様々な発達の年齢
知的には重いはずだけれど日常生活動作が身についている子。けっこう、いますよね。これって、実は知的に高いってこと?どんな状態なの?
今回は、知的障害の発達段階の中から、その不思議な段階についてのはなしです。知的障害児の特徴的な発達段階を理解しつつ知的発達の段階(年齢)を学びましょう。
知的とは?
まずは「知的」ということばについてです。これは様々な定義があります。一般的には、
・考えたり
・計画を立てたり
・記憶したり
・問題を解決したり
様々な頭の働きの総称のことをさします。
知的障害とは
知的機能に障害を受けると、
・言語の発達が遅かったり
・物事を深く考えられなかったり
してしまうこともあります。そのため、同年齢の子と比べて知的機能に遅れがみられ、それによって他人との意思疎通、生活、仕事、余暇などの適応能力も不十分。特別な支援や配慮が必要だとされています。
厚生労働省の定義は下記の通りです。
知的障害とは
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの
基礎調査:調査の結果 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html
※知的障害は「精神遅滞」「精神発達遅滞」と呼ばれることもあります。
※1歳半検診や3歳児検診で発達の遅れを指摘されて分かることが多いです。
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知的障害特有の発達段階って?
知的障害があっても障害がない子と同じように発達は進んでいくの?
このように考えたことはないでしょうか?これは、大体は同じだといわれていますが、知的障害を持つ子がとどまりやすい発達段階があるのです。
詳しくみていきましょう。
1)すべて感覚を使って理解や行動をする段階
定型発達の0~2歳くらいでみられる段階です。
見ただけではその物が何なのかが分からない。そのため、自分の舌で舐めたり、手で触れたりしながら、周囲の物事を認識していく段階です。
はじめは生まれながらにして備わっている「反射」で周囲からの刺激に反応していました。
ex.突然大きな音が聞こえたら目をギュッと閉じて身を守る など
様々な経験を通して、徐々に、
・他者と自分の区別
・物の形や役割
・物事を予測する
ことを覚えていくのです。
※重度の障害を持っている子(人)は、この段階でとどまっていることも多い
2)理解は十分ではないが生活動作が身についている段階
定型発達の0~1歳くらいでみられる段階です。
まだ、ことばによる表現や指示の理解は十分ではありません。しかし、生活や経験の積み重ねによって、日常の様々な活動を行うことができている段階です。
障害のない子にはこの段階がありません。知的障害児者特有の発達段階と言えます。
※重度の障害を持っている子(人)は、この段階でもとどまっていることが多い
3)簡単なことは理解・概念化している段階
単語レベルの指示が分かります。「ご飯」などの単語をそのままの意味で理解するのではなくて、
・食べるもの
・ご飯の準備ができましたよ(の意味)
・ご飯を食べますよ(の意味)
など概念的にことばを理解しています。
概念化とは
ことばで表すことができないことを「1つのくくり」としてまとめることです。
ex.「水」は、無色透明の液体です。しかし、これをもっと大きなくくりとして「飲むもの」「洗うもの」というふうに捉える事ができます。これが概念です。
ものごとを見たままで捉えるのではなく、もっと大きな視点から「概念」として捉え直すことが「概念化」です。ものごとの本質を把握するための力です。
4)会話や学習ができる段階
定型発達の4~7歳くらいでみられる段階です。
ことばを使った会話、読み書き、計算といった教科学習ができるようになってきます。
まだ、様々な視点から物事を捉えることが得意ではありません。そのため、見た目に騙されてしまうことも多いです。
参考資料)知的発達の段階
そのため、知的発達といっても範囲が広いです。子どもの知的発達では、外の世界をどのように捉えるのか?物と人との関係は?などの発達を追っていくことが多いです。
3~4ヶ月 :
声を出して笑う
人の声がするとそちらを向く
どの方向にも追視ができる(左右、上下)
6~7ヶ月 :
父や母に話しかけるような声を出す
人見知りをする
身体の側にある玩具に手を伸ばしてつかむ
9~10ヶ月:
「イヤイヤ」「ニギニギ」等の芸ができる
「バイバイ」と手を振る
笛やラッパが吹ける
16~18ヶ月 :
ことばをいくつか話せる
絵本を見て知っているものを指さす
エンピツやペンで殴り書きをする
2歳 :
2語文を話し始める
自分の身体部位が分かる
靴を履く
大小の比較ができる
3歳 :
「明日」「後で」が分かる
ごっこ遊びをする
箸を使って一人で食べる
4歳 :
「昨日」「今」「明日」が分かる
基本的な色(10色)の色名が言える
かくれんぼを楽しむ
昼間の排泄の失敗が大体なくなる
5歳 :
一般的な反対概念を理解する
「なぞなぞ」をするようになる
じゃんけんの勝ち負けを理解する
自分で服の着脱をする
6歳 :
平仮名をほとんど読める
電話の応答をする
道順の説明ができる
小さい子や弱い子の面倒を見る
まとめとして
知的に障害を持つ子(人)がとどまりやすい発達段階があることが分かりましたでしょうか?
ここを理解しておかないと、高すぎる評価もしくは低すぎる評価をしてしまうのです。
様々な角度から考えていくことが欠かせない、というよい例だと思われます。
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参考文献
医学書出版 診断と治療社
チャイルドヘルス vol.13