでしょう。10年近く小児分野でSTをしている私から言わせてもらうと・・・
正直言って性別は関係ない。トイレ介助なんかは、基本的に同性介助ですが。それ以外はケースバイケースです。
・女性のSTが好きな子もいます
・男性のSTが好きな子もいます
・どっちでも気にしない子も多いです
相性みたいなものはあります。
今は男性STが多いから次は女性STを採用したい。
というように、職場ごとに男女比を保っておきたいというケースはあります。
それは仕方がない。
そういうケース以外に、男性、女性、どっちが必要とされるというのはほとんどありません。
仕事内容は?
今まで成人分野でSTをしていた。リハビリ業界は何となく分かる。でも小児はまったく想像がわかない。そんな方も多いと思います。
・ことば
⇒ 言語獲得または代替え手段の獲得を促します。構音訓練もやることがあります。知的障害がない子、もしくは知的に保たれている子に対して行うことが多いです。
・コミュニケーション
⇒ 保育職をはじめとする様々な職種が関わる領域です。STだけで何とかしようとすると失敗します。他職種の考え方を把握しておくとうまくいきます。
・摂食嚥下
⇒ 小児でも嚥下分野は必要とされます。特にSTは重宝されます。成人ではそこまで意識しなかった「食べる機能の発達」がキーワードとなります。
成人と小児の違い
ではどんなところが違うのでしょうか?同じところと違うところを調べてみます。
同じところ
・共通する領域がある
⇒ 「摂食嚥下」「音声障害」「補聴器」など共通する領域が多くある。「高次脳機能障害」は子どもでもありえます!←小児STの弱い分野だと思います。
・STグッズ
⇒ 成人分野でも使っていたであろうSTグッズは小児でも使うことができます。
ex.聴診器、ペンライト、鼻息鏡など
※小児用の聴診器もありますが。
違うところ
・ハビリテーション
⇒ リハビリではなくハビリテーション。
ex.嚥下では、機能の代替えを考えることもありますが、どうやって発達の流れに乗せるか?という考え方が大切となります。
・メモが取れない
⇒ 子どもたちはじっとしていません。待ってくれません。ほとんど、その場でメモを取れません。
まとめ
いまさら小児分野でSTなんてできるのかな?と躊躇してしまい、職場をかえられないでいるSTは多いです。しかし、
・意外と成人分野の知識は役に立つ
・STグッズも役に立つ
子ども嫌いでない限り、小児施設にも受け入れてもらあるでしょう。
子どもと接したことがないから好きか嫌いか分からない。
そう考えている人もいると思います。
そういう人ほど一度試してみてください。意外とハマるかもしれませんよ?
参考資料
◆日本言語聴覚士協会
https://www.japanslht.or.jp/about/trend.html
◆障害者の状況|令和元年版障害者白書
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r01hakusho/zenbun/siryo_02.html